新しい家族と今は亡き家族
宮田悠馬は父と二人暮しだったが父が親戚の子まゆを引き取り
二人暮しから三人暮らしになった
それからの生活はどうなるのか…
僕の名前は宮田悠馬
一昨日から父さんが親戚のまゆ姉さんを引き取り
共に暮らすことになったのだが
父さんは最近まゆ姉さんの仕事探しをしているせいか少しずつ顔に疲労が見えていた…
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「父さん、今日も帰るのは遅いのか?」
「ああ、すまないな…ゆう、まゆのことを頼んだぞ」
そう言い残すと仕事に出かけた
その姿は言葉にしがたい姿だった…
すると背後から、まだ寝ぼけている声がした
「お、おはよ…ゆうくん…」
「まゆ姉さん、おはようもう少しで焼けるから待って
てね」
まゆ姉さんは一昨日からこの宮田家の【姉】としてこの家にやってきたのだが初めて会った時はとても怯えていたが晩ご飯で少しほんの少しだけ距離が縮まったような気がしている
「うん…わかった…顔を洗ってきます…」
とても可愛い寝癖が出来ていたのを僕は忘れない…
「ねー…ゆうくん…」
「何かなまゆ姉さん」
「何か…私の、その…顔についてる…かな?」
「どうしてそんなことを?」
「じっと私の顔を…見てたから…」
自分自身の顔が真っ赤になっていくのが分かる
とてもとても暑くて暑くて恥ずか死にそうだ…
悪いことや恥ずかしい事をしてないのにも関わらずとても恥ずかしい事をしたような気分になっている…というかなってしまっている
「早く顔洗わないとご飯が先に出来上がってしまうよまゆ姉さん!」
「それは…イヤ…だね」
何事もなかったかのようにまゆ姉さんは洗面場に行ってしまった…
「まゆ姉さん、可愛いな…まるで小動物を見ているような…」
「ゆゆゆ、ゆうくん!」
「は、はい!」
「早くご飯下さい!」
「はい!まゆ姉さん!!」
赤面したまゆ姉さんの大声により僕は出したことの無い早さで皿にご飯を盛る
初めてまゆ姉さんの大きな声を聞いた
この調子で心を開いて貰えることを僕は願っている
「やっぱり、ゆうくんのご飯は美味しい」
「ご飯を食べる時は素直だよねまゆ姉さんは」
「ご飯を食べているとき私素直…かな?」
「素直というかご飯を食べている時はまゆ姉さん…らしいというか何というか…」
もしかして聞いてはいけないところまで聞いてしまっているのかもしれないそれでも僕は聞いてしまっていた
「まゆ姉さんは何かご飯に思い出があるの?」
少し悩んでいるように見えた
話すべきか話さないべきか…必死に考えているのだろう
「あるよ…1番楽しい思い出がご飯だから…」
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私の両親はとても優しかった…
「まゆ〜父さん帰ったぞ」
その言葉を聞いて私は父さんに向かって走り出す
「おかえりなさいお父さん」
走ってくる私を見て笑顔で
「ただいま、まゆ」
父さんは仕事服を脱ぎ、リビングの椅子に座ると
私の事について、いつものように聞き始めた
「今日の学校は楽しかったか?」
「やっぱり風紀委員の仕事はキツいよ…」
「そうか…でもまゆが頑張ってると父さんも頑張らな
いとなって、なる一緒に頑張ろうまゆ」
父さんは優しい表情を浮かべて私の頭をなでる
それが私はとても心地よかった
「夜ご飯出来てるわよ、早く手を洗ってきてみんなで食べましょ」
母さんは机に夜ご飯を乗せていく
「母さん、夜ご飯なに?」
「今日の夜ご飯はねビーフシチューよ」
私が喜ぶ前に父さんがスキップしながら洗面場から出てきた
「母さんのビーフシチューはお店の物よりも美味しいからな〜」
「あなた、どうして美味しいかわかる?」
「もちろん、愛が詰まっているからさ!」
「さすがあなたね!」
「ほら、まゆもおいで〜」
「うん!」
これがいつもの当たり前の生活だった
あの日までは…
「まゆ、今日から父さんと母さんは少し病院に行ってくるよ」
「どこか悪いの?」
「母さんが少しね…」
「そう…なんだ」
少し嫌な予感がしていた…それでも私は父さんと母さんを見送った…見送ってしまった…
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私が学校から帰り家のドアを開けるとき違和感を感じていた…
