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天国のお土産  作者: トニー
第一章:クァボ男爵領の惨劇
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1-19. ツノは必要なのか、なの

誤字、脱字など、ご指摘いただければ幸いです。

 推測するに。

 あの熊を狩った騎士か、若しくはハンターのどちらか。

 どんな理由でかは分からないけど戻って来て、苦痛に悶えている小鬼(ギーク)の姿を見つけたのだろう。

 なんらかの遠距離攻撃を、僕の周辺探索(ミニマップ)の圏外から仕掛けてきたんだと思われる。

 なんて卑怯な奴ら。騎士道精神はどうした。あ、ならばハンターの仕業か?


 それで、小鬼(ギーク)を、もう仕留めたものだと思い込んで、(討伐証明)だけ切り取っていった。のだろう、たぶん。

 普通トドメとかさすよね。うーん。バカなのかな? 素人仕事?


 遠距離攻撃は、遠目に見た彼らの装備的には弓矢だったのだろう。

 でも、ギークを貫いただろう矢はきっちり回収されちゃったみたい。

 証拠隠滅済みか。プロの犯行だな。


 (たぶん、あの騎士たちの仕業のはずなの)


 行く先の見当も、つかないこともない。

 森を抜けて小川を渡り、それでミカン畑のある方角へと向かっていけば、きっと人里があるのだろう。


 森の中で見かけた時点で、騎士にはマーキングを付けている。今は<未知>の彼方だから追えないけれど、近付けば居所も分かるだろう。


 だが追ってどうする。


 「そうか。おのれ許せん、取り返す!」


 あの騎士と戦う? 血染熊を倒した相手と? それで(ツノ)を取り返す?

 取り返してどうするの? 接着剤(ボンド)でくっつけるの?


 (ちょっと待つの。まず確認したいことがあるの)


 「なに? なんだ?!」


 ギーク、苛立たし気に地団太を踏む。


 (目的の共有が必要なの。基本なの)


 いま僕にとっては、ギークの角があろうとなかろうと大した問題に思えない。

 切られちゃったものはもう諦めたらいいんじゃないかな。


 ああ、面倒。

 ミアの復讐を成し遂げるまで、余計なリスクは負いたくないね。


 でも、例えば鬼の生態的に、角がないと衰弱死するとか、そういう問題があるのだとしたら見逃せない。

 確認はしておかなければ。さてでも、言葉は選ばないとねー。


 ((ツノ)がないと、どうなるの?)


 あんまり、選べてないかな?


 「屈辱だ! 問答など無用、取り返えすのだ!」


 ギーク、苛立たし気に、更に地団太を踏む。

 やめなさい、階下の方にめいわくでしょー。ミミズ君とか、モグラ君とかさ。


 (えと、あー、あー、タイムリミットとか? あるのかが知りたいの。取り返さないとは言ってないの)


 「タイムリミット? スグだ! 何の関係がある。俺は奪われた(ツノ)を取り戻す。適わなければ奪っていった奴らを殲滅する(ミナゴロス)


 うーん、ミアの復讐にこそ、その熱意は発揮していただきたい。

 (ツノ)とか正直どうでもいいわー。

 くそー、どう聞けばいい。故事にでも頼るか。


 (ギーク。落ち着くの。己を知らなければ百戦して必ず危うしなの。僕も協力するの)


 面倒だけど、協力はするよー。

 うまく誘導できれば、コヤツ(ギーク)を復讐の牙に相応しく鍛える好機になるかもだしねー。


 (だから考えるの。いつまでに、角が取り戻せないと、なにかあるの? 十分な準備もなく、裸一貫で猪武者をしなければならないくらい、切羽詰まっているの? それとも、確実に作成を成功させるための、ちゃんと準備をする時間の猶予があるような話なの?)


 「ぬう」


 ギークは一瞬何やら考え込んでから、そして言った。


 「急に口が回るようになったな。ワケの分からん指示をするだけだった分際が」


 ………


 え?!


