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天国のお土産  作者: トニー
第四章:潜み隠れて名を顕す
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4-22. 念ずれば通ずるけれど、なの

 コロシアムで試合がない日は、近場のモンスター狩りで小銭を稼いだり、城内へ買い物に出向いたり、ナタリアと勉強会をしたり、テンテンに訓練の相手を務めて貰ったり、なんとなくゴロゴロしていたり、である。


 近場での格下モンスターを相手取っての狩りは退屈であるらしい。ここのところのギークはあまりやりたがらない。水竜に続き、コロシアムで「いい勝負」をしてしまっているために、歯応えのない戦いとも言えない一方的な狩りはお気に召さない昨今であるらしかった。

 何を贅沢なと思うのだが、Dランク以下のモンスターを沢山狩るより、CやBランクのモンスターを狩る方が狩人組合に対するアピールになるのも事実であるし、そのことはギークも分かっているから説得は難しい。

 港町モーソンでもそうだったが、王都の近くにもやはりCランク以上のモンスターが闊歩しているような場所はない。そうした強敵とやり合うためには、やはり泊りがけの遠出を覚悟しなければならないが、王都に戻ってこれず不戦敗を喫するリスクを考えると、二の足を踏んでしまう。


 自然、それ以外のことをしている時間が増える。

 ナタリアは訓練には付き合ってくれない。ナタリアの戦闘スタイルは遠距離型で、そして手加減が苦手だ。訓練ではなくて殺し合いになってしまう。

 一方でテンテンは非常に手頃な相手だった。近接型の戦闘スタイルで、変身蝗(準決勝の変なの)ほどではないがギークより俊敏で、師匠の姿であるギークよりも力が強い。僕がギフトで支援して弓矢で戦うならまた別だろうけれども、素手や分銅鎖でギークが僕の支援なく戦う場合は、七対三か六対四くらいの割合でテンテンに分があるようだ。

 因みにテンテンも武具を扱うことができる。ギークが分銅鎖を使うときには、テンテンは盾を使う。テンテンの基本的な戦法は、先制キックをかます、または相手の攻撃を盾でなすか避けるかした上でキックをかます、の大きくは二通りなのである。


 訓練相手の格としては最適な相手なのだが、テンテンは基本ギークの相手はしたがらない。テンテンはナタリアに遊んでほしいのであり、構って欲しいのだ。テンテンにとって、ギークは全くお呼びではない。

 だから何かをエサに釣って勝負に持ち込む必要がある。ギークは悪辣にもナタリアの身柄を賭ける。お前が勝負を受けなかったり、わざと敗けたりすれば、俺はこっそりナタリアに酷いことをするぞ? それでもいいのか?

