見知らぬ少女の声
怪物が視覚に頼っている状態にはない。
これは僕にとって予想外の事実だった。
まだこれは人間の形をしているし、人間のような赤い血を流していたからだ。
その血は今は止まっているようだが、相変わらずこの怪物は醜悪な笑みを浮かべてこちらを見ている。
これは果たして人間なのかそれ以外なのか。
僕は冷静になって考えてみようと思うけれど、無理そうだった。
再び僕の作った壁がきしむ音がして、またあの怪物が吹き飛ばされる。
けれどまたすぐにゆらりと立ち上がる。
頭の中にゾンビ、という言葉が浮かぶが、この不気味な存在を表す言葉はそれくらいしか思いつかなかった。
「本当に一体これは何だろうね……」
僕は呟いてみるけれど、答えは出ない。
でも、今後ろで震えながら僕の服を掴んでいるリリルの存在は確かなので、まっすぐに敵を見据えて、
「リリルは僕が守るから。安心して」
「う、うん」
そう答えながらも僕は、先ほどよりも強力な魔法で、あのかたの部分を狙う事にした。
「“氷結の剣”」
先ほどの魔法の上位互換。
この魔法なら幾らかこの怪物の防御を破れないだろうか?
そう思って打ち込む。
放たれた先ほどよりも強い魔力を纏わせた氷が怪物に向かっていく。
甲高い音はしたものの先ほどよりも音が小さい。
これでは押し切れないか、そう僕が思ったその時、
「ようやく追いついたっと。あ、そこの君、そのまま攻撃の手は緩めないでねっ!」
見知らぬ少女の声がして、同時に僕とは反対方向、つまり怪物の背の部分に何かが炸裂したのだった。




