脅かさないでくれ
カチッと小さな音がして鍵が開く音がした。
これで普通にドアを開ければ中に入れる……はず。
そこでマリンがドアノブを引くのが見える。
小さくきしむような、金属のこすれる音が黒い蝶番から音がし、何事もなく扉は開いた。
それを見ながら僕は再度、地図を確認すると、
「また一匹、こちらに向かって来ています。早く家の中に隠れた方がいいかも」
というわけで、僕達はクラリスの家の中に潜入することに。
一応家の中に入ってから鍵をかけておくことにした。
あの敵たちが家のドアを鍵まで開けて入ってくるようには思えないが、念のためにつけていく。
鍵自体はつまみを回すだけでよかったらしい。
それでとりあえず安全な場所というか、外から見えない場所を僕達は手に入れた。
クラリスさんの家そのものはお店も兼ねていて、入口のすぐそばがカウンターになっている。
その奥にはたくさんの薬の類が棚に並べられ、端の方には、干した蛇や、植物の乾燥させたものなどが並んでいる。
これらを原材料にして、抽出などを行い、特定成分を魔法で更に合成などもクラリスさんは出来るらしい。
時々必要に応じて作成しているといったような話を以前聞いたことがある。
その時はそうなのかと思ったけれど、その辺りもこの世界では特殊な技能だったのかもしれないと僕は今更ながら気づいた。
そこから更に、扉を開き奥に入っていく。
窓にはカーテンが閉められているものの、雨戸は閉じていないために布越しに外の光が薄暗い部屋に差し込んでいて中の様子がどうにか見える。
机と椅子。
そして少し離れた場所に炊事場がある。
他には、本、本、本。
山のような本と筆記用具に、ノート。
どうにか通れる場所があってそれはほかの部屋に続く扉に続いている。
「ここにはいないと思います。位置的に。多分そちらのドアからさらに奥に行った場所みたいです」
その答えにマリンが頷き僕達はそちらのドアに向かう。
そしてマリンは、
「マリンです。お願いがあってきました」
扉の前で小声で話しかけるも、返事はない。
小さすぎて聞こえないのか。
それとも警戒して返事をしないのか。
この状況で誰かが訪ねてくるとなれば警戒するだろう。
そう思いながら僕達、正確にはマリンがドアノブに手をかけてゆっくりと回す。
鍵はかかっていなかった。
マリンが恐る恐るといったように、その扉を手前側にひいていく。
中はこちらの部屋よりも薄暗く、倉庫のような様相をしているようだった。
いくつもの棚が並べられていて、先ほどの表にあるような瓶に入って粉やら液体やらが、所狭しと置かれている。
ところどころにはこのようなものが置かれていて、そこには黒い布がかけられている。
おそらくはこの部屋周辺だろうと思うが、これではどこに隠れているのかわからない。
そこでマリンが部屋の中に一歩踏み込んだ。
かさっと布が動く音がして、誰かがこちらに飛び出してくる。
その手には銀色のナイフに炎の魔法がかかっているようだったが、すぐにそこにいる人物が誰か、に気付いたようだった。
「マリンか。脅かさないでくれ」
クラリスが、疲れたようにそう言ったのだった。




