何かが魔法か何かで吹き飛ばされる音
扉をたたく謎の人物達の音。
ここは現在、石化の魔法によって外を歩いている人は皆石になっている。
さらに付け加えるなら、外には“蛇の果実”を得た怪物たちが歩いている。
そんな場所に大丈夫な人間がいるのだろうか?
確かに僕達のような人間や、建物の中にもまだ医師になっていなそうな人間も見かけるけれど、この状況で……。
ただ、ここはクラリスの薬屋でもある。
そう僕が思った所でクラリスが呻いた。
「この扉を叩く相手が、敵か、それとも……どうにかできる薬がないか求めてきた一般人なのかがわからないな」
クラリスの言葉にマリンが頷いて、そこで僕を見た。
「ここ周辺の地図は出せるかしら。それで現在のこの周辺の状況を見ましょう。敵……かどうか分からないけれど、何人かも分かるから」
そう返してきたマリンに僕は頷き地図を呼び出す。
そしてこのクラリスの家を見ると家の中には、僕達らしき反応があり、玄関の外には三人ほどの魔力反応がある。
普通の人かそれとも敵か。
どちらかわからないというだけでなく、もう一つの問題が地図から発覚する。
見ていたマリンが呻くように、
「周囲に歩いていた魔力の反応……さっき見た“蛇の果実”の人物達がこちらに集まろうとしているように見えます」
「音に反応したのか? それとも、ここの扉の前にいる人物達が敵で、彼らを呼び寄せようとしているのか。現状だとわからないが、このまま放置すれば一般人なら、彼らの餌食になる。……匿うべきか」
クラリスが深刻そうな表情で悩む。
あの外にいる人物が敵であれば、そのまま攻撃して倒してしまうという手が使える。
敵がこんな風に歩いていられるのだから、“蛇の果実”と呼ばれる彼らにも襲われない方法でもあるかもしれない。
けれど一般の人であったなら話は別だ。
こうやって危険を冒してまで何か目的があってここまで来ていることになる。
どうするべきか……その迷いは、すぐに吹っ切れることになる。
それは、迷うように全員が黙ってすぐの事だった。
ドガァアアンッ
何かが魔法か何かで吹き飛ばされる音が聞こえた。
ちなみに一般の人はそこまで強力な魔法は使えない。
魔法自体も才能があるかないかで決まり、本来であればそれを覚え、使う練習まで必要なものだ。
だから一般人ではない。
ただ薬を貰いに来たちょっと強い魔法使い、という可能性もあるにはあるのだけれど、それはすぐに否定された
「あ~、まったく、なんで俺らがこんなところに来なくちゃいけねえんだよ」
「ここに石化解除の魔法薬があったら困るだろう」
「そうそう、しかもそんな魔法薬が作れる人物も邪魔だから石にしてしまえ、とのお達しだ。ま、ここにいるかどうかわからないし、すでに外に買い物に出ている時に、石になっているかもしれないけれどな」
そう言った男たちの笑い声が聞こえる。
僕は……説明をありがとうございました、と思った。
彼らはここにまだクラリスがいると“思っていない”のだ。
だから適当に石化解除の薬を処分して終わりだ、面倒だなくらいにしか思っていない。
けれどその油断は使えるだろう。
彼らを倒して事情を聞くのもいいかもしれない。
そこで、僕達の部屋の扉の前にまで足音が近づいたのだった。




