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一度のチャンス

「なら俺と朝野で同時に攻撃するのはどうだ? 朝野の必殺技で雪風を覆う氷が薄くなった瞬間を狙って俺の拳を炸裂させれば、きっと雪風に届く」

「無茶にゃ! そんなことしたら秋人くんが私の必殺技に巻き込まれちゃうよ!」

「……だよな」



 残念ながら朝野の必殺技を喰らいながら拳を放てる自信はない。朝野の必殺技が止んだ直後に拳を放とうにも、その間に修復されるのがオチだ。


 そうだ、【入替】を使えば雪風を巨大氷人形の中から引きずり出せるのではないか。そう考えた俺は足下に落ちていた石を拾い上げ、雪風と石を対象に【入替】を発動した。が、何も起きず。やはりまだ俺の知らない制約があるのか。他に何か良い手は――



「秋人くん、危ない!」

「うおっ……!?」



 俺が頭を悩ませていると、巨大氷人形が俺達に右手を振り下ろそうとしていた。俺は朝野を抱えたまま横に跳んでそれを回避した。



「秋人くん、私はもう大丈夫! ありがとにゃ!」



 もう動けるようになったらしく、朝野は自ら地面に下りた。さて、どうする。あれを倒すには俺と朝野の同時攻撃が必須だ。問題はどうやってそれをやるかだ。



「ちょっと秋人、あいつ早くなんとかしてよ! もう走り続けるのも限界よ!」



 先程から春香は俺の指示通り、俺達から離れすぎない程度に逃げ回っていた。



「分かってるよ! 今それを考えて――」



 いや待てよ。そうだ、春香のスキルがあるじゃないか。俺と春香のスキルを組み合われば……!!



「春香、ちょっとこっちに来い!」

「何!? どうしたの!?」

「良い作戦を思いついた! それを今から二人に伝える!」

「ほんと!? しょうもない作戦だったら許さないわよ!」



 俺が手早くその作戦を伝えると、春香は驚いた顔に、朝野は興奮した顔になった。



「本気なの秋人!? ちょっとでもタイミングがずれたら失敗するのよ!?」

「だけど他に方法がない。しかもチャンスは一回、一か八かの賭けだ。成功すれば俺達の勝ち、失敗すれば雪風の勝ちだ」

「いいね、面白そう! なんかワクワクするにゃ!」

「ワクワクってアンタねえ……。ていうかその作戦、アタシの責任重大すぎない!?」

「ああ。頼りにしてるぞ春香」



 春香は観念したように嘆息した。



「分かったわよ。やればいいんでしょやれば!」

「よし。それじゃ早速、作戦決行だ!」



 俺達三人は改めて巨大氷人形と向かい合う。最後に立っているのは俺達か、それとも雪風か。これで全てが決まる。



「いっくよー!!」



 朝野がステッキを掲げ、先程のように巨大氷人形の頭上に星を出現させた。ここから一分間、最大出力になるまで朝野には力を溜めてもらう。


 だがその数秒後、巨大氷人形が移動を開始した。やはりずっとその場で突っ立ってくれるほどお人好しではないらしい。



「朝野、あの星も一緒に移動できないか!?」

「無理にゃ……力を送り込むので精一杯……!!」



 朝野はステッキを掲げたまま歯を食いしばっている。これでは星の光が巨大氷人形に当たらない。あと一回が限界だと言っていた以上、新たに星を出すのは無理だろう。



「ちょっと秋人、どうすんのよ!?」

「大丈夫、想定内だ」



 だったら再び星の下に奴を誘導するだけだ。まず俺は【怪力】を発動し、地面に拳を叩きつけて星の真下に大穴を開けた。


 続けて校内の駐車場に停めてある一台の車に狙いをつけ、スキル【操縦】を発動。その車を走行させて俺の目の前に停めた。誰の車が知らないが使わせてもらう。緊急事態なので持ち主も大目に見てくれるだろう。



「車が勝手に……!? もしかして【操縦】の力?」

「ああ」



 そういや春香の前でこのスキルを披露するのは初めてだったな。俺はボンネットの上に飛び乗り、再び走行させた。車の運転なんて一度もしたことないが、【操縦】のスキルをもってすればブレーキもハンドル操作も必要ない。レースゲームの感覚で思い通りに車を動かせる。



「聞こえるか雪風ぇ!!」



 俺は巨大氷人形の前を走りながら雪風に呼びかけた。



「俺が憎いだろ!! お前の大事な弟を殺した俺が!! 俺を殺してみろ!!」

「ツキサカ……アキト……!!」



 よし、反応している。こちらの声もちゃんと届いているようだ。



「ヨクモ……タカシヲ……ウッ……オオオオオオオオオオ!!」



 俺の思惑通り、巨大氷人形が俺を追いかけてきた。図体がでかい分そこまで速くないので、車で十分逃げ切れる。このまま星の下まで奴を誘導しよう。



「朝野、まだか!?」

「もう……ちょっとにゃ……!!」



 時間を計ってるわけじゃないので正確には分からないが、あと三十秒くらいだろうか。俺はさっき空けた大穴の少し先で車を停止させた。



「オオッ……!?」



 直後、巨大氷人形の左足が大穴に嵌り、奴の動きが止まった。見事に引っ掛かってくれたな。自我が暴走している分、行動パターンが単純で読みやすい。あとは打ち合わせ通りに――



「!?」



 巨大氷人形の口が開いたかと思えば、そこから大きな氷塊がロケットのような勢いで放たれた。ちょっ、聞いてないぞそんな攻撃!



「ぐあっ!!」



 対処する間もなく俺が乗っていた車に氷塊が直撃し、大爆発を起こした。俺の身体は派手に宙を舞った後、地面に叩きつけられた。



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