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天国のお土産  作者: トニー
第四章:潜み隠れて名を顕す
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4-14. コロシアム一回戦の日、なの

「サァサァそれでは皆様、紳士淑女の皆様方! おッ待たせいたしましたァァアアアアア!」


 ざわめきを制覇して、圧倒的な声量で、何やらハイテンションな語りが始まった。

 <<拡声(スピーカー)>>のギフトだろうか? 或いはその能力を再現する宝具かもしれない。

 宝具はもちろん貴重品だが、ここは王都でこの興行は教会の肝入りだ。

 それぐらい奢ってきても不思議じゃない。


「今日という日を待ちきれず、夜も眠れなかったという方も多いはず! 本日から当コロシアムでは都合六日、三週間に渡りまして、トーナメント形式にてモンスターバトルを開催させていただきます!」


 張り出されたトーナメント表を眺める。本日のギークの出番は四回戦目だから、あまり余裕はない。

 売り場の人、わたわたしてないでもっと手際よくお願いできないかな。


「更には最終日、優勝したモンスターと現役ハンターとの、エキシビジョンマッチも用意していますよ! ハンターはなんと、勇気ある若き女性ハンター! これはもちろん必見です!!」


 ギークは現在、悪徳爺フラッゲンの姿で賭札を購入中である。

 賭札の買い方は、基本的にはどのモンスターがどこまで勝ち昇るかを予想する形になっている。

 ただし途中で敗けた場合でも敗者同士で後日戦わされて、どのモンスターも必ず六回闘うことになる。

 よって正確にはどこまで勝ち昇るかというより、好きなモンスターの戦績予想をする仕組みだ。


 モンスターが途中で死亡した場合は、その回以降の全てが不戦敗という扱いになる。

 基本弱いモンスターでも、一回戦が黒星で、しかし生き残ることさえできれば、残りは全部相手方死亡の不戦勝で白星が付くことになる。両者不戦敗なら引分だ。六戦全部の勝敗を事前に読み切るのは、通常ならかなり難しいだろう。


 参加するモンスターの数は全部で三十匹。二匹はシードがいる。

 シード有なら四回、シードなしなら五回闘って、全てに勝利できれば優勝ということだ。

 そして優勝した後にも、もう一戦が控えている。相手はハンターなのだという。


「ほ、本当によろしいのですか?! 当然その、六戦分を予想して買いということですと、倍率は跳ね上がりますが、その代りこの通りにならなければ掛け金は一切お返しできない、ということになるのですが、、、」


 なにか当たり前のことを確認された。

 そりゃそうでしょ。外れて金銭が返ってくる賭け事なんて聞いたことがない。


 勝ち進んでいるモンスターに対しては、不戦勝確定の場合を除いて、今戦限り、或いは今戦以降の勝敗、というような部分買いもできるということだった。

 いちいち聞かれたということは、例えば最初の一戦は様子見で単発買いをする人が多いのかな? でも、ギーク以外に賭けるつもりがない僕には関係のない話だ。


 僕はギークの白星、白星、白星、白星、白星、黒星に賭けた。

 賭ける額は、河童に預けていた現金から、トーナメント開催期間中の生活費を差っ引いた残り、ほとんど全部だ。

 最初から六戦全部の勝敗を予想した買い方は、ハイリスクである分リターンも多目に設定されている。目論見通りにいけば、流石に端金とは言えない、結構な金額が返ってくることになるだろう。

 でも、スポンサーが教会だっていうなら別に平気でしょ? うん、平気平気。だから早く手続きをしてほしいね。一体何やっているのやら。


 掛け金が大金だから金庫に運ぶための護衛を呼んでいたらしい。

 屈強な男衆がぞろぞろ現れてちょっとビビった。しかしどいつもこいつも、ギークを胡散臭げな視線を向けた後、慌てて目をそらす。

 今のギークは悪徳爺の恰好をしているわけだが、如何にも裏社会の大物然とした風格が備わっているので、恐らくはそのせいかと思われる。

 いやはや護衛とは大げさな。見事的中した後ならばともかく、今積んだ掛け金自体にはレジェ鋼貨も混ざってないし、散財しようと思えばすぐになくなってしまう程度の額でしかないと思うのだけれど。


「……一応言っておくと、かなり非常識な額を賭けているからな? 少なくともカニーファやフラッゲンの常識としては、だが」


 ギークに小声でそんなことを言われた。あれれ?

 どうも物価という奴は難しいな。


 賭け札購入に纏わるあれこれが漸く済んで、師匠の姿でナタリアに合流した。

 すぐさまオーガの姿になって、用意されていた檻に入る。忙しい。

 変身の都度押し寄せてくる酩酊感に酔っ払いそうだ。

 少しくらくらする。


「何処に行っていた。先ほどから係のヤツに、出場させるモンスターは何処かとせっつかれて、迷惑していた所だ」


 ナタリアに苦言を呈される。はい、すいませんでした。だって受付のねーちゃんがとろいんだもの。


「さぁ! 次の戦いです! まだ緒戦、後が閊えていますからね! どんどん行きましょう。次なるカードは鎧犀アーマードライノセラス! 今大会、普段お目にかかることができない強力なモンスターが目白押しですよ! 対するはオーガ、こちらは皆さんおなじみですね! 鎧犀の実力のほどを見るのに最適な相手だと言えるでしょう!!」


