二人の答えと夏に向けて
僕は夢中で廊下を駆けた
お風呂に入ったからなのかそれとも汗なのか分からないぐらい部屋着が濡れていく
「まゆ姉さん…起きてる?」
「おきて…るよ…」
熱が出ているはいえ…食欲があるのを確認して僕は少し安心した
「ちゃんとおかゆ食べてくれたんだね」
「せっかく…作って…くれたんだから」
途中でまゆ姉さんの言葉は止まる
それでも僕は最後まで聞き続ける
「まゆ姉さん、返事はいいから聞くだけ聞いてね」
頷いたのかは分からなかったが僕は開いた口を閉じず話を続ける
「僕はまゆ姉さんが今日まで頑張ってきたことを
父さんから聞いたよ…まゆ姉さんはそこまでし
て僕を少しでも家事ばかりじゃない時間をくれ
た…でも、風邪を引いたから台無し…そんな訳
ないよ、僕は楽しかったしまゆ姉さんも楽しそ
うだった…まゆ姉さんの風邪が治ったらどこか
に出かけよう、今度は父さんも一緒に前に言っ
てた花畑のところに三人で行こう…だから…
まゆ姉さん…風邪を一緒に治そう…」
僕は思いついた言葉を繋げ、できるだけまゆ姉さんの状態に触れないよう、傷つけないよう言葉を繋げた…それが最後まで聞こえたのかは分からない…でも、ようやく寝たようだった
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「いい、セリフだな…ゆうも真奈の子だもんな…
そりゃあ、くさくていいセリフが出てくるか…
さてと、そろそろ寝るかな…」
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私が目を覚ますと
目に映ったのは…私の隣で寝ているゆうくんの
姿だった
頭ははねていて、部屋着はびしょびしょで私のために持ってきたであろう冷えピタシートを握っていた
「ゆうくんは本当に優しいね…冷た…アイス枕?
昔、よく父さんが私のためにアイス枕を何回も
変えてくれたな…」
ゆうくんの手を私の体から、下して
体を起こしてみると体がとても軽かった
体温計を計ると熱はいつもの体温まで下がっていた…
「通り雨ならぬ通り熱…なのかな」
窓から空を見るとそこには綺麗な星が見えた
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僕は目を擦りながらまゆ姉さんが寝ていた布団の辺りを触る
するとまゆ姉さんの姿がなく体を起こして振り返るといつものまゆ姉さんが朝のストレッチをしていた…
「か、体は大丈夫?」
「ゆうくんのおかげでもうすっかり元気だよ〜」
まるで力が有り余るかのようにラジオ体操をするまゆ姉さんを見て本当に大丈夫か?という疑問を抱きつつも少し安心した
「おっはよ〜!!」
ふすまを勢いよく開けながら子供じみた声のトーンで挨拶をしてくる人に目掛けて僕は肘を食らわせる
「ぐはっ、、」
今日もいつもの1日が始まる、そんな平和ボケな事を考えていると二人が満面の笑みで近づいてきて
二人とも耳元で『ごはん』と囁いた
今日もいつもの一日が始まるんだなと一息ついた
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まゆ姉さんは熱が嘘だったかのように次の日から仕事に行き、
父さんは家でパソコン越しに誰かとなにかの打ち合わせをしているようだった
「仕事をしている時はカッコイイのになぁ…」
なんて独り言を呟きながら家事をこなす
そんな一日を繰り返すのが
ボクの答えなのかもしれない、、
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「よぉーし!まゆ!ゆう!夏がそろそろくるから
蔵から扇風機を3台出すぞ!」
「「おー!」」
僕らは蔵から扇風機を出すのと蔵の掃除を両方こなす事にした
その結果、清掃時間 3時間 扇風機がまさかの1台しかつかないという絶望感に苛まれたのであった…
春が終わり夏編に行きます!