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天国のお土産  作者: トニー
第二章:赤鬼と匪賊
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2-09. 君を忘れじ、なの

感想などいただけますと励みになります。

誤字、脱字など、ご指摘いただければ幸いです。

 ありがとう髭面。キミのことは忘れない。


 やりました。住処ゲットです。住所は匪賊集団<<赤鬼団>>の山砦アジトの内側です。

 小さいし、ボロっちいし、汚れているし、古いし、なんだか少し臭い気もしますが、まあこの際です。我慢して差し上げましょう。

 そろそろ水が凍り始めるほどに寒くなってきた昨今、野宿よりかはなんぼかマシです。ギークと一緒に、金棒で赤鬼にあの世までかっ飛ばされた、そしてギークとは違い帰還は叶わなかった哀れ髭面男の、元住居であるということです。


 金棒でぶん殴られた翌早朝。ギークは放り込まれていた山砦アジトのマウ小屋のワラの上で意識を取り戻した。そしてその直後には、毎度のプッツン発動で、手近にいたマウを一頭、ヒヒーン、ガブッ、ブチッブチブチブチッ、ヒヒーン、、、とヤッちゃいました。両腕拘束されていたんですけどね。頭突きと体当たりと足蹴りと噛み付きでのやらかしです。酷いもんです。

 騎乗動物(マウ)のような家畜は集団の財産であることが殆どです。しかも相当に高額な部類です。賠償でもめるかと思いましたが、それも髭面の乗っていた分のマウがちょうど一頭余ったから、ということで不問にしてもらいました。


 そんなわけで、ありがとう髭面。キミのことは今日一日くらいは忘れない。名前も知らないし確認する気もないし覚えもしないだろうけど、どうか安らかに成仏してほしい。

 黙祷。ついでに場面回想。


 マウ小屋の騒動を聞きつけたのか、わらわらと人間が集まってきました。そして血塗れになりつつマウの残骸を貪っていたギークは、その後ひとしきり食べて正気を取り戻したところを、オカシラと呼ばれていた赤鬼の元に連行されたのです。なお、河童はマウ小屋に置き去りでした。


 「オウ、スマナカッタナ、兄弟」


 連行先で引き合わされた赤鬼には、開口一番で謝られた。謝られたといっても、誠心誠意とかでは全然ないです。「おう、すまねえな」という感じ。ああいや、発言まんまか。なんだろう? 筋肉質な大工に担がれた丸太がクリーンヒットで、すまねえなじゃねえ、この落とし前、とか喚きかけたところで、筋肉その2とその3に凄まれて、すいませんでしたおぼえてけつかれ、とケツ捲るシーンとかあるじゃん? あの筋肉大工曰くの、すまねえな、というセリフのノリなんですが、分かりますかね?


 「ワガ一族(イチゾク)ガ、ヨウヤク見付(ミツ)カッタトキイタノダ。ソレデ歓迎(カンゲイ)ニ出タ。トコロガチガッタ。アタマニ血ガノボッテシマッタヨウダ。マア、ユルセ」


 戒めを解いてやれと、赤鬼が配下の匪賊ひとりに命じる。この時点でギーク、全身マウの血塗れ、両腕は背中側で針金グルグル巻きでした。酷いもんです。


 「敗れたのは俺の力不足だ。別に貴殿に恨み言を述べるつもりはない」


 ……、ギークが、ギークが何か格好良いっぽいことを言っている気がします。幻聴でしょうかね。マウ一頭を丸々平らげた直後なので、一時的に胃袋(こころ)の容量が拡張されていたんですかね。

 ほら、赤鬼も厳つい顔の目を細めて、何やら訝しげにこっち見ています。


 「……、随分ズイブン流暢リュウチョウシャベル。アタマモ、ヨサソウダ」


 そっちですか。ああ、やっぱりちょっと普通じゃなかったんですね。なんとなくそんな気はしていました。ギーク、(オーガ)になって以降、ほとんど人間と同じくらい流暢に喋ってますものね。多少アクセントがおかしいときはあるけど、基本気にならないくらいペラペラです。

 一方でこの赤鬼の喋り方。キーキー声だった小鬼のころのギークとはまた違いますが、くぐもっていて濁っていて、どうも聞き取りにくいです。小鬼と赤鬼(レッドオーガ)の中間地点にいる(オーガ)だけが流暢に人語を操るというのもやはり不自然ですから、(オーガ)になったギークがちょっと特殊個体みたいな感じになっているのでしょう。

