アジサイ農園③
僕と父さんが休憩所から一歩踏み出すと
行きは気づかなかった(尿意のせいで)けど
どこを見ても綺麗なアジサイに囲まれていた
「とっっても綺麗だ!!」
僕は折りたたみ傘をさして車までの道を駆け足で下っていく
いろいろな色のアジサイが駆け足で下る僕を出迎える
「ゆう!!あんまりはしゃぐなよーー!!」
休憩所の方から父さんの声が聞こえる
雨に濡れたアジサイはとても切ない…そんなものと思っていた
でも実際に見ると、とても可憐な花火のように僕には見えた。
そんな僕を横目にまゆ姉さんが笑いながらカメラでアジサイを撮っている
「これも綺麗だなぁ…あ!これも綺麗!」
相変わらず腕を振り回しながら喜んで
カメラの写真を見て、また振り回す…
まるで…
(幼稚園児みたいだなぁ…)
「まゆ姉さん!こっちにカタツムリいるよ!」
「え、本当!?行く行く!」
僕達はカタツムリを見てははしゃぎ、開花したばかりの小さなアジサイを見つけてははしゃぎ…
とにかく二人ではしゃぎ倒した…
「おーい!ゆう!まゆ!こっちにカタツムリが…」
「「行く行く!!」」
父さんが僕達の事を呼び終わる前に父さんの方に駆け出した。
「あ、こっちのカタツムリの方があっちにいたカ
タツムリよりも大きい!」
「本当だ!!」
結局僕たちは、到着から約4時間アジサイ農園ではしゃぎ倒し、他の人に凄い目で見られながらも3人の家族写真を撮り、帰路についた
「まゆ姉さん?起きてる?」
休憩所に一足先に向かったまゆ姉さんは僕達がお土産にアジサイのストラップなどを買って帰ると休憩所で眠っていた…
正直、女性がこういうところで寝るのはどうかと思う特に身内なら…ね、、
「ゆう、まゆは任せた」
「えっ…」
「私は車のキーとか色々あるからまゆを担いでは
帰れないよ…」
(あと、大人が女性を担ぐのは警察沙汰になりそ
うだし…)
「ということで、任せた!」
と一言残すと、足早に休憩所から駐車場へと行ってしまった
「まさか本当に任すなんて…」
僕はまゆ姉さんのカメラを僕の胸ポケットに
入れる
「おんぶ…は無理かな…抱っこも…」
僕はどんどんまゆ姉さんを連れて帰る方法を考えてはその考えを消していった
「何故なら…胸がきになって運べないから!!」
なんて誰もいない(まゆ姉さんを除く)休憩所で叫ぶと僕はまゆ姉さんをお姫様抱っこした
「よし、誰かに見られたら恥ずかしいけど…
いくよぉぉぉ!!」
僕は恥じらいを殺し……きれず
きっと、いや絶対、顔が赤いと思う
「めちゃめちゃ恥ずかしーーーいーーー!!」
僕は雨に打たれながらもまゆ姉さんに雨が当たらないようフードを被せながら走っているので
まゆ姉さんの表情が一切見えない
(せめて、せめて、寝顔さえ見れたらプラスマイ ナスゼロだと思うんだけどなぁ…)
やっとの思いで駐車場にたどり着くと父さんが傘をさして出迎えてくれた
「お疲れさん」
「まゆ姉さん濡れてない?」
「大丈夫みたいだ」
【大丈夫】この言葉が僕にはとてもホッとさせられた、ホッと一息つくことが出来た
車の中で僕は寝てしまったらしく
車に乗って次起きると…家だった…
僕の…いや家族でのお出かけはとってもいいものだったと僕は扇風機の前で思う
「滋さぁーん!!」
「どうしたまゆ?」
「アジサイでの記念写真になんか白いものが…」
「ああ、これはきっと彼女だな…
羨ましかったんだろうな…約束してたのに行け
なかったから…こんな形で約束を果たしてしま
うとは…なぁ」
「綺麗なワンピースですよね、、」
「これは私が誕生日プレゼントに贈ったものなん
だよ?まさか、今でも着てくれるなんて嬉しい
ものだなぁ」
1粒の雫が写真に落ち…それを聞いていた彼女もまたそれを見て、もらい泣きしていた…
僕も写真を見ると笑顔の母がいた…