2-01. 怪音に遭遇、なの
ジュパオォンンン!!!
収束された超高熱の閃きが彼我の間を貫く。
空気の焼け焦げた匂いが僅かに漂い、着弾地点で蒸発した水蒸気が靄を作る。
「掠っただけだな。下流方向に逃げたぞ! 追跡は?」
閃光を撃ち放った騎士が、支援役を務めるハンターに尋ねる。
「問題なーし。俺の地図にマーキングした。もう逃がさないさ」
問いかけられたハンターが応じる。
通信の魔具で、残るメンバーに指示を飛ばす。
直ぐに、
「光爆!」キアッ!
「振動操作:衝撃波!」グォバン!
「電撃操作:雷雨!」ダダダダダダン!
複数の範囲攻撃による爆音が轟く。
「人間大の相手に、いろいろ過剰としか思えないな。このメンバーを紹介された時には、どこの高位竜を狩りに行くのかと思ったものだが」
この場には、おそらくは人間たちの最高戦力が集められていた。
英雄クラスの戦力が5人。この地上にいるどんなモンスターが相手であろうと、討ち果たすことが可能だろう戦力だった。
「聖杯を穢した相手です。不死身との噂もある。教会が神経質になるのも当然でしょう?」
支援役のハンターが苦笑いで返した。
「聖杯ね。ふん、まあいいがね。さて、俺も蒸発させに出る。後は任せるぜ」
「了解、英雄騎士さん。任されましょう」
最後に一言。
「ああ、討伐証明は、お忘れなく」
◇ ◆ ◇ ◆
私室にて。
輝く金髪を侍女に梳いて貰いつつ、沢山のフリルが付いた服を着た、如何にも良いところのお嬢様然とした少女が、目線は正面の鏡に向けつつ口を開く。
「私、決めました。やはりお父様におねだりするのは地図のギフトにします」
背面から、鼈甲の櫛で少女の髪を梳る侍女のクラナスは反応しない。
この場にはこの少女と自分しかいない。
しかし少女の語りかけている相手が自分ではないことが、彼女にはわかっていた。
「遠慮しなくてもよいのです。確かに、道案内を雇えば済むことかもしれません。けれど私は他でもないあなたにそれをお願いしたいのです。もちろん、護衛は他に雇うことになるとは思いますが」
お嬢様に変な癖が付いたら大変だ。
侍女であるクラナスには、その可能性に気が付いたら、指摘して止めさせるという任務があった。
だから本来、お嬢様のこのような独白癖は矯正しなければならないものだったが、気心知れない他の人の前では絶対にやらないからとお嬢様自身から懇願されて以降、クラナスは約束が守られている限りでは見逃すことにしていた。
「ええ、だっていつまでも私と同じ世界しか見れないというのも詰まらないでしょう? せめて見たいものくらいは、見たい時に、自由に見えるようにはして差し上げたいのです。……、そうですね、私もクラナスの毎日の下着の色には興味がありますよ?」
クラナスの手が止まる。危なかった。
うっかりすればズッコケて、お嬢様の髪を何本か抜いてしまいそうだった。
「お嬢様ぁー?」
「あ、ごめんなさいクラリス。今のは違います。ちょっとした冗談ですよ。だからとりあえずスカートを捲ってみてくれても? ああごめんなさい。ちょっと、ミイ! 邪魔をしないで!」
◇ ◆ ◇ ◆
(パパパパーパーパパパッ パパパパーパーパパパッ パパパパーパーパパパッ)
うるさい! なんだこの騒音!
突然受信した電波に不意を突かれて、僕はギークの脳裏で(きゃッ)とか可愛らしく叫んでしまった。
たぶん、可愛らしかったと思います。(ギャアアアァァァァッ)とかじゃなかったと信じます。
それに驚いたのか、ギークが足を踏み外す。
もう、ズルッと。
ギークは泳げないらしい。
しかるに現在はダナサス川を渡河中でした。川の浅い部分を歩いてです。
ガバガバ、バシャバシャ、ゴファゴファ、ズバシャンザーン。
(あ、うん、えーと、ゴメン? なの)
浅い水深で本格的に溺れかかるという不可思議から、何とか持ち直したギークに謝る。
でも謝ったのに怒られました。真に理不尽です。
ちがう、僕のせいじゃない。
妙な電波というか、突如鳴り響いた怪音が悪いんだ!
