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天国のお土産  作者: トニー
第五章:王都と怪盗
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5-02. エネルギー充填中、なの

 ガシュガシュ、ミリミリ、ブチブチ、ゴックン。

 肉塊に齧りついては嚥下する。ギークは延々と暴食を繰り返す。


可処分魔素(エネルギー)の残りが僅かなのであります。補給するべきであります)


 コロシアムから逃走して一息ついたあたりで、河童がそう警告アラートを上げてきた。何の事かと問えば、食事にすべきでありますと言うことだったので、今はまさにそれをしている最中である。


 ギークがただいま貪っているのは、レンブレイ指揮下でナタリア等と共に討伐した下位竜レッサードラゴンの肉である。

 鱗を剝いだ後、埋葬するふりをして河童の<<収納>>にストックさせていた最後の残りだ。

 河童に預けておくと食物がとても長持ちする。これはとても便利なので、一家に一河童だと思う。


 下位竜の肉は、かなり大量にあったはずなのだが、今回で尽きたと言うことだった。

 ちょいちょい消費していたので信じ難いほどに意外ではないが、それでも最初の膨大な量を見ている身としては、そして最初のひと齧り目であまりの不味さに「うげぇ」となった身としては、よくもまあとは思う次第だ。


 また大型モンスターの死骸でも確保しておきたいところである。

 コロシアムの勝敗賭博で、懐は温くなる見込みであるが、しかし今は収穫の季節ではないから売りに出されている物資の量そのものが多くない。

 ある程度は購入で賄えるにしても、自分で狩れるならそうした方が面倒もないだろう。

 基本、モンスターの肉は美味しくないのだが、贅沢はよくない。復讐に臥薪嘗胆は付き物だ。


 いつまで経っても満足を知ることがないギークの空きっ腹であるが、河童フレデリカの分析によると、生命維持に必要となる最低限以上の摂取分が、魔素なるものに変換されて、それがハイペースなレベルアップの材料にされているらしかった。

 驚きの還元率でありますとか言っていたが、つまり喰っただけ強くなっているようだという僕の予想は、やはり正解ということなのだろう。


 喰っても喰わなくても空腹なのには変わりがない。しかし喰わなければ餓死してしまう。

 我慢が効くからと言って食事をしないのはダメで、頻度についても気を付けるべき、なのだそうだ。


(普通の動物であれば体脂肪に変換して貯蓄するだろう栄養の大半を、御館様の場合は魔素に還元してしまっているのであります。そのために飢餓耐性が低いであります。体脂肪率は常に一桁がキープされるのであります。なので、一度に大量に採るよりも、こまめな補給が理想的であります。最低でも一日三食は欠かすべきではないのであります)


 以上、河童印の管理栄養士によるありがたいご指導のコメントでした。

 世間に一日三食を食べている人なんていませんよ。普通一食、多くて二食でしょ。

 さて、この栄養士に曰く、ギークはこの度めでたく妖鬼デーモンオーガから夜叉ヤクシャへの転生を果たしたらしい。


 進路を見極めてから転生に臨もうという僕のプランは早くも崩壊中。

 しかしこの夜叉というモンスターはかなりアタリっぽいので気にしない事にする。

 なってしまったものはもうしょうがないのだ。前向きに行こうじゃないか。


 まさかクラナスに、ギークが殺されてしまう結果になろうとは。

 パッと光ったと思ったら、さっくりとクラナスの剣が、ギークの胸にズブリと突き立っていた。

 なんだあれ。


 いや、なんだあれというか、あれがなんなのかはよく知ってはいるけれど、まさかまさかである。

 クラナスについては、少し気持ちの整理をつけたいので、いったんは考察を保留にしておく。

 保留。我慢。我慢だ。とてもとても問い詰めたい。クラナスを問い詰めたい。

 今すぐ地図のマーカーを追跡したい。いや待て、落ち着け。


 ギークが死から蘇生したのは、これで都合、何度目のことになるのだろう?

 最低でも五回。思い返すに、ダナサス川の漂流中、多分何度か溺死しているので恐らく六回以上だろう。


 蘇生する度、寿命が縮んでいる可能性があるというのが、河童の見立てだった。

 まだ平気だろうか? 残り如何程か、蘇生の都度どれくらい消費するのか、ざっくりでもいいから目安がほしいものだ。


 そういうのこそ、河童の得意分野だと思うのだが、比較対象がないので分からないそうである。

 そこをなんとかするのが貴様の仕事じゃあー、と言ってやりたい。というか言ったりもしたのだが、ダメだった。使えない河童である。

 倉庫としてはとても有用なのだが、どうも手放しでは賞賛しかねる。痒いところに手が届かない。


 蘇生直後、ギークは正気を失うイメージがある。

 師匠の件はいまだに僕のトラウマだ。


 しかし今回は暴走することなく済んだ。

 なぜだろうと務めて冷静に、河童に見解を聞いてみる。


(試合前にエネルギーを十分に確保していたからだと思うのであります。蘇生は大量の魔素を消費するのであります。これが不足すると、<<忍耐の限界>>が限界突破オーバーリミットして、暴走という結果に繋がるのであります)


