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天国のお土産  作者: トニー
第二章:赤鬼と匪賊
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2-21. その時が来る、なの

 朝起きる。師匠が横になったまま、こちら(ギーク)をじっと見ている。

 これが憧れの蜜月関係ってやつですよね? いいんですね? よしギーク、ここはおはようのキスをするところだ! その感触を僕にプリーズなんだ!


 (おはようございます、であります。ご主人様(マスター)


 (……、おはようございます、なの)


 朝餉をいただいて、それから河原で師匠に武芸を教わります。

 初めに弓術の訓練で、それが終わったら素振りとか、近接戦闘の模擬戦とかです。


 「多少サマにはなってきたが、うむ、どうも勘違いがあるのかもしれないな」


 ギークが持ち矢を全て射尽すのをじっと見守っていた師匠が、細い顎に片手を添えつつ講評してくれます。

 的中率はどんなものでしょう。五分五分か、六割くらいじゃないですかね?

 まだちょっと実戦では使えそうにありません。数撃ちゃ中たるでいくなら十分かも知れませんが、少なくとも狂犬狩りには使えないです。的を外して矢が森の奥に飛んで行ってしまったら、回収できません。


 「矢を飛ばすのは弓だ。お前じゃない。お前のすべきことは、弓に矢を飛ばすための力を蓄えさせることであり、そして弓が矢を飛ばそうとするときにその運行を妨げないことだ。お前は確かに力が強いが、それで逆に弓が矢を飛ばそうとする働きを押さえつけて、威力を殺してしまっているように見えるな」


 思うのですが、やっぱりギークに弓が向いていないのはないですかね。

 もうはっきりそう言ってやってよいのではないでしょうか。たぶん金棒が合っていますよ間違いないです。だって鬼なんだし。そこは赤鬼を見習ってもいいんじゃない? お似合いだと思うよ?


 「特に左手だな、弓を抑え込みすぎだ。弦がお前の腕を叩くのはそのせいだ。もっと優しくしてくれと文句を言っているのさ。もっと柔らかく、壊れやすいものを包み込むようなイメージで持たなければダメだ」


 「弦を引けば、弓は俺を押してくる。そんなイメージでは支えきれんし、吹っ飛んで行ってしまうだろう」


 あ、ギークがなんか一丁前に師匠に口答えを。

 師匠、僕が許します。こいつに折檻を。身の程を叩き込むのです。


 「今もっと優しくといったのは握りの話だ。弓はお前を押す、ならばそんなにしっかりと握りこんでいなくても、弓がお前から逃げることはない」


 説明しつつ、師匠は自身の短弓に矢を番えて、的に射放ちます。

 スカンと命中。


 「掌を能く作れれば、弓はこのように掌の内側で回転するものだ。矢は弓本体の中心ではなく、お前の場合は右だな、右側に番えている。だから右手を離れた弦は、弓本体に対して直線ではなく弧を描くような軌跡を描いて返ろうとする。その結果、弓は左回りの回転運動を行うことになる。これを左手で握りこんで妨げるということは、つまり弦が矢を押し出す作用を妨げるということになるので……」


