夏の最後の晩餐
まゆ姉さんが死んだ魚の目をして廊下を歩いていく姿を見届け
リビングに向かってテレビを付けると
右下のテレビのデジタル時計が7時35分を指していた
「今から夜ご飯作るから二人ともまだ夏の気分で
居てね」
二人は無言でうなずくと床に寝転がっては明日の仕事の予定や僕にはわからない専門用語をぶつぶつ言っていて近づいたらダメなオーラがキッチンにまで漂ってきていた
「明日から冬まで連休なしだ…」
「滋さんは忙しいですね…私は滋さんと比べると
まだ休みが多いほうです…でもパソコンを使うと
指がパソコンを押す形になるから飲み物をこぼしたりしてしまいます…」
なんかもうここに居たくない…
料理ができたのに二人の間に入る勇気がない。
というより本能がまだ僕には早い世界だとストッパーをかけてくれている。気を使えるストッパーなんて早々ないはずだ。そもそもストッパーが気を使うほどのことってあるんだな
「りょ、料理できたよー!」
先程まで打ちひしがれていた二人が獲物を見つけた肉食動物のように机に向かってきていたので咄嗟にオタマを装備してしまった。仕方がない、喰われると思ったんだから
思わせるほうが悪い、うんうん
「父さんはこの料理がなにか分かるかな?」
「これは冷やし中華だな!!」
「滋さんと同意見」
「って、まゆ姉さんに関してはもう食べてるし
喋りながら食べると口の中のものが飛ぶから
口の中のものがなくなってから喋ってね〜」
「美味しい冷やし中華を作るゆうくんがわふい」
「だから…もう…」
僕は食べながら喋る大きい子供と何故か泣きながら夏を惜しんでる父さんがこぼしていく汁をひたらすら布巾で拭き取っていく
社会人の夏休み終わりって辛いんだな…って思わざる負えない光景に僕はそっと目を手でおおった
これにて夏休み編は終わりです