007
「でも、わたしなんかでいいの?」
「……どういう事だよ」
「わたしみたいな体が弱くて、根暗で、偏屈で、へそ曲りで、可愛くて、チャーミングな人でってことよ」
「最後の二つで何故褒めたんだよ……」
「あんまり自分を責めるもんじゃないわよ。虚しくなるだけだから」
「そうっすか……」
ツマラナイよな、自分を責めるだけの人生なんて。
でも、僕も少し前まではそうだったんだろうな。
数日前の事なのに、もう数年も前の事のように感じてしまう。
記憶とはこうやって朧げになっていくのだろう。
「それでどうなの?あんまりまどろっこしい事言うと、その場で叩っ斬るわよ」
「問答無用だな!!」
「辞世の句すら読まさないわ」
切腹する間も無く、介錯をする外道。
容赦など、あったもんじゃないな。
「まぁ……言ってしまえばお前じゃないとこんなこと言わないよ。可愛くて、チャーミングだからな」
「人の黒歴史を平然とほじくり返すなんて最低ね。軽蔑するわ」
軽蔑することを真正面から堂々と宣言されたのは初めてだ。
というか、ほんの数秒前の会話を黒歴史にするなよ。
数日前のことを黒歴史にしてる僕が言えた義理じゃないけどな。