 ぐう。

 うん、申し訳ないのですが、僕、暇です。

 師匠は一所懸命に、弓の使い方とかをギークに教えてくれています。師匠も子供の時分に院長先生とかいうのから教わったそうです。

 ギークは師匠の教えをまじめに聞いています。勝った相手から得るものなんかなんもねー、とかいうお猿な認識かと思っていましたが、そうでもないようです。


 弓術の時間が終わったら、棒切れ持って剣術の時間になります。

 今日の師匠は、斬り付けようとしてくる相手に対する身の捌き方や、間合いの読み方なんかを教えてくれています。

 でもそっちではあまり理論的な話はありません。ゾワッときたらサクッとよけて、みたいなフィーリング全開な説明になっています。何故なんでしょうか。

 そしてやっぱり僕は暇です。やることがありません。

 実技系のお話はどうしてもピンと来ないです。体がないので。


 午前中の師匠との訓練を終えたら、午後は狂犬(マッドドック)の森へと向かいます。

 涎ダラダラで飛び掛かってくる狂犬の牙顎を避けてスルリと側面に回り込み、相手の振り向きざまに矢筒棍棒を頭蓋へと埋めます。バウバォウッ、グボベッ、てな感じです。

 やっぱり棍棒安定ですよね。きっと種族的にそうなんですよ。弓なんて高等なものは使い熟せないのです。今からでも転向したらいいのじゃないですかね。


 山砦に戻って夕餉をいただきます。もう冬ですので、一日が短いです。

 家に戻って、師匠と寝ます。あったかいです。




 そうしたルーチンワークで幾日かが過ぎ去り。そしてついに恐れていた日が来てしまいました。


 (ひぎぃいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃっっ!!)


 なんかもう、身を裂かれるというか、千切られるというか。

 あうあう。なぜ僕がこんな目に合うのか。世界が終わるからか。これが死だからか。

 痛みってのはアレでしょ? 生命の危機とかそういうものを意識に警告するためにあるんでしょ? ほら怪我したよ気をつけなよみたいなアラートでしょ? じゃあこれ成長(ランクアップ)痛とか不条理だよね?! だってこれ生理現象であって別に生命の危機とかじゃないんでしょ?


 というわけでギーク、ランクアップを果たしました。ギークは僕が心中でギッタンバッタンビクッビクンッブクブクカックシな七転八倒やっている間、蹲ってずっと呻いていましたが、今は平然としています。鈍感さんなんですね。分かってますよ。

 で、痛みに耐え抜いた成果はどんなものでしょう。どこか変わりましたでしょうか?


 (どう思う、なの?)


 (そうでありますね、背中と腰回りが強化されたように見えるであります。主にバランス感覚や俊敏性に補正が入ったのではないかと観察されるであります)


 ふーん、と僕。

 言われて改めて観察してみるが、よくわかりませんね。身体の感覚を確かめるように、ギークが反復横跳びとか体操とかをしていて、じっとしていてくれなかったのも悪いと思います。

 折角なので、延長戦で狂犬をもう少し相手取ることにしました。新しいボディの慣らし運転を兼ねてです。

 ここ何日かは、二頭同時に相手取る、三頭同時に捌いてみるといったことにも挑戦をしていました。ギークの身のこなしも師匠のおかげでかなり上達して、サシではもはや狂犬(マッドドック)が温すぎる相手に成り下がってしまっていたので、ハードルを上げたのです。

 まずはお試しで一頭だけ。うん、楽勝すぎますね。なんの確認にもなっていません。二頭同時はスキップして三頭同時でいいでしょう。丁度いい場所に固まっているのがいます。

 ギーク、危なげなく勝利します。ランクアップした成果でしょうか。でもギークの技量が上がったからだと言われればそうかもしれません。素人目にはよくわかりません。

 よってギークさん、感想をどうぞ。


 「さあな」


 ……、さて、帰りましょうか。ここ最近、だいぶ狂犬との遭遇率が下がった気がしています。今日もだいぶ森の奥にまで踏み込みました。近いうちに、この森丸ごとを殲滅できてしまうかもしれません。そうしたら次の狩場を探さないといけませんが、どうしましょうかね。


 そして山砦に戻ります。


 「なんだかまた、逞しくなったか?」


 さすが師匠です。即、気づかれました。よく見ています。ランクアップしたのだと応えると、師匠の繊手が伸ばされて、ギークの肩回りや腰回りを撫でたりさすったりし始めました。


 「うん、以前にもまして、筋肉の付き方が優れた戦士のものになっているな。こういう言い方はなんだが、あの居なくなってしまったという赤鬼(レッドオーガ)よりも、よほどバランスがいい」


 バランスですか。


 「件の赤鬼のような筋肉の付き方は、見たままパワータイプだな。別にだから即ダメだとか弱いだとか言うことではないのだが、暴力に特化しているのだということが見て取れる。まあ、近付きたくないタイプの筋肉(おとこ)という感じだ」


