出し惜しみしない魔法
入り口辺りにあったまるで今にも動き出しそうな石像。
服装からは、村人の男性のように見える。
緑色のようなベストに茶色のズボン。
安価な量産品の服である。
一昔前は布自体が貴重品ではあったけれど、栽培方法、流通などが向上して安価になり広がっている。
この世界では魔法が元の世界の科学のような役割をしているようだ。
そう思いながら僕は改めてその石像を見た。
逃げようといった行動は見えない。
今丁度何か物音がして振り返った、そんな石像だ。
その状態で固まっていることから、この町の中の方からその石化の攻撃を受けたのだろう。
服を着た石像という、そんな光景を目にしながら僕は、
「この町にいる人は全員、石化しているのでしょうか」
「まだ町の中に残っている人はいそうですね」
マリンのその言葉を聞いてから、僕はどうするべきか。
よし、マリンが逃げ帰る選択をしたら僕はこっそり離脱してこの町に潜入しようと決めた。
一人のデメリットは、自分一人ですべてやらないといけない事、他の人達の援護が無しという事だ。
但し僕一人であれば僕の知っている魔法が使いたい放題である。
怪我をさせないように周りに注意しないといけないが、それはそれで自由に動けていい。
そう思っているとマリンが少し考えこんでから、
「クラリスと接触できればこの石化の魔法を解除する薬を量産できる。クラリスが石化していたら石化解除の薬を家探ししましょう。彼女、変わった薬を作るのが趣味の所もあるから」
「そうなのですか。ではクラリスさんの家に僕達が案内しますか?」
そう僕が言うとマリンは首を振り、
「危険だからあなたも、そしてアリサもここにいて。もし私が戻って来なかったら連絡を都市にして」
「そんな! 私だって……」
「何処に敵がいるのか分からない以上、そんな危険に子供の貴方を巻き込むわけにはいかないわ」
アリサがそれに対してぶつぶつ言い返しているが、マリンは聞く耳を持たないようだ。
そして薬を取りに行ったり、クラリスの救出をマリンがする気のようだったので僕は早速、この都市内を探査する事にした。
小さく呪文を唱えて、手を前にかざして縮小した地図を光で浮かべる。
立体映像。
僕が元いた世界ではまだ実用化されていない技術で、映画といった物語の世界でのみ見られたものだ。
こういった所は魔法は便利だなと思っているとマリンがそれを見て呆然としながら、
「なんですか、これ」
「この町の地図で、とりあえず石化した人を除いた画像です。……魔力の動きを追っていて、ここには幾つか動いていて、こっちは集団で動いていて……どうやら町の、僕達側と反対側の方はまだそこまで石化は進んでいないのかも。気づいていないようですし……石化される時に悲鳴を上げていないのはどうしてだろう? あ、うっすらと幕のようなものが見えるから、音が消えたり小さくなる魔法を使っているのかな?」
僕がそう説明するとマリンだけではなくアリサも、何も言えないようだった。
それを見ながら僕は、
「それで僕も連れて行ってもらえますか? 範囲はある程度決まっていますが、何処に敵がいるかこれで分かりますが」
そう僕は出し惜しみしない魔法を見せつけ、聞いたのだった。




