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落ちから始まる恋物語-The falling love-  作者: 赤坂皐月
屋上
14/31

006

「でもあの時、君はわたしに恋をって」


「ああ、あれはインパクトよ。あれくらいしないと人の決心って捻じ曲がらないでしょ?あなたを止めるため、わたしも必死だったのよ」


「へぇ、必死だったんだ」


「そうよ、感謝しなさいな」


勝手にやっておいて感謝も何もないだろうよ。

でも必死にやってくれた事は、少し僕としては嬉しかったかな。


「なるほど、分かったよ。いつまでも気にしてた僕がバカだったな。でもこれでスッキリした」


彼女にはその気はない。

それが知れただけでも、僕の心のつっかえは取れた。それだけで、十分だ。


「すまないな、読書の邪魔して。僕は帰るよ。帰って見たいドラマの再放送があるんだ」


「そう……」


僕は屋内の方へ振り向く。

踏ん切りというか、もう未練はない。

僕としては消化不良でありながらも、腹は満たせたようなそんな結末だったと思う。


「じゃ!あっもう自殺をするなんてマネしないから安心してくれ」


もうここには来ないだろう。

このキャンパスの屋上には、二度と。


僕が一歩歩みだす。

その時だった。


「!!?」


片手が強い力で引っ張られる。

いや本当に、冗談抜きで強い力だ。


「言ったでしょ、あなたに興味があるって。あなたは満足かもしれないけど、わたしはまだあなたに用があるわ」


「……そうかい」


身勝手なヤツ……先に突き放したのはそっちだって言うのに。

だったら僕だって。


「何が満足だ。こっちだって消化不良だ」


僕は彼女を、強く睨みつけてやった。

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