「父さん?母さん?居るなら返事して…」
家には父さんや母さんじゃない人の声が聞こえてきた
「おかえり…まゆちゃん」
「あなたは確か親戚の…」
「まゆちゃん、落ち着いて聞いてほしい」
「何ですか?」
私は話を聞いて行くうちに涙が出た
実は母さんだけではなく父さんも母さんと同じ病気を患っていていたらしく
親戚の方が集められ看取ったらしい…
そして私は家にいた佐々木さんの家に預けられることになった…
「まゆちゃん…ここが君の新しい家だよ辛いのはわかるけど…」
「佐々木さん…簡単に分かるなんて…言わないでください!私はもう、家族が居ないんです…
私には…もう楽しかった日々は…日々は…返ってこないんです!」
佐々木さんはそれから私と話すのを遠ざけていった私もそっちの方が楽だった…
「君がまゆちゃん、かい?」
私は呼ばれる方を振り返った
「急に話しかけられたらビックリするよね
私の名前は宮田滋
君の父さん母さんとは長い付き合いの親戚だ」
宮田…確か私が小さい頃からたまに会いに来てくれる変なおじさんとしか認識していない人だった
「私は君の気持ちがわかるなんて言わない
だから私に少しずつ君のお父さんとお母さんのことを教えて欲しい…」
それから滋さんは何回も私のところに来ては、
私の話を聞いてくれた飽きもせず私のところに毎日ではなかったけれど何回も来てくれた
「まゆちゃん…今日は君に真剣で考えて欲しいことを言いに来た」
「なん…でしょう…か」
「私の家に来ないかい?私には君より年下の息子が居てね、中学生に上がるくらいの時に母を亡くしてね…2人で住むには広すぎるんだ…昔ながらの家だけどもし君がよかったら私たちの家に来てくれると嬉しい」
とても難しい事だった、私は今、佐々木さんの家にお世話になっているのに宮田さんの家に行っていいのかなど考えていると口が勝手に言葉を話していた
「私がそんな…ことを…考えていいのでしょうか…」
「私は長く待つよ、すぐに答えを出さなくていい君は選ぶ権利がないと思っているかもしれない
でも私は君にあると思っている」
そう言い残すと滋さんは帰っていってしまった
その日の晩、私は初めて悪夢を見た
父さんと母さんが楽しそうに笑いながら私を呼んでいる
「母さん…父さん…私…は…」
私は見えるはずのない父さんに促されるまま風呂場に水を貯めていた
「父さん…私も父さんのところに…」
インターホンが鳴り響く…
「父さん…ここに顔をつければいいんだね…」
水の中に父さんと母さんが見えた…
「これで…一緒に…」
「何をやっているんだまゆちゃん!!」
「話してください!私は父さんと母さんの所に!」
私は必死になって止める滋さんの腕を払おうとする
それでも滋さんは私の腕を捕まえ
「何を言っているんだまゆちゃん、君の父さんと母さんは亡くなったんだ!私は君に死んで欲しくない!」
「だって…もう…私は…」
「辛いなら私の家に来ない?明日、息子にも話すから
明後日、君を迎えに来る。それまで君は生きるんだ!明後日、私が迎えに来たら君の名字は田村から宮田になる。そうなれば私と私の息子が新しい家族だ、それまでに返事を出しておいてくれるかな?
無理強いはしないよ決めるのは…まゆちゃん君だからね…」
滋さんは優しい顔で私に希望をくれた
「分かりました…明後日…待ってます…だから!
絶対来てください!私待ってますから!」
そう言うと滋さんは笑って手を振った…
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「まゆ姉さん、そんな事があったんだ…」
「うん、でもここは私にとって大切な場所になった…よ」
「よかった…」
僕はまゆ姉さんの話を聞いて涙を流すのを堪えてまゆ姉さんに分からないように涙を拭った
「さ、まゆ姉さん写真撮ろうよ」
「どう…して?」
「僕が思い出を作りたいからかな…父さんが帰ってきたら家族全員で撮ろう」
「それ、いい考えだね…」
僕とまゆ姉さんで写真を撮った…僕とまゆ姉さんの初めての姉弟写真を撮ってから数時間後
桜が咲き乱れる家の庭で僕とまゆ姉さんと父さんで記念写真を撮った
まゆ姉さんも父さんも最高の笑顔だった…
次の話は来月ぐらいになりそうです…
申し訳ございません…