 お前(ギーク)が言う?! それお前(ギーク)が言うの?!!

 いやちょっと待ってよ、僕はお前(ギーク)のレベルに合わせてやっていたっていうか、いたのよ?


 え、なにそんな認識?!


 な、なんてこと。どうしてくれよう。

 僕は何を間違えたんだ。何を間違えてしまったんだ。。。


 絶望が、僕の視界を暗くする。


 頼りになるアドバイザーを務めてとして、コイツ(このバカ)の信頼をガッチリ掴み、僕なしでは何も判断できない操り人形に仕立て上げようという、僕の完璧なプランが!


 どうしよう。


 えーと、うーんと、よ、よし。

 まずは、ちょっと、違うことを考えて落ち着こう。それがいい。



 羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶



 ギークは明らかに変貌した、と思う。

 喋り方が流暢になっているし、背丈がこれまでと全然違う。


 これが、ランクアップした結果?

 変わりすぎだろう。


 これじゃもう「小」鬼じゃない。

 オーガ? そうだよこれって鬼じゃないかな。

 肌の色が、小鬼だった頃の濃い緑色から、若草色に変わっている。この色が確かオーガの特徴の一つじゃなかったかと思うのだ。


 屋敷にあったモンスター図鑑とか、もっとちゃんと読み込んでおけばよかった。鬼の角についても、もしかしたら何か書いてあったかも。

 ミアがそっち系統、あんまり興味もたなかったからな。いや、僕がもっと興味を示していればミアは付き合ってくれただろうから、ミアのせいじゃないが。


 よし、ギークが理由はさておき、鬼に転生したと仮定しよう。

 鬼の特徴を考えれば、これからどうすべきか、どう接していくべきかが見えてこないだろうか。


 鬼と、餓鬼や小鬼といった下位鬼族。

 最大の違いは、徒党を組むことだったはず。つまり集団行動だね。鬼は集団行動を取るのだ。自我を抑えて欲望を堪え、チームという概念を尊重することができるようになるってこと、だと解釈してもいいかな。そこまで期待するのはいきすぎか?


 もう一つは、人間から奪った武器の類を扱うようになること。

 武器を持った鬼は、同ランクのモンスターの中でも危険な存在とみなされる。

 鬼に金棒というものな。


 小鬼だった時よりも、だいぶ良物件になったといえるだろう。

 何より、ある程度会話が成り立つようになったようなのが大きい。あれでも鬼って、知性はそこまで高くない、じゃなかったかな? 記憶違い?


 ワケわからんことを言うとか、てかマジこいつに言われる筋合いないわー。

 お前ハラヘッタ以外にまともな意思表示、ほとんどなかったじゃねーか。お前がワケわかろうとしなかった結果だよね。なんで僕が悪いみたいに言われなきゃいけないのさ。


 はい、おちついてー。

 しんこきゅー。


 「そうだな、取り返せなければ、何日か後に死ぬとか、そういうことはない。一年もたてば、新たに生えてだって来るだろう」


 おっと、ギークはギークで、僕の質問に対する答えを考えていたようですよ。

 すごいです。会話が成立するって素晴らしいです。


 つか、生えてくんのかよ。じゃあ別にいいじゃねーか。


 「本能的なものだ。角を折られるというのは、敗けたということだ。不意打ちであろうとなんであろうと、敗者は勝者に従うか、死ぬかだけだ。生きていて、服従を望まないのであれば、挑んで奪還しなければならない。奪われた角は奪い返し、相手の角こそへし折ってやるのだ」


 えーと?

 鬼族同士での蛮習の話?


 (相手、たぶん人間で、角はないの。。。)


 「だから何だ。関係はない。角は取り返す。相手に角がないなら、代わりに首でも貰い受けよう」


 代わりですかー。

[INFO] 忍耐の限界により、状態異常「空腹」を堪えています。


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