 ……、ところでこの特殊個体(ギーク)。全身血塗れですが、頭良さそうですか? 誰と比べての話ですかって以前に、赤鬼(あんた)さん目が腐ってませんか? ほらなんか、歩いてきた後とか、ビッチャンビッチャンで何のホラーだという感じになっているのですけど、これ誰か掃除するのですかね。


 「オマエ、オレノ手下ニナレ。(コトワル)ナラ殺ス。(シタガウ)ナラ、ワルイヨウニハ、シナイ」


 赤鬼の目線が、ちらりと金棒に向く。とてもモンスターっぽい直截的な物言いで好感が持てませんね。

 僕としてもメリットずらずらと思い浮かべて並べた挙句、だが断る、とやりたいところです。しかしその場合「ソウカ」でその金棒がブワゥンと来るわけですね。よし、うん、なるべくいい条件を引き出すのが僕の役目だな。

 そんなわけで、悪いようにはしない、の言質を具体的に詰めました。成果発表です。


 ・旧髭面宅を譲り受ける。

 ・メシは朝夕出してもらう。

 ・赤鬼の配下として赤鬼の出撃に同行する。

 ・自由に狩猟に出ることができる。代わりに持ち帰った獲物の半分は納める。

 ・今回のマウの損害は不問に付すが同じことは繰り返さない。


 以上な次第です。まあこんなところでしょうね。頑張りました。

 メシの量に制限を設けさせなかったのは、もちろんわざと言及を避けたのですが、かといってあるだけ全部よこせが通るとも思えません。ほどほどに少しずつ遠慮しなくなっていく作戦で行きましょう。

 同行といったのは、配下になったからってなんでもやりますな便利屋遣いをされてはたまらないからです。僕も忙しい身ですからね。ではとりあえずお前が汚した地面を舐めて綺麗にしてもらおうかとかは御免です。ぶっちゃけ赤鬼(あんた)が働く時だけ働きますよってことで、赤鬼(あんた)以上には働く気はありませんよってことです。ソウカワカッタとか、気軽に頷いたけどちゃんとわかってくれたか? 別にそこまで頑なに、お願いされた仕事を拒み続けるつもりもないけどさ。床舐める掃除はしないけど。

 で、狩猟ね。異次元胃袋直行でしょうからね。持ち帰らないです。狩りの成果はきっと毎日ゼロです。ゼロは割れないです仕方ありません。

 契約期間も定めてはいませんね。気が向いたら出て行っていいという意味だと前向きに解釈します。そのうち夜逃げします。マウ小屋で同じことやらかしたら速攻とんずら決めます。前にギークが語っていた勝敗と服従の考え方からすれば、あの赤鬼を打倒するまでは従ってやる、とか言い出すかもしれませんが。まあそれでもいいでしょう。今は雌伏の時です。エデン辺境伯(おとうさま)の寿命まではまだまだ猶予があるはず。事故とかで死んだりしないことを祈ります。もしそんなことがあれば遺憾ですが嫡子や次男(おにいさまがた)とお話合いが必要ですね。

 なんにせよ、「わかった、勝者には従おう」で話を終わらせようとしたギークは後で説教です。


 マウ小屋から河童を回収し、背負ってアジトの門番の下へと向かいます。門番に用向きを聞かれたので、川での水浴びと応えます。

 え、いや、鬼がきれい好きとは意外だなも何も、酷い有様でしょ現在。血塗れですよ?

 実に凶悪な鬼を演出中。そういう名前の熊じゃねーんだよ。このまま放置では悪臭がすごいことになるでしょう。ギークがどうなのかは知りませんが僕は嫌です。


 門番の男は少し迷ってから、オカシラに確認してくるというので、その場で待機します。

 ……、門番て普通、最低でも二人一組だよね? 今の一人だけ? で、その一人だけが持ち場立ち去ってどうするのよ。いや逃げないけどさ。少なくとも今は。


 (しかしあの金棒でブッ叩かれて、よく無事だったものなの)


 手持無沙汰で暇だったので、なんとなくの感想を述べる。

 と、ギークではなく河童が反応を返してきた。


 (ご主人様(マスター)、少なくとも身体は一度死んでいたであります。私は、私はまた、こうしてお話ができて、大変に嬉しいのであります)


 ん? なんのことですのん??

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