魔法を使ってみる
僕達の前に突き出した手に、白い光が灯る。
大きな白い光の塊がふわふわと浮かぶ。
明りの魔法だ。
大きいものであれ小さいものであれ、学べばこれは大抵の子供が出来る物であるらしい。
けれど魔法で作った灯りは持続期間が短く、普通であれば魔道具の明かりを使うのが一般的で、普通の人の場合は子供の遊び程度にしか使えないため覚えない。
必要のない遊びの魔法、そういった認識が強い。
だから僕達も学んではこれまで来なかった。
とはいえ、この魔法使いのお姉さんがこんな綺麗なそれも真ん丸の形をした光の球を作るのは凄いと純粋に僕は思う。
それに実践して見せてもらうと、魔法の使い方のイメージがわきやすくていい。
そう僕が思っているとその光の球が消えて、
「では、この灯りを呼び出す魔法をお教えします。ではまず手を前に掲げてください。前の人に当たらないように」
僕も、隣に座っているリリルと一緒に手を前に出す。
そして、魔法使いのお姉さんが、
「はい、皆さん手を前に出しましたね。あ、そこの方、もう少し後ろに下がってください。はい、結構です。では、これから私の言う言葉を復唱してくださいね。“小さな欠片は、一つ二つと震え、触れ合う。音は小さくとも声を上げて、その意味を示す”」
「「「“小さな欠片は、一つ二つと震え、触れ合う。音は小さくとも声を上げて、その意味を示す”」」」
次々と声を上げる周りの声を聞きながら呟く。
すると僕の手を突き出した先に、僕の手の握り拳程度の光が現れて、そこで、
『覚醒チート、自動演算機能、開始シマス』
そんな機械音のような声が僕の頭の中に響いたのだった。