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僕は鵜川と別れた後、キャンパスの屋内を歩いていた。
鵜川は僕の決心についても言及してきたが、なんとか有耶無耶にして誤魔化した。
まぁ……自殺願望があったなんて言えるわけないよな。
「そうだ……そういえばあの場所がお気に入りとか言ってたな」
僕は誰も足を踏み入れない階段を踏み込む。
この階段は、屋上に続く階段だ。
階段には立ち入り禁止の札が掛けてある。
だけどその札が僅かに傾いていて、それは誰かがここを通った証拠にもなる。
もしかしたら、彼女がいるかもしれない。
僕もその札を払って、階段を進んだ。
キャンパスの屋上部分。
相変わらず人けはなく、冷たい風が体を凍えさせてきやがる。
こんなところで大人しく読書なんてしていたら、下手したら氷漬けになってしまいそうなものだが。
「あら……訪問者なんて珍しいと思ったら、あなただったの」
昨日と同じ声が聞こえてくる。
この寒気よりも冷たい、冷ややかな声色が。
「どうしたの?また飛び降りに来たの?」
昨日と同じように、本を片手に屋上の壁に背をもたれて、立花はそこにいた。