あ、弓矢が沈んでるよ。忘れずに拾おうね。
火事の現場から逃亡。
休憩を挟みつつ一昼夜を駆けると、幅の広い河川に出た。
この間に分かったことが一つ。
ギークはほぼ半日、なにも喰わないとキレます。
突如として当時の小鬼モードに変貌するので。何事かとビビります。
今しがたも、川端で釣りっぽいことをしていた二人組を、この世から消滅させてしまいました。
異次元に仕舞いこんでしまったという表現が適切でしょうか。取り出し機能はありませんが。
弓の胴というか、しなる部分でバチーンとやって。末弭部分をもう一人の顔面にグサッと突き立てて。お前それ確かに頑丈な金属製だけども、弓の使い方としてどうなのよっていうか、やっぱそういう使い方になるんじゃねーか最初から金棒にしとけよな感じからの、お食事タイムでした。
手綱握れてなくてすいません、ほんとすいません。
今回勉強しましたので、次から頑張ります。頑張りますよ? 南無阿弥陀仏。
ちなみにここに至る道中でも一回やらかしています。
その際の相手は小動物でしたが。そっちはまあ、そんなに反省しなくてもいいよね? 可愛い小動物には申し訳ない限りだけれど、何かは食わなければ死んでしまうのだし。
河川に出たので、僕は即座に渡河を提案しました。
泳げないギークは嫌がりましたが、大丈夫、浅いから大丈夫、こんな水深じゃ溺れようがないから大丈夫、と頑張って説得しました。
……、さっき、もうお前の言うことは信じん。とか罵られましたね。
川は渡っておきたいです。
大体こういう幅の広い河川は、貴族の所領の境界線になっていることが多いです。
だから領を管轄する元締めの貴族、誰かは知りませんが? 境界越えでそれが変われば、そこから先まで追手をかけられる可能性はグッと減るでしょう。
教会にでも追手を掛けられたりした場合は、その限りじゃなくなりますがね。
普通の領主貴族なら相手貴族に頭を下げてまで追跡者越境の許可なんて取らないでしょうからね。
で、さて何ですかこの音。
ギークには聞こえてない模様です。どういうことですかね。
警告? 警報? 何かの攻撃ですか?
ふと思いついて、地図を脳裏に開きます。
おおう、周辺探索にピコーン、ピコーン、と反応ありですよ。
こんなの初。なんですのん。
[WARN] 忍耐の限界を、突破しました。
[WARN] 忍耐の限界により、一時的に狂化されます。
[WARN] 忍耐の限界により、レベルが上昇します。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、動物を殺害しました。
[INFO] ギークは、動物を摂食しました。
[WARN] 忍耐の限界を、突破しました。
[WARN] 忍耐の限界により、一時的に狂化されます。
[WARN] 忍耐の限界により、レベルが上昇します。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、人族を殺害しました。
[INFO] ギークは、人族を殺害しました。
[INFO] ギークは、人族を摂食しました。
[INFO] ギークは、人族を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、人族を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、人族を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、人族を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、人族を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、人族を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、人族を摂食しました。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、人族を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、人族を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[WARN] SOS信号を、着信しました!
[INFO] 忍耐の限界により、状態異常「恐慌」を抑制しました。
[WARN] ギフト「地図」に、SOS信号の発信源を表示しています。
[INFO] 現在の状態を表示します。
ギーク
鬼 C-ランク Lv5→Lv10 空腹(忍耐→解放→忍耐)
【ギフト】
不死の蛇 Lv2
唆すもの Lv--
地図 Lv2
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【種族特性】
永劫の飢餓(継承元:餓鬼)
暗視(継承元:小鬼)
忍耐の限界




