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天国のお土産  作者: トニー
第一章:クァボ男爵領の惨劇
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1-03. 君の名はー、なの

(じゃあ、君の名前はギークなの。そうしましょう。今決まりましたの)


「ア?」


 名前がないと不便だからね、色々と。

 僕から呼び掛ける分には、他に選択肢なんかないわけでそうでもないけど。


 回想シーンとかで表現に困るし。


(さてそれではギーク君。君は御年おいくつですなの?)


 年齢も大事。

 とても仲の良い友達ができましたー、とか。

 幼き日のミアが言えば、大人たちは大体その二つを聞いてきたからね。


 きっと大事なんだよ。

 どこのだれで、何歳なのかってことがね。


 どうやって仲が良くなったとか。

 どんな話をしたのかとか。

 一緒に遊ぶ約束をしたんだとか。

 そういうことよりもね。

 そういうことを頑張ってミアが説明しようとしても、もう全然聞いてなかったしね。


「なにか分カランが」


 ギーク、応える。


「オマエハ喰えないノダナ? では食い物は持ってイルか?」


 駄目だこいつ。訂正、応えてない。

 誰か叱ってやってくださいよこの野蛮人。

 いや小鬼。


 食い意地全開フルスロットル。

 そうだよね餓鬼だものね。


 うん? あれ? なにかおかしいな。

 こいつ小鬼だよな、餓鬼じゃないな?

 処刑に使われるモンスターっていったら、餓鬼のハズなんだけど。


 すこし考える。小鬼、餓鬼、餓鬼、小鬼。

 まあどっちも同じようなモンスターだと言えば、そうなんだけれど。


 死体を放置しておくと、不死者(アンデット)になるといわれている。

 夜な夜な徘徊して人を襲う化物だ。


 そして不死者に齧られると、齧られた相手も不死者になる。

 バイオなハザードがリアルにどーんだ。


 だから焼く、若しくは餓鬼に喰わせる。

 餓鬼以外は良くない。死体が残るようなモンスターは、その用途には使えない。

 モンスターが不死者になったら大変だ。ドラゴンゾンビ―とか、恐ろしい。

 だから使ってはダメだ。


 ミアを喰らったであろうこいつが、餓鬼じゃないのは故におかしい。

 でもコイツ、腹ばっかり膨れて他はガリガリなんて体型じゃない。


 餓鬼って小鬼に成長したりするんだっけ?

 するのかな?


 ランクアップと種族変化は違うよね。

 うーん、よく知りませんごめんなさい。


 おっとそれで?

 この餓鬼擬きな小鬼には何を聞かれた?


(僕は心の妖精さんなの。荷物は持てないの)


 見て分かれ。


 まあいいや、成長するんだろうきっと。

 実際しているみたいだし。


 いつか機会があれば、誰かに聞こう。

 そんな機会があるかは、これはとっても怪しいけれど。


 僕、基本ミアと、もとい今はこの小鬼(ギーク)と以外、喋れないし。


(だから食い物もないの。あと食べられないの)


 大事なことなので二回言う。


「チッ」


 あっ、丁寧に答えてやったのに舌打ちで返しやがった!

 この野郎。


「グゥ、腹が減ッたゾ」


 さっき、ミカンをたらふく食っただろ。

 突っ込みたい。


 しかし、感覚をある程度共有しているために、それが事実であることは分かる。

 胃袋がというより体中、全身が飢えているのだ一体なぜだ。


 ミカンを詰め込んでいた時、一瞬感じた漲る高揚感はすでに失われてしまっている。

 ミカンはおいしくて心は幸せになれたけれども、あれはあくまでデザートだ。

 主食がほしい。


 肉が喰いたい骨を齧りたい血を啜りたい、、、

 っていやぁぁぁあああああああああああああ?!


 ちょ、ちょっと待って、今のなし。

 肉を喰いたい、くらいまでが僕の意見ね?

