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気づいたら僕は、学校の屋上に立っていた。
僕には夢もない。
希望もない。
そして…その先を歩む道すら、他人の勝手な評価というもので閉ざされてしまったのだ。
就職難。
もう何度面接に行き、何度仮初めの言葉と表情を見せ、朽ちていったのか。
大学4年の冬。
同期は次の春に備えている中、僕はこの冬を越せそうにない。
何故ならこの冬が、僕の命日になるからだ。
「この校舎…こんなに高かったのか」
屋上には、僕の他に人はいない。
普段は立ち入り禁止のロープが掛かっているが、ついさっき僕が引き剥がした。
この世との未練とともに。
僕は屋上の端へと歩み寄り、靴を揃える。
こういう時、すぐに自殺だと分かってもらうには飛び降りる前に靴を置いておいた方がいいとテレビか何かで言っていた気がする。
もうすぐ日が暮れようとする、冬の寒空。
風は冷たい。
さあフィナーレだ。
最期に何とこの世に言葉を残そうか。
「………………」
死人に口無し。
死に行く人も、それに同じだった。