004
「……なぁ」
「なに?」
だから、だからこそ僕は彼女に宣言しようと思う。
もう自分で自分を切るような事はないように。
そして……。
「もし僕の就職が決まったらさ、僕とデートしないか?」
僕自身が、立花に気を持ってしまった事を。
「ふぅん……意外と武田くんって直球を投げ込んでくるタイプなのね」
「そうか?へそ曲がりだと思うが」
「へそは曲がってるわよ。見事にくの字にね」
直球の罵倒を浴びた。
プロ野球選手も驚くだろうほどの、酷い直球を。
「武田くん、わたし言ったわよね。あなたに興味はあっても好意は無いって」
「あぁ……」
「だからわたし、そこいらの恋人のようにイチャつくようなマネはできないわよ。見てる方も気持ち悪いし、わたし自身も気持ち悪くなるから」
それサクッと全国の恋人達をディスってるよな。
まあだけど、そういう事か。
「じゃあデートはしてくれるんだな?」
僕が言うと、立花は栞を挟まずに本を閉じる。
本はトムソーヤの冒険だった。
「考えてやらなくもないわ。あなたが就職できたらね」
はいとは決して言わない立花。
僕なんかより、こいつの方がよっぽどヘソが曲がってるし、直球なんかよりよっぽど意地の悪い変化球を投げてくるじゃないか。
だけど……そんな球でも嬉しくキャッチしておいてやるか。
そんな僕も、結局へそ曲がりだった。