時間稼ぎなのだと
上手いこと入り込んだ僕は、怪人物に触れた。
服の上からだったけれど、とりあえずこれで能力のコピーはできる。
『覚醒チート、自動演算機能、開始シマス……特殊能力の一つであるため、派生魔法は存在しません』
そういった声を僕は脳内で聞きながら即座に……その怪人物の腰につけていた何か液体の入った球を奪い、自自分を守る結界を張る。
僕が近づいたことで、この怪人物が僕に攻撃してくるだろうことは容易に想像ができる。
現に氷の塊がいくつも目の前に向かってきて僕へと迫る。
それと僕が張った結界が重なり、大きな音を立てる。
耳をふさぎたくなるような音と目の前の氷に恐怖を覚えた僕は、即座にその場から後退する。
風も魔法を使い、自身にぶつける様にして僕は逃げだした。
同時に僕の作り出した結界がガラスのように崩れ落ちていくのを見た。
あともう少し逃げ出すのが遅ければ大けがをしていただろう。
そう思いながらぼくはさらに下がり、態勢を整える。
この謎の液体が入った球。
これ目的で僕は怪人物に接触した、そうこの怪人物は思った事だろう。
それが僕の狙いだ。
僕の能力で、この怪人物の本当の能力を知られないためには、この方が都合がいい。
でもコピー能力で知ったこの人物の能力と、先ほどの言葉から……この怪人物は、もしかして、と思う。
そこで僕が離れたからだろう。
再びその怪人物に向かってメメル姉ちゃんが大きな樽を二つほど投げたが、
「“氷の槌”」
怪人物がそう呟くと、マントの一部がまるで意思を持ったかのように鋭くとがり、その樽を二つほど破壊した。
どうやらこういった魔法も使えるようだ。
先ほどは即座に魔法が使えないくらいに、待ったなしで物が投げつけられたのが上手くいった秘訣なのか、それとも室内でこの技を使って、建物が崩壊して巻き込まれるのを恐れたのか。
後者の方がありそうだなと思った。
ただ物理的にものを投げる攻撃は魔法攻撃と合わせると、抵抗するのはきついかもしれない。
それにマリン達も気づいたらしく、マリンとクラリス、そしてアリサやリリル達で魔法攻撃、そしてメメル姉ちゃんが近くの樽を投げつける……そういった先頭になったのだけれど。
怪人物の持つマントで次々と魔法攻撃が跳ね返され、もともとの雷への耐性もあってかなかなか攻撃が届かない。
確かに物理的な物を投げる攻撃も反応が若干遅れているようだが防がれてしまう。
そこで、魔法攻撃が途切れた。
どうやらマリンたちの疲労もあるようだった。
それに気づいたらしい怪人物が、
「おやおやこれでお終いですか」
「まだ攻撃できる」
マリンがそう返すと、怪人物が嗤い、
「では、集まってくる我が下僕、全員を相手にできるかな?」
「! まさか!」
そこで僕達は気づいた。
今の戦闘自体が時間稼ぎなのだと。
先ほどの戦闘の音で次々とあの“蛇の果実”を埋め込まれた怪人物がやってくる。
そしてここの宿では都市との連絡する装置を直しているはずで……ここから僕達は逃げるわけにもいかない。
するとクラリスが、
「だとしても、危険な敵の……その中で特に力のありそうなお前だけは倒すわ」
「気丈な女性だ。“神”であり“教祖”である私にたてつくとは、ね」
そう笑うこの人物の言葉を聞きながら僕は、“やっぱり”と思ったのだった。




