004
いつも通りの、いつもの場所。
殺風景のいうか、やはり何と言っても寒い。
屋上には普段誰もいないし、誰も立ち寄らない。
しかしそんな場所が、いつの間にか僕たちの待ち合わせ場所になっていた。
「懲りずにまた来たの。物好きね」
そこに当然のように座っている立花。
懲りずにって……飛び降りの事か?
「別にまた紐なしバンジーしに来たわけじゃないよ」
「あら、新しいアクティビティの確立になると思ったのに」
「そんなもん作った瞬間に営業停止だよ……」
こうして、この世に新たな殺人マシーンの製造を停止した男がいた。
それが僕であることを、願うばかりだ。
「そうだ、僕実は就職決まったんだ」
「コングラッチュレーション」
英語で褒められた。
日本語でオッケー。
「それじゃあ来年からは晴れて社畜デビューってことね。おめでとう」
「嫌な言い方するな……でもそうだな。あとは卒業だけだ」
「卒業ね……単位は取れてるの?」
「一応ソコソコはな。あとは最後のテスト次第ってとこかな」
「そう……案外順風満帆なのね。この前は崖っぷちに立ってたのに」
立花の言う崖っぷちは比喩表現ではなく、本当の崖っぷちだ。
人生とは何が起こるか分からない、そんな事を実感させられる数日間を僕は今送っている。
多分、今まで生きてきて最も充実してる数日間なんだろうな。




