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「あっ自販機じゃないかあれ?」
並木道の先に、一つだけ自動販売機が置かれている。
しかしどんな自動販売機にもおしるこが置いてあるわけではない。むしろ稀なくらいだ。
「あるわねおしるこ」
その自動販売機には幸い、おしるこが置いてあった。
僕はポケットから財布を出し、おしることコーヒーを一本づつ買う。
冷たい寒気に体を晒していたので、温かいコーヒーが身にしみる。
「……美味しいかおしるこ」
「えぇ美味しいわよ。ただ欲を言うと白玉が欲しいわね」
「確かに白玉があったら美味しいだろうけど、その缶に入ってたら面倒だと思うぞ?」
「あら、的確なところを突いてきたわね。座布団一枚あげるわ」
「ありがとさん……」
正直な感想を述べただけで、上手いことを言ったつもりはないが、貰えるものはもらっておこう。
「ちなみにその座布団、おじいちゃんのだから」
「おじいちゃんの使い古しを僕に渡すのか!?」
「おじいちゃん、座布団がないから膝が痛いって嘆いてたわよ」
「おじいちゃんに返してあげて!!」
ちなみに、本当にその場に座布団があるわけではない。
まるで漫才とか、コントをやっているような感覚。
人が素通りする並木道がステージ、観客は自動販売機が一機のなんとも寂しいステージだった。




