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僕に奇跡が起きた。
いや、普通の人からするとごく普通のことかもしれない。
だが、僕にとっては奇跡なんだ。
「大和くんおはよう……朝からニヤニヤしてるけど何かあったの」
大学のキャンパスに向かう道で出会ったのは、鵜川だった。
そんなに感情が顔に出てしまっていたのか。
「あぁ、鵜川か。いや実はな……」
僕は妙な間を空ける。
感情が高ぶって、テンションが上がっているとはいえ、なんて間抜けな姿だ。
だけど間抜けでも今はいい。僕は間違いなく掴み取ったから。
「内定取ったんだ!この僕が内定を」
僕の手元に届いた一枚の紙切れ。
今は内定通知はメールなんかでの通知が主流になっており、僕の携帯電話のメールボックスも不採用通知でいっぱいになっていた。
そこに訪れた、一枚の奇跡。
デジタルではなく、アナログで勝ち取った。
「おめでとう大和くん!よかったねぇ内定取れて」
鵜川は笑って僕を讃えてくれる。
いやぁ……僕からふっかけたとはいえ、嬉しいもんだ。
「ありがとう!いやぁ……どうにかなったよ」
「それでどんなところに行くことになったの?」
「あぁ……えっと何て言えばいいのかなぁ……その場所で働くと言うより、どこかに派遣されて働くみたいな仕事かな?」
実は僕自身、自分の働くだろう場所の事を理解できてない。
とにかくガムシャラに企業を回っていたので、そこまで資料に目を通す暇が無かったのだ。




