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天国のお土産  作者: トニー
第一章:クァボ男爵領の惨劇
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1-10. おやすみなさい、なの

 ギークの背丈は、大体人間の子供と同じくらいか。

 もうちょっと大きいかな? まあ大体それくらい。 


 巣穴と思しき洞穴は、そのギークがギリギリちょっと、屈まないと奥には進めない入れないという程度の窮屈加減だった。

 木の根草の根に支えられてはいるものの、壁に触れれば土が零れる。横幅も狭く、唯一奥行きだけがやや深い。それでも十歩と進まず突き当たる。


 奥にたどりつけば、蹲まった姿勢でさきの子熊が、小さく唸りを上げてこちらを威嚇してきている。

 だが、いま注目すべきはそこではないだろう。


 「共喰イ、か?」


 洞穴の奥には、今僕らを睨みつけている子熊とは別に、子熊の屍が2頭分、無造作に転がっていた。


 これはどういう状況かと首を傾げ、ギークはその内の一つを摘み上げる。


 何かに喰われたというよりは?

 屍の状態を見て、考える。


 ぶん殴られて、それで即死したという感じにみえる。

 素人診断なので、大ハズレでも不思議はないが。


 しかしどうであれ、この子熊の仕業とは考えにくい。

 親熊の癇に触れて、哀れ家庭内暴力ドメスティックバイオレンスの犠牲になりました。


 そんな感じだ。

 熊ってそういうことをする生き物だっけ?


 カッとなって、自分の子供を殺しちゃって、それで巣穴を破棄して雲隠れ。

 状況証拠はそんな感じ。熊さんにはがっかりです。


 死後どれくらいなのかとかは、ちょっと素人なのでわかりかねます。

 まあ、惨劇が起きて以降、おそらくは餌を貰えなくなってしまったに違いない子熊が、まだこうして生きてる以上はそこまで過去の事件でもないのだろう。


 ぬ、なんか電波を受信。

 お前この小熊まだ生きてんだから当然事件は現在進行形だよ終わらせてんなよ子熊に謝れ。

 えーと、うんごめんね? まあほら僕にあんまり関係ないしね。


 肝心なのは、親熊が反省してか、世間の白眼視に耐えかねてか、まあどんな理由であれ、ここに戻ってくる事があるだろうかどうだろうかなのであって。


 あ、喰いやがった。


 あ、喰いやがったよコイツ。


 いやいやマジでか。

 南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。


 僕は、なにも見ていない。

 僕には、なにも聞こえない。


 心を無に。

 諸行無常。


 え、あ、まってその子はダメ。

 あー。あー、あー?!


 、、、いや、僕はもうナニも感じません。


 グッチャグチャでブチブチな、あぁ骨がまだ軟らかいようなとかゴメンナサイとか、僕はもう一切なんにも感じてないですこれは錯覚です。


 ぽくぽくぽく。ちーん。

 

 えーい、僕はなにもしらないぞー。

 知らねー、ッてんだろー。


 わかるッ、わかるよッ

 信じらんないよ、僕もだよ。


 あー、もうッ!

 ヤダヤダヤダヤダー!


 なんなんだよ、ここは懐かれてハートフルやるとこじゃねーのかよ?!

 おまッ、何ふッつーに? バリボリむしゃむしゃとか? やってくれちゃってるワケ?!


 お前に人の心はないのかーッ

 キサマの血はナニ色ダーッ


 真なる惨劇(Nice boat)開催中です、しばらくお待ちください。


 「オレハ寝ル。ナニか来たら、オコセ」


 ツーン。


 抗議だ。抗議してやる。

 シカト、シカトー。


 、、、ッて、おいこらちょと待て。


 今のは何か?

 自分寝るので僕に寝ずの番をやれと。

 え、そういう命令?


 いい度胸だちょっとツラ貸せやこん小僧ッ子がーーーッ

 あぁぁッ、もう寝てやがるよ寝付き良過ぎだろ外はまだ明るいぞーーッ


 はぅ、虚しい。

 どうせ僕なんて。


 ダメだ、くそう。これはいけない。

 どうやったら上下関係というものを、きっちりとコイツに分からせることができるだろうか。


 いや、てゆうか今のところもう明らかに舐め腐られてるこの現状を、どうかして改善しないことには、今後が立ち行かない。


 ヨシ、奴は教会の司祭だ。ブチ殺せ!

 サー! イエッサー!


 ヨシ、あれはミアの肖像画だ。最優先で確保しろ!

 サー! イエッサー!


 ヨシ、最後に実行犯の死をミアの墓前に捧げる。自殺しろ!

 サー! イエッサー!


 うむ、理想的にはそんな感じの関係をコヤツとは築きたい。

 だがしかし、そのためにはナニをどうしたものなのか。


 観音様、どうかコヤツに緊箍児を。

 そして私めにはアレをグイグイ絞めつけるための真言を授け給え。


 どうかー、どうかー。


 毎夜毎晩祈ったら、仕方ないのうとか声が聴こえて、唐突に叶ったりしないものですかね。


 あなたの願いが、百万人の中からの抽選で聞き届けられましたー! とかでも全然OKです。


 こんなご時世です細いシチュに贅沢は言いません。

[INFO] 子熊を、摂食しました。

[INFO] 子熊を、摂食しました。

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] 子熊を、殺害しました。

[INFO] 子熊を、摂食しました。

[INFO] 永劫の飢餓により、摂食物は魔素に変換されました。空腹状態は維持されます。

[INFO] ギークは、レベルが上がった。

[INFO] 現在の状態を表示します。


 ギーク

  小鬼 Dランク Lv6→Lv7 空腹

 【ギフト】

  不死の蛇 Lv2

  唆すもの Lv--

  地図 Lv1

  <---ロック--->

  <---ロック--->

  <---ロック--->

  <---ロック--->

  <---ロック--->

 【種族特性】

  永劫の飢餓(継承元:餓鬼)

  暗視(小鬼)

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