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鍵がかかっているわね

 接触まで、あと数十秒という距離。

 僕達は静かに目的の人物がやってくるのを待つ。

 普通の歩く速度だから、普通の人間と変わらない。


 この状況で普通の人だったりすれば、それはそれで普通に状況を聞けばいいだけだ。

 そう思いながらも、普通の人はすでに石になっているか家のどこかに隠れてこの災難が早く過ぎ去らないかを待っているような気がする。

 それとも自力で脱出を試みたりするのだろうか?


 そういった可能性も考えながら待っていくと、ゆらりと鏡にその通りすぐ用としている人物が映る。

 着ている服は一見、僕達と同じような村人の服。

 特に目立った意匠もないそんな、人が沢山いれば溶け込んでしまいそうな服だ。


 けれど、一つ、普通の村人と違う部分がある。

 それは“表情”だ。

 不気味なほどにまがった口。


 口の端からはよだれがこぼれて、目は虚ろでどこに焦点があるのかわからない。

 そんな人物が、ふらふらと目の前を通り過ぎている。

 どうやらこちらには気づいていないようだ。


 そのまま通り過ぎていくのを見送ってから、僕達は大きく息を吐いた。


「やっぱり“蛇の果実”のようでした。そしてこの位置からだと気づかれなかったようですね。ということは視覚を重視して襲ってくると……確かに魔力を感じて相手の場所を特定できるくらいの能力は、普通は持っていませんから」


 マリンがそう言うのを聞きながら僕は、そうなんだ~、その辺りは隠しておこうと決めた。

 そしてこの怪物が進んでいくのを確認し、ほかに怪物がいるかどうかを先ほど作った地図で確認してから、


「うん、この地図の通りだと周りに敵はいないみたいだからクラリスさんの家に行こう」


 そう僕が言うと、そこでようやく、左右の二人に僕は離れてもらえたのだった。









 石像になった人達が立ち止まる路地などを抜けて、僕達はクラリスさんの家の前にやってきた。けれど、


「鍵がかかっているわね。……クラリスはどの辺に隠れているのかしら」

「……地図の感じではこのドアからかなり離れた場所ですね」


 僕がマリンにそう聞くと、マリンは少し黙ってから、


「非常事態なので、強制的に鍵は壊して中に入りましょう。彼女の力がないと現状ではどうにもならないでしょうから」


 そう言ってマリンが鍵を壊そうとする。

 僕は地図を確認して、周囲に危険な相手がいるのかどうかを確認しているとそこでメメル姉ちゃんが、


「合鍵のようなものが周辺に隠してあったりしないかな。ほら、鍵をなくした時用に」

「……たいして物が置かれていないので、そこを探して鍵があれば穏便に入れますね」


 ということであるのかどうかを探していくと、家のわきに置かれた木箱の中から鍵のようなものが見つかった。

 うっすらと魔力のようなものを感じる、そう僕が思っているとマリンが眉をひそめた。


「魔法がかかった鍵……無理にこじ開けようとすると爆発したかもしれません。相変わらずクラリスは用心深いのね」


 そう嘆息しながら、マリンはそのカギを受け取って、クラリスの家のカギに差し込んだのだった。



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