1-24. 火事場泥棒、なの
誤字、脱字など、ご指摘いただければ幸いです。
(もうッ、信じられないの!)
本格的に燃え盛り始めた男爵邸を尻目に遁走中。
人が慌ただしく動き回っているのが地図上で伺えるが、今のところ追手はかかっていないようです。
(何もかも台無しなの! ちょっとは反省すべきなの!)
ギークに文句を言う。もう本当にさんざんな目にあったものです。
「反省といわれてもな。気が付いたらやっていたという感じだ。難しいな」
うう、鬼になってちょっとはマシになったと思っていたのに。
この裏切り者めーッ 裏切り者ーッ
(とにかく逃げるの。早く逃げるの!)
走れ走れと、ギークをせっつく。とにかくこの土地からは早く逃げましょう。
領主殺しとか、ほんとマジ洒落にならないです。予定外もいいところ。そんなことをやらかすモンスターが出現したとなれば、寄り親の大貴族が出張ってきかねません。討伐隊とか英雄とか、大物が派遣されて来るかもしれないです。
「おい俺の角は? どうなった?!」
どうしようもないよ、そんなものーッ
(さっきのは間違いなく領主なの、領主の館だったの! 角はきっとあそこにあったの! でも一緒に燃えてしまったに違いないの! ギークが迂闊なの)
「なんだと! おのれ、燃えたというのか!? 何故だ!!」
何故だじゃないです。理由は僕が聞きたいです。
とにかく今は、逃げるしかないです。
騎士とハンター、それに雑木林から戻ったミカン農夫たちが、松明を掲げて遠ざかっていきます。
正直、目を疑いましたね。バカなんじゃないかと。夜に雑木林に入るつもりですか彼等。正気とは思えません。
脳みそが小鬼並なのか何なのか分かりませんが、これはチャンスです。
相手戦力の推定全部が、ぞろぞろと集落を離れていくわけですよ。いやあ、僕の日頃の善行の賜物でしょうかね。ありがとうございます。
騎士たちが十分に遠ざかったのを地図で確認して、騎士が出てきた家に向かいます。こそこそと。きっとこの家の中には武器があるはず。騎士であれば街中に武器を持ち込めますからね。
倉庫や武器庫、納屋に置いている可能性もあります。でも、騎士邸のそばにはそれらしき建屋がありません。むしろ何でないのでしょうか。貧乏だからですか? どれだけですか。
とは言え、腐っても騎士の住まい。
入り口にはちゃんとドアが付いていて、鍵もかかっていました。
まあ、それすらなかったとしたら、やはり騎士崩れの野盗説を採用するところですが。
今思い出すに、この時あたりでギーク、少しおかしかったかもしれないです。
何か、妙にイライラしているというか、殺気立っていました。
窓から入ろうか、と僕が言ったのに。
ギークは無言で、薪割斧をドアに叩き付けました。
えー、とか思いつつ。
やっちゃったものは仕方ない、ドア蹴破って中に入ります。
蹴破ったのも荒ぶるギークですが。
勝手知らない他人のおうち。けれど目的の弓と矢は、すぐ見つかりました。
なにせ1部屋しかなかったですし、まあ普通に飾ってありましたからね。
金属でできた大きな弓。投げ槍かという長大な矢が納められたる鉄の矢筒。
玩具のような鳥獣払いのそれとは違う、騎士の武装としての弓と矢ゲットです。
家を出ます。後は全力疾走でこの場を離れるだけ。
それだけの予定、だったのに!