 出番が来たのはいいのだけれど、なんだその紹介。ギークは当て馬ですか。

 そうかあれか、今日だけでえーと? 都合14試合? をこなすのだものな。いきなり対戦相手不在(しぼう)の不戦勝もないだろうから、緒戦はつまりすぐに試合が決着するように、あえて実力差がある組み合わせでトーナメント表を組んでいるわけだね。


 オーガは最低ランクだとC-。

 対戦相手だというからナタリアに調べて貰った鎧犀の最低ランクはC+だ。

 モンスターをランクでカテゴリ分けするときは、中央値を採用するのが慣例だ。

 よって最低ランクがC+だという場合、大抵はBランクモンスターにカテゴリされることになる。


 Bランクモンスターなら、間違いなく優勝候補の一角だろう。

 そりゃあまあ、そういう紹介の仕方にもなるか。オーガはそのままCランクモンスターだし。

 うん、誰がどう見たって当て馬ですね。それじゃあまあ先生ギークさん、頼みます。

 ここは一発、スコッと阿呆共の度肝を抜いてやってください。


 円形闘技場のリングに、オーガの姿でギークが上がる。歓声が上がった。

 しかしその時にあがった歓声が如何に少なかったのか。それが、次の瞬間に理解させられた。

 空間全体がビリビリくるような大声援に迎えられて真打登場。

 全身を鎧で固めた重騎士、或いは戦車か。それはそんな重厚堅牢さで現れた。


 見て取れる強大さから、振り撒かれる威圧感。コロシアムの観衆がその迫力に驚嘆の声を上げる。

 そして、津波のように押し寄せてくる声、声、声。


 「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」

 「潰せ!」「潰せ!」「潰せ!」


 怒号のような歓声の渦。

 渦、グルグル回る。黒い渦。


 僕の心に影が差す。何か嫌なものを思い出す。


 それはどす黒く。

 ねばねばと粘つく底無しの闇だった。


 ああそうだ、ここは処刑場だ。


 流される血の期待に歓呼する観客たち。

 嗤う観客たち。

 罵る観客たち。

 喚く群衆たちが居る。


 ロクデナシな罪人ども。罪人ども。

 お前たちは悔い改めさせようとして言葉を尽くす、三人の友ですらない。


 罪を犯した者たちの群れ。

 罪を犯す者たちの群。


 永劫に苦しみ藻掻き朽ちていくべきお前らだ。

 お前らこそが罪人だ。お前らこそが咎人だ。


 その高々と謳い上げているその声こそが。

 それがつまりはお前らの罪でなくてなんなのか。


 お前たちは因果応報の絶対を信じて、神が不条理をなすことはないと信じているから、ミアを殺したいわけですらないじゃないか。

 お前たちはただただ人が苦しみ悶えて死ぬ様を見ると、卑屈な自分が相手に優越したと思えるから嬉しいというだけの塵芥じゃないか。


 どうして誰もミアを助けてくれないんだ。

 救ってくれないんだ。


 身が震える。身が震える。僕の身を震わすのは何か。

 それは怒りだ。許せない。許せない。許せない。


 何たる非業。ミアはなにも悪くないのに。

 悪くなんて無かったのに。


 真っ赤に焼けた鉄の棒。骨を砕く為に設えられた万力と、身を引きちぎる為だけの滑車がそこに在る。

 鋭利な棘な覆われた座椅子があって、そして歓迎の笑みを浮かべるクズがいた。


 そのうえ更にお前たちはミアを罵るのか。地獄に落ちろと口を開くか。

 あんなに敬愛していますとか、お会いできて感激ですとか。事あらばの言葉は全部嘘だったのか。


 こんなにも大声援。こんなにも沢山の人々が。

 その誰も彼も、どれもそれもが。


 「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」

 「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」


 そうか。そうなのか。いいだろう、お前たちはミアの死を望むのだな。

 ならば僕はお前たちの死を望もう。お前たちの苦しみを僕は願う。

 悶えろ、苦しめ、そして死ね。僕はその光景を見て呵々大笑する悪魔になるのだ。

 覚えていろ、覚えていろよ。僕は必ずそれをしてみせる。


 そして僕は眼前に立ち尽くすモノを睨みつける。哀れな走狗。愚かな丁稚。

 お前がミアを殺すのか。こいつらの期待を背負ったその尖兵なのか。


「ミイ、ミイあなたまでそんな愚かなことをいうのですか? 私は、私たちは、神から多くのものをいただきます。私は幸せを沢山もらいました。だから不幸もまた受け入れたいと思います」


 ギークと相対した鎧犀は、リングに上がった後、一歩も動かなかったそうだ。

 試合開始の催促があっても微動だにしない。相手方の調教師がリング外で何をしてもだ。

 だからギークは鎧犀にまっすぐに歩み寄って、金棒でその硬そうだった頭蓋をぶん殴ったのだという。

 鎧犀が横転、失神して、試合終了。


 僕はよく、その辺りのことは覚えていないけれど。


(前略)

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] ギークは、レベルが上がった!

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] 現在の状態を表示します。


 ギーク

  妖鬼デーモンオーガ Bランク Lv1→Lv2 変身

 【ギフト】

  不死の蛇 Lv3

  唆すもの Lv--

  地図 Lv4

  引戻し Lv3

  制圧の邪眼 Lv1

  <---ロック--->

  <---ロック--->

  <---ロック--->

 【種族特性】

  永劫の飢餓(継承元:餓鬼)

  暗視(継承元:小鬼)

  忍耐の限界(継承元:鬼)

  手弱女の化粧

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