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その大学や学部によって変わるのだが、僕の所属しているところにはゼミを受けていたら卒論を回避できるというシステムがあった。
だから僕に残されたのは、必要単位を獲得すること。ただそれだけとなった。
「そうだ、そういえば鵜川はこの先どうするんだ?就職なのか?」
「いや、わたしは大学院に行くことにしたの。教授から誘われちゃって、それに結構この学問好きだから」
「へぇ……そうなのか」
鵜川らしい答えだ。
僕と違って、鵜川は好きでここで勉強していたからな。
大学生の、本来あるべき姿が鵜川なのかもしれない。
「あっそうだ、そういえばわたし教授から呼ばれてるんだった!じゃあ大和くんわたしはこれで」
「あぁそうか、じゃあまたな」
鵜川はニコッと最後にはにかんで、小走りでキャンパスへ向かって行く。
その後ろ姿は、さながら女子中学生に見える。
……やはりおさげのせいか。
「さて僕はどうしようか……」
と言ったものの、向かう先はほぼほぼ決まっている。
いつもの屋上へ。
「そういえば最近、あの場所に行くこと多くなったな」
以前までは踏み入れた事が無かった場所は、いつの間にかいつもの行きつけの場所となった。
まぁ……本当は入ってはいけない場所なんだがな。