 わかったような、わからないような。

 つまりは試合に臨む前に、鱈腹、いや鱈腹にはならないのだが、とにかく沢山肉を喰わせておいたのが、うまく奏功したということになるのだろう。


 なぜそんな備えをしていたのか。

 三回戦目、ダメージをくらい過ぎて、ギークが暴走をしてしまったからだ。

 あの時は、変身までが解けてしまって焦った。

 霧が晴れる前に正気に戻ってくれて助かったが、結構際どかったと思う。


 そういえば三回戦のあの時、ギークは一旦は妖鬼デーモンオーガの姿に戻っている。

 そこからまたわざわざ、重傷のオーガの姿に変身し直したということになるのだろうか。

 なんでまたというか、芸の細かいことをする奴だ。


 いや、河童が後に解説してくれたことに準じるなら、ギーク自身が怪我をしたはずという認識でいたから、怪我が治らなかったのだという理屈かもしれない。そっちの方がありそうかな。


 クラナスと対戦するにあたって、僕が懸念したのはそれだ。

 正体が露見してしまうことではなくて、暴走してしまう可能性の方。

 クラナスに追い詰められたギークが、暴走した結果でクラナスを害してしまう、その可能性である。

 まあ、全然いらない心配だったわけだが。


 余談であるが、クラナスとの対戦前にギークに食べさせておいたのは、トド型モンスターの肉である。

 水竜討伐の前に、ウェナンとフィーが浅瀬でわいわいやーやー頑張って仕留めたモンスターの一体だ。

 ふたりの狩りを見守る傍ら、その狩りで生産された、本来は埋めたり燃やしたりすべきモンスターの死骸は、その粗方を河童に収納してもらっていた。これはこれで、また結構な量があったはずである。

 しかしもう、そのほとんどを既に食い切ってしまっているということだから、やはりギークは底なしである。ちなみにトド肉は、脂身だらけだし、皮膚はゴムのようだしで、実においしくない。


 さて今回、暴走こそしなかったものの、ギークの正体は露見してしまった。

 死んだ場合、死から蘇生した場合でも、ギークの変身は解除されてしまうものらしかった。

 新事実である。ギークがクラナスに刺殺されてから蘇生するまでの間、具体的には何が起きたのかを河童に尋ねた。今後の参考として重要であると思われたからだ。


(心臓が破壊されてから暫くの間は、オーガの姿だったのであります。それから徐々に、妖鬼デーモンオーガの御姿に変わっていったのであります)


 成程。具体的にはどれくらいの時間でかと問う。

 今回は十分程だったのであります。ただしいつもそれ位とはいい難い性質のものであります。状況で長くなることも短くなることもあるかと予想されるのであります。


 河童の回答がそのような感じだったので、うっかり何故そう思うのかを尋ねてしまった。

 しまったと思ったときにはもう遅い。河童語の雪崩に窒息翻弄。へるぷ、へるぷみぃ。

 まあなんだ、魔素なるものが、なんだか良く分からないけど関係あるらしい。


 先刻から河童が魔素魔素といっている気がするわけだけれども、結局のところそれは何なのか。

 いや、でもゴメン説明しないで。パンクする。マジ勘弁です。


(遺骸の回収はこちらが請け負うというコロシアムの運営側と、そうはさせじとするナタリアの言い争いがあったのであります。火焔竜巻吹き荒れる凄絶な光景であったであります)


 成程成程。危うく教会サイドにギークの身柄が確保されるところだったと。

 ナタリアありがとう。でも火焔竜巻? やりすぎじゃない?


 ギークの身柄が教会の手に落ちてしまったとしたら、さてどうなってしまうのだろう。

 脳裏に浮かぶはあの蝗。もうあれだね。顔が三つに増えて、腕が六本になったりしそうだね。

 うんやはり、ナタリアには後でお礼を言っておかなければ。


(そうこうしているうちにお館様の御姿を覆うように魔素発光体が現出して、そしてそれが止んだ後には御姿が掻き消えていたのであります)


 また魔素か。うーむ。触れたくない。だけど確認しないことには状況も分からない。

 やむなし、覚悟を決めて聞いてみるか。南無三。


(魔素発光体、とはいったいなんなの?)


 やはり訊くべきではなかった。つらつらつらと呪文が返ってきた。

 ルシフェリンが魔素でどうのこうの、ルシフェラーゼがナノマシンでほんにゃらで、一切分からん。

 なぜ河童はこうなのか。分かるように喋れ。相手に合わせて言葉を選べ。なぜそれができん。


(お館様は今回、ランクが相応しい域に達していた状態で蘇生したことにより、夜叉という上位種族に転生されたのでありますが、恐らくこれまでも蘇生に付随して転生される際には、同様の現状が起きていたと考えられるのであります)


 ほう、さよか。で、同様の現象ってのは具体的にはなんですの。

 いや、もういい。もういいよ、僕はもうギブアップ。


(前略)

[INFO] ギークの、蘇生を試みます。

[INFO] 転生条件を、満たしました。

[INFO] ギークの、種族が妖鬼デーモンオーガから夜叉ヤクシャに変更されました。

[INFO] ギークに、現在の種族特性が継承されます。

[INFO] ギークは、種族特性「森林の神霊」を獲得しました。

[INFO] ギークは、蘇生しました。

(中略)

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] 現在の状態を表示します。


 ギーク

  妖鬼デーモンオーガ夜叉ヤクシャ Bランク Lv12 空腹(忍耐)

 【ギフト】

  不死の蛇 Lv3

  唆すもの Lv--

  地図 Lv4

  引戻し Lv3

  制圧の邪眼 Lv2

  <---ロック--->

  <---ロック--->

  <---ロック--->

 【種族特性】

  永劫の飢餓(継承元:餓鬼)

  暗視(継承元:小鬼)

  忍耐の限界(継承元:鬼)

  手弱女の化粧(継承元:妖鬼)

  森林の神霊 (New!)


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