 そんな脅迫なんだか何だかなギークの発言に素直に激昂して、二度でも三度でも模擬戦に付き合ってくれるテンテンは、本当に素直な犬耳である。


 ギークが投擲した分銅がテンテンの頭蓋を貫いた、ように見えたが手応えはない。


「バカね! それは幻影、コッチが本物よ! くらえ、流星脚シューティングスターーーッ!!」


 その直上から斜めにギークに向けて、飛び込んでくるような蹴りが放たれる。

 ギークは身をよじっての回避を試みるが、間に合わない。

 ギュボァッ と閃光が走り衝撃が突き抜ける。


 いや、ギークは直撃は避けた。しかしテンテンの攻撃は爆風を伴うのだ。

 ギリギリの回避では、続く砂礫の津波を真正面から受けてしまう。


「さあ、ここまでよね。わたしの勝ちだからね、もう諦めなさい! ナタリアは私が守るんだから!!」


 テンテンが言う。

 模擬戦なので、背中が地面に付いた方が負けというルールにしている。

 ギークは風圧と数多の砂礫に打ち据えられて、地面を転がされてしまったから確かにギークの負けである。

 一方的に宣告したルールなわけだがテンテンはきちんとそれを守って、攻撃の手を休めてくれる。実に律儀な犬耳だ。


「仲良き事は、だな。子供が生まれたら、オレが名付け親になってやってもいいぞ。そうだな、雄ならギンギン、雌ならクンクンでどうだろう」


 観戦していたナタリアが、番茶を啜りながら、そんな事を言う。


「だから、そんなんじゃないって言ってるじゃない、ナタリアーッ!」


 テンテンとナタリアがじゃれ合い始めた。テンテンは怒っているようで、その実とても嬉しそうだ。

 なんであれ、ナタリアが構ってくれることが幸福で仕方がないらしい。


 ちなみに、テントで寝るときはテンテンのポジションはギークとナタリアの真ん中だ。

 何故かといえばテンテンが、ナタリアにギークが隣接することを許さないからである。

 自らの身を盾にしてナタリアを護っているのだ。結果、見事に川の字である。

 いや、実際には河童もいるのだが。


(お館様と小天狗の間に子供ができるのか、興味深い命題であります。おそらく第一世代は問題なく誕生できるものと推測されるのであります。問題はその異種交配によって誕生したハイブリット種が生殖能力を有するかどうかでありますが、天狗族と鬼族はどちらも人ベースのモンスターでありますから恐らくは……)


(フレデリカー、そんなことよりちょっと教えて欲しいことがあるの)


 何かをぶつぶつと呟き始めた河童に尋ねる。


(ギークが怪我が治る速度なの。これはモンスターとしては普通と考えてよいものかどうかなの。あの豹にやられた傷が一晩で粗方塞がったのは、やはり異常だと思うの)


 今も、石礫いしつぶてをくらったところは内出血していたはずなのに、気が付けば跡形もない。異常と思える。


(御館様は種族特性により変身が可能なのであります。であれば自分の負傷を塞いでなかったことにすることも可能なのであろうと分析されるのであります。変身しようと思っている姿に戻ろうという無意識下の作用であるかと思うであります)


 なんですと。その理屈ですと、つまりもしかして。


(ここをケガをした、あそこを痛めている、等々と意識してしまっている間は、恐らくその作用は働きにくいものであると考えられるのであります。逆にそんな怪我はしていないと自己暗示をかけることができれば瞬間的に傷が癒えるという現象も起こしえるものかと推測するのであります)


 やっぱりかよ。そういう大事なことは早く言おうぜ。

 よしギーク、今から自己暗示とやら練習をしようじゃないか。

 あれでしょ? 妾は美しい、妾は美しい、て鏡見ながらブツブツ言う奴だよね?


(しかしながら変身能力は、ご主人様、御館様が有する中で、蘇生に次いで段違いに支払いコストが多い能力なのであります。日に数回程度の使用、或いは無意識下で自然と生じる作用程度であればともかく、魔素収支が赤字に触れかねない多用は避けるべきであります。体内からの過剰な魔素の喪失は、記憶の混乱に始まって恒久的な意識障害にも繋がりかねない危険なものなのであります。因みに細かい負傷を逐一補修するより、後で一括リセットした方が、結果的にはローコストで済むのであります)


 ……、……、……、……。

 次からそういう大切なことは、早目にお願いね?


(いずれも、事象の解析結果、及び保有データからの類推なのであります。低確度の情報提示は、逆に混乱を助長し正しい判断を妨げる結果ともなりかねないものかと思うであります)


 うん、まあ良く分からないけど、早目にね?

 頼みますね?

(前略)

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] ギークは、レベルが上がった!

[INFO] 現在の状態を表示します。


 ギーク

  妖鬼デーモンオーガ Bランク Lv11→Lv12 変身

 【ギフト】

  不死の蛇 Lv3

  唆すもの Lv--

  地図 Lv4

  引戻し Lv3

  制圧の邪眼 Lv2

  <---ロック--->

  <---ロック--->

  <---ロック--->

 【種族特性】

  永劫の飢餓(継承元:餓鬼)

  暗視(継承元:小鬼)

  忍耐の限界(継承元:鬼)

  手弱女の化粧

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