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天国のお土産  作者: トニー
第一章:クァボ男爵領の惨劇
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1-08. 水を飲もう、なの

 そして僕らは川辺に戻る。


 ドザエモン状態で引っ掛かっていた場所の、ちょい上流。

 砂利原にさーさーちょろちょろ水が流れている景色は大差なし。


 浅瀬に踏み入り、川面に口を付けて水を飲もうとする。

 僕は悲鳴を上げる。


 お腹も空いていれば、喉も乾いてます。

 それは確か。


 結局あれから、獲物らしい獲物には出会わうこともなく。


 せめて水だけでも飲もうと川辺に来ました。

 そうだね、でもね!


 きっとこの川、ダナサス川の支流だと思うんだけど、あんまり綺麗じゃない。

 てゆうかほら、なんかゴミとか浮いてるじゃない。


 (いやーッ、やめて、許してーッ)

 

 こんな水のんだら死ぬ。

 絶対死ぬ。


 そうだよダナサス川といったらあれじゃん。


 エデン辺境伯の御小水を、セラト辺境伯とロディナ侯爵が飲んで、そのセラト辺境伯とロディナ侯爵の御小水を国王陛下が飲んで、その国王陛下の黄金水をガウェン侯爵が恭しくいただいてる、とか言われちゃって、言ったやつは当然不敬罪だよ公開処刑だ、になったやつでしょ?!


 はっはー、もう何を言っちゃってるんですか、貴人というやつは生水なんか飲みませんよ。

 王都じゃみんな、沸かした井戸水で紅茶ですよ。

 じゃなかったら果実酒でしたよ。

 いわんや王様をやだよ。

 

 というわけでだからやめーッ。


 「ナンダ? おかしな、ヤツだ」


 いったん顔を持ち上げて、ギークは周囲を確認する。

 確認するが、当然のこと何もない。なにもいない。


 なので再び目線は川面へ。

 身を屈め、きらめかない汚れた泥水てゆうか色が灰色だよ信じられない、に牙の並んだ口を付ける。


 (いやーッ、あッ、あッ、やめてよしてなんか入ってくる!)


 悲鳴を上げる。もう絶叫である。


 (うわあぁぁッ、イヤだッ。流れ込んでくる! ごくごくイッてる!)


 (いやあぁぁぁッ。神様ッ、もう死ぬ! 死んじゃうから!)


 僕の心中、大洪水。大騒ぎである。


 うう、汚された。汚されてしまった。

 もうダメだ。きっと明日死ぬ。今晩悶え苦しむ。お父様、お母様、先立つ不孝をお許しください。

 うぬ、あ、いやお父様は駄目だ。敵だった。


 ああそうだ、お父様をヤるときには、肥溜め液とかを腹一杯に飲ませて注ぎ込んで、それで膨れ上がったポンポンに蹴りくれて、何もかも踏み躙ってやろう、嗚呼そうしよう。

 泥水でこんなに辛いんだもの。こんなに悍ましいのだもの。まさにあのミアの心を裏切ってへし折りやがったクソ野郎に相応しい死に様だ。


 「やかましぞ、ナンダ突然。水飲ンダだけだろ」


 だってー、だってー。

 エグエグ。


 ふう、落ち着け僕。くーるになれ僕。この体はモンスターだ。小鬼だ。

 ちょっと汚れた水くらいなんだっていうのだ。きっと全然平気に違いない。


 そう、心構えだけの問題なんだ。

 大丈夫、大丈夫。


 心まで安く売った覚えはない。

 へいへい。


 あー、よしよし僕は冷静。変な電波とか受信してません大丈夫。


 (水が汚いの)


 超真顔です。まっ正面からメンチ切ってのクレームです。

 無論、遺憾ながら心情光景としてなのですが。


 「これくらい平気ダ」


 うふふふふふふ、ふふふふふふふふ。

 乙女心を弄んだな。僕の気持ちを裏切ったな。そういう問題じゃねーんだよファキン。

 女の子はいつまでも綺麗でいたいんだよ。なぜそれが分からん。


 と、おや? 《地図》になにやら動体反応。

 たべもの?


 ギークに告げて視線を向けさせる。

 そこにいたのは可愛い可愛いぬいぐるみ。


 川向う。

 茶色い短毛にくるまれた、ちょんとした子熊がそこにいた。

[WARN] 汚物を摂取しました。

[INFO] 汚物の構成成分を解析しています。

[INFO] 汚物の無害化に成功しました。


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