 赤鬼(オカシラ)の見た目を思い浮かべます。岩のような筋肉の塊だったような。一方でギークを例えるならなんですかね。岩ではないな。


 「(オーガ)というのも、基本的にはああいうモンスターだと聞いていたんだがな。人間の男(ロクデナシ)をそのままモンスターにしたような、荒くれで、粗野で、力さえあれば何でも捻じ伏せることができる、そう信奉しているような連中だとな」


 おや師匠、男嫌いなんでしょうか。実は百合だったのでしょうか。僕の胸のときめきはそのせいだったのでしょうか。


 謗り者門に立つ、といいます。

 噂をすればなんとやらの類義語です。


 翌早朝、赤鬼(オカシラ)が山砦に帰ってきました。

 寒空の下、隆起した筋肉と、赤黒い肌が、もわもわと蒸気を立ち昇らせていました。


 そして赤鬼(オカシラ)は、山砦にいた全てのハンターと、それを邪魔した相手を全て。


 殺してしまいました。


[INFO] ギークは、狂犬マッドドックを殺害しました。

[INFO] ギークは、狂犬マッドドックを摂食しました。

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] ギークは、レベルが上がった!

[INFO] ギークは、狂犬マッドドックを殺害しました。

[INFO] ギークは、狂犬マッドドックを摂食しました。

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] ギークは、狂犬マッドドックを殺害しました。

[INFO] ギークは、狂犬マッドドックを摂食しました。

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] ギークは、レベルが上がった!

(中略)

[INFO] ギークは、ランクが上がった!

[INFO] ギークは、狂犬マッドドックを殺害しました。

[INFO] ギークは、狂犬マッドドックを摂食しました。

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] ギークは、狂犬マッドドックを殺害しました。

[INFO] ギークは、狂犬マッドドックを殺害しました。

[INFO] ギークは、狂犬マッドドックを殺害しました。

[INFO] ギークは、狂犬マッドドックを摂食しました。

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] ギークは、レベルが上がった!

[INFO] ギークは、狂犬マッドドックを摂食しました。

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] ギークは、狂犬マッドドックを摂食しました。

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] ギークは、レベルが上がった!

[WARN] ギークは、外敵からの攻撃を受けています!

[WARN] ギークは、外敵からの攻撃を受けています!

[WARN] ギークは、外敵からの攻撃を受けています!

[WARN] ギークは、外敵からの攻撃を受けています!

[WARN] ギークは、外敵からの攻撃を受けています!

[WARN] ギークは、外敵からの攻撃を受けています!

[WARN] ギークは、外敵からの攻撃を受けています!

[WARN] ギークは、死亡しました!

[INFO] ギフト「不死の蛇」により、自己治癒は一定時間処理を継続します。

[INFO] ギークの、蘇生を試みます。

[INFO] 転生条件を、満たしました。

[INFO] ギークの、種族がオーガから妖鬼デーモンオーガに変更されました。

[INFO] ギークに、現在の種族特性が継承されます。

[INFO] ギークは、種族特性「手弱女の化粧」を獲得しました。

[INFO] ギークは、蘇生しました。

[INFO] ギフト「不死の蛇」は、レベルが上がった!

[INFO] ギフト「不死の蛇」は、Lv3になりました。死後治癒活性度合が強化されます。

(中略)

[INFO] ギークは、レベルが上がった!

[INFO] ギフト「引戻し《プルバック》」の、実行キーを取得しました。

(中略)

[INFO] ギークは、レベルが上がった!

[INFO] 現在の状態を表示します。


 ギーク

  オーガ妖鬼デーモンオーガ Cランク→C+ランク Lv11→Lv24→Lv6 空腹(忍耐)

 【ギフト】

  不死の蛇 Lv2→Lv3

  唆すもの Lv--

  地図 Lv3

  引戻し Lv1 (New!)

  <---ロック--->

  <---ロック--->

  <---ロック--->

  <---ロック--->

 【種族特性】

  永劫の飢餓(継承元:餓鬼)

  暗視(継承元:小鬼)

  忍耐の限界(継承元:鬼)

  手弱女の化粧 (New!)


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