 そこから先は気の迷い。ははは、いやだなー、なんのことだかわからないなー。

 花ももうすぐ恥じらうだろう乙女十三歳に何を言わせるのかっていう話ですまったくもー。


 仕方ない、ならば狩猟に赴くしかないだろう。

 ないのだ。さあ行け。


「食いもの、ナイか」


 ギーク君、きょろきょろ。

 もうすぐ日没だろうというのに、世界はうっすらと明るい。


 色は分かりづらいけれど、草木枝葉の陰影造形なんかは、未だによく見えている。

 夜目が効くんだろう。種族特性ってやつかな。猫と一緒だね。

 瞳の形が猫目だったかどうかは記憶にないが。


 僕は脳裏に、地図(マッピング)を表示させる。

 最近手に入れたギフト。災厄の契機となったギフト。


 打ち上げられた川の場所、果樹園の位置、そこからの逃走経路と現在位置が分かる。

 けれどここが大陸上のどの辺りなのか、そういうことはさっぱりだ。


 ギフト。神様がお恵みくださったのだという権能。

 人間だけに扱えるはずの、特別なものだと教会が主張している、そういう力。


 教会に相応のお金を払えば、そして望むギフトの在庫があれば、授けてもらうことができる。

 おお、恵みを等しく与えたもう我らが父よ。

 うん、全然等しく与えてないな。


 ギフトには習熟という概念がある。

 使えば使っただけ、馴染めば馴染んだだけ、使い勝手が向上する。

 大凡のギフトはそうだという。


 このギフトを授けられてすぐに、ミアは捕縛されてしまった。

 だから僕はまだ、あまりこの地図(マッピング)というギフトを使い熟せてはいない。


(うーん、僕も探してみるの。ちょっと、木を降りて、ゆっくり移動してみてほしいの)


 ギークに指令発動。言うことをきけー。

 探すといってもどうやって? もちろん地図(マッピング)で。


 教会にて授与を受ける前に、事前に調べていた知識によると。

 地図(マッピング)のギフトに極限まで習熟すれば、地図(マッピング)上に表示されている任意の地点について、天上からの視点で以てリアルタイムな観測映像を得ることができるようになるらしい。


 露天風呂とか、覗き放題ですよ?

 ふざけてますね、そういう連中は残らず逮捕すべきだと思います。

 おちおちプライベートなビーチでヌーディストにもなれません。

 所有者は女性に限るか、去勢を義務付けるかすべきでしょう。


 が、そんな機能は僕にはまだ使えない。

 でも、自分の近辺にどんな形状のものがあるか、動くモノはいるか。

 そうした情報については、現時点でもおまけな周辺探索(ミニマップ)機能で把握ができる。


 おいしそうなもの、おいしそうなもの。

 どこかどこかにいませんかー。


 補足すると、周辺探索(ミニマップ)の圏内が、地図(マッピング)において踏破したとみなされる、訪問や通過に伴って、<未知>ではなくなっていく範囲でもあるようだった。

 これ、既知世界を塗り潰そうと本気で思ったら、一生かかっても無理だろうね。


(向こうの木、鳥の巣、卵があるの!)


 ギークに報告。よし、卵をゲットせよ。

 この馬鹿が見失わないように、見つけた卵は即座に地図(マッピング)にマーキング。


 マーキングというのは、地図(マッピング)で初期から利用できるもう一つの機能。

 物品ないし動物をマーキングして、もしそれが移動したならば追跡するというもの。

 便利そうだが、そのマーカーが表示されるのは、<未知>ではない部分にだけである。


 マーキングした対象が<未知>に移動しても、マーキングが解除されるわけではないようだ。

 しかしどこに行ったのかは分からなくなる。


 一生かかっても全部を既知にはできないだろうが、うろつきまわって少しでも<未知>を減らしていくことで、使い勝手が飛躍的に向上するギフトだといえるだろう。

 実に歩数稼ぎな運動ダイエットに良さそうな感じである。貴族御用達だな。


「ヌ、ナンダト、ドレだ」


 こっちだよー、そっちじゃないよー。

 よーしよし、僕は今、スクランブルエッグが食べたいぞー。


[INFO] 命名が行われました。

[INFO] 小鬼の、個体名が「名前なし」から「ギーク」に変更されました。

[INFO] ギフト「地図マッピング」に、マーキング「ウトの巣」を追加しました。

[INFO] 現在の状態を表示します。


 ギーク

  小鬼 Dランク Lv2 空腹

 【ギフト】

  不死の蛇 Lv2

  唆すもの Lv--

  地図 Lv1

  <---ロック--->

  <---ロック--->

  <---ロック--->

  <---ロック--->

  <---ロック--->

 【種族特性】

  永劫の飢餓(継承元:餓鬼)

  暗視(小鬼)

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