2-08. 赤鬼に金棒、なの
感想などいただけますと励みになります。
誤字、脱字など、ご指摘いただければ幸いです。
(見張り台の男が、こちらに気づいたようであります)
と、河童。
……、見張り台? あー、あの木なのか何なのか分からなかった黒っぽい奴ですかね。
(誰かを呼んでいるようであります)
えーと?
だいぶ距離があると思うのですが、ばっちり見えているのでしょうか。
(オカシラヲヨベ、イチゾクノ、イキノコリダ、であります。武装しているようでありますが、正規軍にしては装備が痛んでいるように見えるであります。別の見張り台の男とも、統一感がないであります。匪賊の集団、あれは匪賊の山砦ではないかと予想される、のであります)
見えているようです。
信じがたい視力です。読唇術までこなしているようでさえあります。なんなんでしょうか、この河童は。
「匪賊? 敵か? 食い物か?」
と、ギーク。
敵かといわれると、どうなんでしょうね。もちろん後半の問はスルーしますが。
匪賊といえば、徒党を組んで悪事を働く悪い人たちですね。まあつまり我々と同じようなものですね。こっちなんて領主殺しの悪鬼ですからね、徒党というとちょっと違いますが。
でも向こうは人間、こちらは鬼ですからね。分かり合える関係でもないでしょう。
……、でも似た者同士なら、夕餉くらい、丁寧に頼めば分けてもらえませんかね。
情けは人の為ならず言いますものね。情けを受けたい側が言っちゃダメな格言ですが。
(お頭、とやらがこちらに来るようであります)
河童が報告を続けてくれる。
すごいねー、この子、有能ですわー。良い拾い物をしましたねお客さん。
(テキダトゴカイサレルナ? どうも、先方に敵対の意思はないようであります)
先方にはなくてもねー。
そろそろ空腹プッツンを迎えると懸念されるギークの前に、エサになりえるものがあらわれるかもという時点で、血を血で洗う予感がします。
賊徒相手に遠慮は無用、という意見の方もおられるかとは思いますが。
自分が狙われているというなら別ですが、大体にして賊かそうでないかなんて、領主やっている貴族に従順なのかそうでないのかくらいの意味しかないわけですからね。
どっちにしろ人間は人間です。人間の形したものを食べるとかホント止めてほしいです。自分がこれでも人間なんだという自信がなくなってきますので。
どうしましょうねー。
面倒ごとですよね。逃げてしまいたいです。
うん、逃げましょうか。
ギークは、逃げ出した。しかし、まわりこまれてしまった!
逃げられませんでした。
相手、騎乗動物に乗ってるのだもの。そりゃあ荷物満載で遮蔽物なしの場面からの逃走は不可能ってなもんです。
ダカダンッ ダカダンッ と駆け寄ってきたそいつらに、あっという間に取り囲まれてしまいました。
獣の毛皮を纏い山刀を佩く、如何にもな匪賊衆です。
もし、切った張ったになってしまったとしたら、勝てる相手でしょうか?
どうでしょう。鬼はCランクですからね。つまり武装した兵士並みというランキング。であれば順番に一対一ならいけるような? でも普通なら一斉で来るよね。それはもう、ちょっと無理なんじゃないかな。
囲みを一点突破するしかないでしょうか。
マウに乗っている以上、相手方の攻撃は上方から来るだろうから、それは河童シールドな甲羅で防御しましょう。カキーンです。その線でどうでしょう。それならいけるかもしれません。
目論みをご破算にさせる雄叫びが上がったのは、そんなことをつらつらと考えていた時でした。
「ヌ、グゥ、、、ガルァァアァァァッ!」
まさかの、ギーク。このタイミングできたのか?!
と、思ったが違いました。
やや緊張の面持ちでギークを取り囲んでいた匪賊たち。
そいつらを追いかける格好で、大きな影が一つ。
吠えつつこちらに大股で歩み寄ってきていたのです。
「ガルァァ! チガウッ、コイツハッ チガウゾ!」
そいつは、ギークを取り囲んだ匪賊どもの後ろからのっそりとあらわれました。
人間一人分ほどはあるだろうサイズの金棒を悠々と担ぐ、大柄な人型モンスター。
ギークをふた回りは巨大化させたような、赤黒い肌の大きな鬼。
それはBランクに君臨する鬼族の雄、赤鬼です。
……、あの、えーとですね、お頭ってまさか、赤鬼です?