騎士邸を出たところで、ドアを蹴破った際の物音を聞きつけたのでしょう。
隣家から、疲れた表情の中年男が出てきて、ギークとかち合いました。
隣家、というか恐らくは領主の館でしょう。
館とはとても言いたくない規模ですが。
およそ普通のあばら家です。
それでも周りと見比べるなら、騎士邸より一回りは大きく、そして同時にこの集落においては最も大きな家ではあるようでした。
この出てきた男が領主なんでしょう。しょぼくれていますが、一応農民たちよりかはマシな服を着ています。
(無視して逃げるの! ほら早くッ)
僕はそうギークに伝えました。
伝えました。
目撃されたことは失敗でしたが。しかし鬼の脚力で逃げるのであれば、並の人間、少なくともデスクワークに疲れ切っているだろう貧乏領主と推察されるこのおっさんには、追いつかれるはずも捕まるはずもなかったのです。
ところがギーク。ちょっと前の小鬼だった時に戻ったかのように、僕の静止に聞く耳を持ってくれませんでした。
唸り声などあげて、よだれだらだらで、領主の男に襲い掛かったのです。
全く唐突、意味不明なギークの行動でした。この何故を僕は聞きたいです。
右手に持っていた弓を放り捨て、左手に持っていた鉄製矢筒と薪割斧とを領主の顔面めがけて投げつける。
悲鳴を上げてのけ反る領主の腕をひっつかみ、出てきたばかりの領主邸の中に体ごと叩き込む。
(ちょッ?! ちょっと、ギーク?! 何をしているの!?)
呻く領主の、貴族の召物というには薄汚れた服に爪をかけて、びりびりと引き裂いています。
(えーッ、なにッ、なんなの?! こんな年寄りとなの?! そんな趣味なの?!)
この辺りの僕のリアクションは単に混乱していただけです。
もちろんです。
(えと、えとッ、僕は目と耳をふさいでいればイイの?!)
(え、いやちょっと待つの! やめるの!)
(ッ、きゃああああぁあぁぁあぁあぁぁぁぁぁっ!!)
信じられない事態発生!
エマージェンシー、エマージェンシー!!
なぜにーッ えー、ちょっと信じられませんどうしましょう意味不明ーーッ
そんなわけで。
予定外に領主邸にもお邪魔することになりましたが、誰もいませんでした。
いなかったんです。現に今やどこにも誰も居ないです。
ただ、血痕が残されているだけです。
大変です。このままでは領主殺しの犯人と誤解されてしまう可能性が無きにしも非ずです。
領主の死体はどこに?! ミステリーです。
なんだかパチパチと燃え始めました。
あ、ロウソク。あ、みたいな。
腹が膨れたからですかね? ギークは正気(?)を取り戻しました。
外に投げ捨てていた弓と矢筒を再取得。どうしようもありません、とにかく慌てて集落を逃げ出します。
どうするー、どうしますー。
とりあえずここからは離れよう。そうしよう。
冒頭に戻って、荒地を走る。荒地を走る。
すぐに未開拓の土地になるあたり、ここはどこまでの辺境なのか。
行く先は暗い。ギークの暗視をもってしても先の見えない夜の暗がり。
とりあえず、息の続く限りは走るしかないのでしょう。
[INFO] ギークは、コモン鋼の弓矢(盗品)を入手しました。
[WARN] 忍耐の限界を、突破しました。
[WARN] 忍耐の限界により、一時的に狂化されます。
[WARN] 忍耐の限界により、レベルが上昇します。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、人族「アリーニ=クァボ」を摂食しました。
[INFO] ギークは、人族「アリーニ=クァボ」を摂食しました。
[INFO] ギークは、人族「アリーニ=クァボ」を殺害しました。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、人族「アリーニ=クァボ」を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、人族を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、人族「アリーニ=クァボ」を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、人族「アリーニ=クァボ」を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] 現在の状態を表示します。
ギーク
鬼 C-ランク Lv1→Lv5 空腹(忍耐→解放→忍耐)
【ギフト】
不死の蛇 Lv2
唆すもの Lv--
地図 Lv2
<---ロック--->
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<---ロック--->
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【種族特性】
永劫の飢餓(継承元:餓鬼)
暗視(継承元:小鬼)
忍耐の限界
ー 第一章 End.




