いい関係
僕と黒木さんは高校生活の話に花を咲かせていた
「悠馬くん、実は私は何十回も告白されてたんだ
よ…?」
「凄いですね!僕なんて…一度も…」
花を咲かせようと話をつなげようとする黒木さんには申し訳ないが僕にとって高校生活は黒歴史と呼ばれるものその物で…
最後は結局僕が話を折ってしまう…
それでもめげずに高校での話をしてくれる黒木さんは本当にいい人だ
「まあ、全部断ったけどね」
「どうしてですか!?」
「全く…君は…」
黒木さんが僕の耳元で囁く
小悪魔っぽく…どこか切なげで
『私は君しか愛せない』
心臓の音が早くなるのが分かる
黒木さんも流石に顔を伏せてしまっている
僕と黒木さんの間に妙な時間が生まれる
先に口を開いたのは黒木さんだった
「別に私も“好き"という言葉を安く言ってる訳では
なくて…本当に…その…」
痛いほど何が言いたいのか分かる
そして言葉にできないことも分かる
それの答えは、僕にはまだ分からない
「黒木さん…付き合うとか以前に…
黒木さんの事を僕はあまり知りませんよ?」
この言葉に黒木さんの表情は強ばる
そして黒木さんは…
「なんでそれをもっと早く言ってくれない!!」
まさかの八つ当たり…
まあ、逆の立場なら僕も目の前の人にぶつける
「だから…せめて…」
黒木さんが我に返り僕の方を見つめる
「──せめて…苗字じゃなくて…
名前で呼んでもいいですか?」
僕の言葉に返ってきたのは…
笑顔の黒木さんだった…




