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暖かい家族を築いていく〜 make a family〜  作者: 黒帽子
出会いの春
10/43

看病をする側とされる側

僕は帰るなりまゆ姉さんに体温計を渡した

本人は大丈夫って笑顔をつくって言ってみせたがそれでも僕は心配だったのだ


「何度だった?」


僕が聞くとまゆ姉さんはかなり深刻そうな顔で体温計の温度を指さす


「38.5℃…」


弱々しく言うまゆ姉さんを見て僕は

布団に寝かせることにした


「まゆ姉さん…とりあえずご飯食べる?」


「いい…パフェとか食べたし…」


「それもそうだね…でもおかゆぐらいは…」


「いい!」


否定の言葉を聞き僕はふすまを閉め部屋をあとにする


「まゆ姉さんのバカ…」


――――――――――――――――――――――

閉めた時のかすかな音を耳にし

私は酷く孤独感を感じた


「ゆうくんを楽しませるために滋さんにも手伝っ

てもらったのに、、私は…」


自分を責めることしかできない私は

寝ることが出来なかった…

――――――――――――――――――――――

僕は久しぶりに母さんの遺影を見にいくと

仕事に行ったはずの父さんが苦笑いして出てきた


「いやぁ…その…」


「…」


「無言って時に人を追い詰める秘策だと思う

のですが…」


「まゆ姉さんが風邪をひいた、かなり体温が高い」


僕はその一言だけを告げるとキッチンに戻りおかゆと父さんの夜ご飯を作って気を紛らわそうと必死だった


――――――――――――――――――――――

「あぁ…まゆが風邪を引くなんてな…」


「ごめんなさい、滋さん…私はただ、、」


「皆まで言わなくても分かるよ…そして今思って

ることもだいたい察しはついてるよ」


私は…布団を顔まで隠して話すことしか出来なかった。楽しませるはずが風邪を引き挙句の果てに、ゆうくんに迷惑をかけ、自分が悪いのにゆうくんに当たってしまった…


「まゆ、今はゆっくりおやすみ…」


「…」

――――――――――――――――――――――

「父さん!夜ご飯出来たよ!」


「あぁ…」


席に着くなり父さんはため息を大きく吐く


「あ、まゆ姉さんの事なら安心して僕が看病する

から、父さんは仕事に集中してね」


「そうか…でも、私がまゆの看病をするよ」


「どう…して?」


「話すなと言われていたが…こうなった以上は仕

方がないか…でもなぁ…」


こめかみをかいて何かと葛藤するや否や

答えが出たかのように僕の目を瞳を見やる


「いいか、今から言うことはまゆには内緒だ

仮に聞かれても知らないフリをしろ」


「分かった」


「実は…」


父さんは今日のために二人で作戦を練り今日が練りにねった実行の日だったらしく

朝の耳打ちは父さんの妹の瑠美さんが店長をしている店で看板とパフェを準備してもらうようお願いする合図だったそうだ

つまり、僕が今日何も知らずに楽しんでた裏では二人や瑠美さんの協力があってこその1日だった…

それをまゆ姉さんは、自分が風邪をひき僕に迷惑をかけてしまい言葉にするなら合わせる顔がない、そんな状態だということを聞かされた


「ッ…まゆ姉さん…辛いだろうな…」


「ああ、ゆうが思っている以上に辛そうだった…」


僕はいてもたってもいられずおかゆをおぼんに乗せてまゆ姉さんが寝ている(はず)の部屋まで運んでいく


「まゆ姉さん…起きてる?」


声をかけるとまゆ姉さんの体は仰向けからうつ伏せに変わり、布団を顔までかぶってしまった


「まゆ姉さん…おかゆ作ってきたから食べてね」


僕は布団の隣におぼんを置くと部屋を出てふすまのところで止まってしまった


「……辛いよ…優しさが…辛い…」


僕は聞かなかったふりをして父さんのところに戻った…


「父さ…」


声をかけようとすると父さんの姿はなく

お風呂場の方へ行ってみると脱衣所にバスタオルが2枚用意されていた


バスタオルに近づくと紙が挟んであり

『先に入ってる』とだけ書いてあった

脱衣所を抜けると父さんがお風呂に入っていて手で僕を招くジェスチャーを送ってきた


「…」


「ゆう、風呂の湯加減はどうだ…」


「丁度いい…」


「なあ、ゆう私はゆうに言ったことを覚えている

か?」


「…」


「悩み事があればいつでも話せ、父さんも話すか

らって言わなかったか?」


「言ってた」

そこで僕は我慢していた感情が…溢れ出した


「父さん…僕はどうすればいいんだろう…

僕はまゆ姉さんにどう接すればいいのか、正直

分からなくなったよ…」


「まゆも同じことを言ってたなぁ…」


「え?」


「『弟なんて居なかったからどう接すればいいの

か 分からない…』って言ってたがその答えは

簡単だったなぁ」


「答えが出たの?」


「ああ、それがまゆがゆうへの接し方だ、アレは

私が口を出す前に自分で答えを見つけその後

ゆうをゆうくんなんて呼んで弟と認識するよう

努力してるじゃないか」


「僕は…」


「ゆうのは少し難しいなぁ…まゆの応用が答えだ

ろうなぁ例えば…いや、これは自分で見つける

べきだな、誰かに見つけてもらうことに慣れれ

ば自分では見つけるとこを忘れるって言うから

なぁ…」


「そんなこと誰が言ったんだよ父さん」


「ふふ、母さんだよ…」


「…」


「まあ、頑張れよ…ゆう、答えが見つけれたら

変わると思うからさ、まゆもゆうも」


そう言うと父さんは僕の両肩に強く手を振り下ろしてそそくさと上がってしまった…


「答え…」

僕はお湯に顔を半分沈めて考え込む…

――――――――――――――――――――――

「お節介は…得意じゃないなぁ、こういう時に真

奈が居たらなぁ、って思う…お前は凄かったよ

あー…喋りすぎてのぼせたかな…」


――――――――――――――――――――――

僕が上がるとまた紙が挟まれていた


『答えが見つからなくても見つけても答えはひと

つじゃないからまゆとじっくり話してみるのは

どうだ?』


その紙を見て僕はクシャクシャにしてゴミ箱に捨てると部屋着に着替えまゆ姉さんの元へと歩き出した…






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