マジですか?
というか殺気ビシバシでメチャクチャ怖いのですが。
あの、敵対の意思はなさそうって、それ信じて大丈夫な情報ですかね河童さん?
「コイツハ、ワガ一族デハナイ! ヨソモノダァ!!」
金棒の先をギークに突きつけて、赤鬼が吠える。
赤鬼といえば鬼の上位種のはずですが、おしゃべりは苦手なのでしょうか? ギークのほうがよほど流暢にしゃべりますね。いやそんなことより、喋っているというか喚き散らしている内容がどうも剣呑です。
待ってください、それこそこっちに敵対の意思はありませんよ?
赤鬼はランク的には血染熊の同格。武具を扱うために、危険度でいうなら凌駕する化け物です。
格下にあたる鬼が真っ向勝負など、まさか挑める相手ではありません。僕は身の程をわきまえています。
もし戦うならば、まずは時間を所望します。
その間にとりあえず毒でもたんまり盛って、武器な金棒はどこかの谷底にでも捨てた上で、それこそ河童が上に搭載していたくらいの大岩で封をしてからでなけば、全く御免こうむります。
僕が指示を出すまでもなく何かを感じたものか。ギークは背負っていた河童を河原に降ろし、そしてまた弓矢も同じく手放しました。
そうですね、遺憾ですが取り敢えずは白旗ですね、降参しましょう。
気が進みませんが已むを得ません。そうしましょう。
しかして僕がギークの真意を確認する暇もなく。
ギーク、身軽になった上半身をスウェーバック。
って、オイ! 鼻先を何かとんでもない気配がかすめた! 掠めましたよ?!
「グルァォォアァアアオァァァァァァァッ」
赤鬼さん雄叫びを上げて、金棒をギークに向かって全力フルスイング。
やばい、死ぬ。これは死ねる。殺意しか感じない。
なんでなんでなんでー?! こっちなにもしてないじゃないかー?!
かわす。
屈む。
避ける。
避ける。
逃れる。
何という暴力の渦。
赤鬼の咆哮とともに振り回されるそれを、ギークはよく凌いだと思います。正直ちょっと感動しました。
しかしながら、そうであっても、少しずつ後退してしまうのは、もうどうしようもなかったです。
こんな攻撃、こんな暴力、僅かでも受け止めることなどできないのです。
甲羅でも金属弓でも、受けた瞬間叩き壊されて吹き飛ばされた挙句、続く一撃でトドメ確定でしょう。
そういう未来しか見えないです。
集中乱したらクリーンヒットで即死直行、僕としてはギークに声すらかけられなかったです。
(ご主人様ッ)
振り落とされたままの姿勢で、河童が悲鳴を上げる。
あ、ギークの逃れた背後に、匪賊の仲間、おそらく赤鬼の手下に成り下がっているのであろう髭面が。
「お、おかしら! ちょ、ちょっとまッ」
背面が塞がれてしまったので避けきれない。
黒き金属の豪風が、右から左。ギークの肩口および側頭部に吸い込まれた。
後ろの髭面ごと、巻き込んで。
[WARN] ギークは、外敵からの攻撃を受けています!
[WARN] ギークは、外敵からの攻撃を受けています!
[WARN] ギークは、外敵からの攻撃を受けています!
[WARN] ギークは、外敵からの攻撃を受けています!
[WARN] ギークは、外敵からの攻撃を受けています!
[WARN] ギークは、死亡しました!
[INFO] ギフト「不死の蛇」により、自己治癒は一定時間処理を継続します。
[INFO] ギークの、蘇生を試みます。
[INFO] ギークは、蘇生しました。
[INFO] 現在の状態を表示します。
ギーク
鬼 C-ランク Lv10 空腹(忍耐)
【ギフト】
不死の蛇 Lv2
唆すもの Lv--
地図 Lv2
<---ロック--->
<---ロック--->
<---ロック--->
<---ロック--->
<---ロック--->
【種族特性】
永劫の飢餓(継承元:餓鬼)
暗視(継承元:小鬼)
忍耐の限界




