1-17. ツノがない、なの
誤字、脱字など、ご指摘いただければ幸いです。
山砦にて。
(血染熊で、ありますか)
河童が、小首を傾げるようなニュアンスの思念を飛ばしてくる。
(モンスター化した熊、でありますね。かなりの強敵であります。ご主人様が倒されたのでありますか?)
ギークがもう目を閉じて眠ってしまっているので、僕に彼女の美少女な顔は見えない。
(それはムリなの。あの頃のギークが敵う相手じゃないの。僕たちは樹の上に隠れていたの)
(では?)
(倒したのは騎士と、お供のハンターなの。弓矢でザクザク、剣でズバーッ、だったの)
(なるほどであります)
(でも、ハンターの一人がケガをしたの。それでその騎士と、もう一人のハンターが、ケガ人を運んで行って、熊の死体は放置されたの)
(ははあ、それで)
(そう、それで、ギーク漁夫の利でうまうま大はしゃぎだったの。そしてまたランクが上がったの)
人間の大人数人分の質量にもなるだろうバカでかい熊を、子供くらいのサイズなちいさい小鬼が嬉々として残さず平らげる、そんなシュールな絵面であった。
(ランクがですか。おや、数日前にも上がったばかり、ではなかったのでありますか?)
(そうなの。びっくりなの。たぶん格上のモンスターな肉を、たらふく食べたからだとは思うの)
赤黒い剛毛が固くてちくちくで、僕的にはとてもヤな感じだったわけだが。
(なるほどであります)
(ランクアップ、またしても痛かったの! ぎゃー、だったの)
重要である。僕は憤然と主張する。
ぜひとも何とかしてほしい。
(なるほどであります。それにしてもモンスターのランクアップというものは、長い年月を生き延びた、ごく一部の個体だけが至るもの、であるはずなのであります。数日のうちに、というのは確かに不思議な現象であります)
(そうなの。とっても不思議なの。でももっと不思議なのことがあるの)
(それが、ご主人様の今の御姿でありますか?)
(そうなの。気が付いたら、こうなっていたの)
(………)
(どう思う? なの)
(……より上位の強力な種族に進化、、、いえ、生まれ変わった、でありますか。申し訳ないであります。聞いたことのない事例であります)
(ぶぅぶぅなの。使えない河童なの)
(ご主人様。私のことは、河童ではなく、フレデリカと、お呼びください)
(ごめんなさい、なの)
殺気を感じた。
殺気を感じた。
場面変わって、血染熊の遺骸が異次元に消え去った、雑木林にて。
警告は間に合わなかった。
突如、木立の隙間を縫うように飛来してきた、先端の尖った太い棒のようなものが、血染熊の巨躯を余さず平らげ、その後のランクアップの激痛に悶えていたギークの矮躯を、一撃で貫いたのだ。
尻から脳天串刺しな感じで。飛来した勢いのまま、強引に。
ズガンッ、と。そんな音なのか感覚なのか両方なのかが、体中を駆け巡った。
その辺りまでは、覚えている。
覚えているのは、その辺りまでだ。
なにかグルグルして、グワングワンして。
ザラザラで、キーーーー、だった。
辛い。
鏡に映ったミアの笑顔が脳裏を過る。苦しい。
(ミア、助けて、ミア)
苦しい。
意識が戻る。
戻ったといっても、二日酔いな感じでとにかく辛い。
ちなみにお酒を飲んだことがあるかと問われるならば、あります。
ありますが、二日酔いになるほど飲んだことはないです。二日酔いな感じとか言っているのは、なんとなくなイメージです。
「グ、今のはなんだ。う、俺は、どうなった?」
ギークの声が、なんだか何時もと違って聞こえる。
耳鳴りがしているようだ。
「いッツ、、、何かに貫かれた? ような気が、したんだが。。。」
いつもの甲高いキーキーな声ではなく、もう少し人間っぽいアクセント。
そんな風に聞こえる。おかしなこともあるものだ。
ややふらつきながら、ギークが立ち上がる。
視点の位置が、いつもより少し高い気がする。気のせいか?
「おい、えーと、あれ? 名前なんだっけ、オイいつも煩い道案内!」
おいこら誰の事だそれは。
「何が起きたか、説明しろ」
(ミイなの! 僕の名前はミイ! 心の妖精様と呼ぶの!!)
「そうか道案内、何が起きた」
誰がルビ付けろと。
首をキュッとしてやりたい。僕に両腕が無いのが惜しまれる。両腕どころではなく物理的なものは何もないわけだが。
あ、大分二日酔いな感じが落ち着いたかな。
しかしなんだこの違和感。
(ギーク、なの?)
「お前が名付けたんだろうが」
(こ、これはおかしいの! ギークが、ギークが喋っているの?!)
どうなっているのか。
驚きのあまり、吐き気とかそういったものが吹っ飛んだ。
(ああ、わかったの。これは夢なの。もしか死後の世界なの! あれ、でもそうするとなんでミアじゃなくてギークが出てくるの? おかしいの。チェンジ希望なの)
「相変わらず、話にならない奴だ。しかし思い出せん。何かに、刺されたのか?」
やばい、ギークが何やら考え込んでいる。信じがたい。
こいつにそんな高度な行動がとれるはずがない、わかった偽物だな?!
パニクる僕。
いやだって、考えてみてもくださいよ。
食欲の権化でもう喰うことと寝ること以外、何もなかったのがギークですよ。
それが何? おかしいよね納得できない。
え、ごめん何、謝ればいいの? え、ごめんなさい?
「ぬ、ナンダト? ない!? どういうことだ!」
ギークは、掌で全身の各所を触って、異常がないかを確認していた。
額に手を当てた後、改めて何度かその場所に触れた後に、騒ぎ出した。
ついてなかったらしい。
可哀想に。強く生きろ。大丈夫だミアにもなかった。
「角だ! 俺の角がない!! 何故だ!?」
下じゃなくて上だったらしい。
ごめんなさい。
[INFO] ギークは、血染熊を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、血染熊を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、血染熊を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、血染熊を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、血染熊を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、血染熊を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、血染熊を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、血染熊を摂食しました。
[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。
[INFO] ギークは、レベルが上がった!
[INFO] ギークは、ランクが上がった!
[WARN] ギークは、外敵からの攻撃を受けています!
[WARN] ギークは、死亡しました!
[INFO] ギフト「不死の蛇」により、自己治癒は一定時間処理を継続します。
[INFO] ギークの、蘇生を試みます。
[INFO] 転生条件を、満たしました。
[INFO] ギークの、種族が小鬼から鬼に変更されました。
[INFO] ギークに、現在の種族特性が継承されます。
[INFO] ギークは、種族特性「忍耐の限界」を獲得しました。
[INFO] ギークは、蘇生しました。
[INFO] ギフト「地図」は、レベルが上がった!
[INFO] ギフト「地図」は、Lv2になりました。視点切替機能が解放されます。マーキング可能数が追加されます。
[INFO] 現在の状態を表示します。
ギーク
小鬼→鬼 D+ランク→C-ランク Lv2→Lv1 空腹(忍耐)
【ギフト】
不死の蛇 Lv2
唆すもの Lv--
地図 Lv1→Lv2
<---ロック--->
<---ロック--->
<---ロック--->
<---ロック--->
<---ロック--->
【種族特性】
永劫の飢餓(継承元:餓鬼)
暗視(継承元:小鬼)
忍耐の限界 (New!)