003
「……そんな恥ずかしい事、よく言えたわね」
「お前の記憶力は鳥以下ですか!?」
立花は蔑むような視線を僕に向け、辱める。
一気に突き放して来やがったぞコノヤロウ!
「フフ……残念ながら憶えているわよ。そんな事も言ったわね…懐かしい」
明後日の方向を見る立花。
つい昨日の事だぞ。
「それでなに?その言葉を真に受けて、わたしに会いたくてここに来たの?」
「真に受けたというか、何故あんな事をしたのかが気になってな。見ず知らずの僕なんかに、何であんな事を」
「なるほど……好奇心みたいなものね」
「まあ……それに近いかな」
好奇心というか、純粋な疑問だ。
僕はあまり深く他人に干渉をせず、今まで生きて来た。
だから何故、立花があんなマネを出来たのか僕には理解ができなかったんだ。
「理由は簡単よ。あなた中国で青年の自殺を食い止めた一人の女性の話を知ってる?」
「いや、知らない」
「その女性、自殺を止めるために彼にキスをしたのよ。そしたら青年は自殺を止めて、無事保護されたわ。男って単純よね」
「つまり、君はそれと同じ事を僕にやったと?自殺を止めるために」
つまり、僕はその青年と同じようにただ自殺を止めるためにあんな言葉を、あんな事をされたということか。
騙されたような、そんな感情が込み上がってくる。