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アルヌスの旭日旗  作者: 神倉 棐
第1章 自衛隊彼の地にて戦えり【ギルム編】
8/27

外交交渉

長いです。あとヒロイン2人目ですね。


さて……、どうしてこうなった?

俺は御者台で馬を操りつつ思う。俺の両側にはあの銀狼族の2人の子供、レオとエミリアがいる。


「お兄ちゃん、ねえあれ何?」

「お兄ちゃん、アレ食べれるかな?」


と、異世界人である俺にこの世界の住人である彼らの方が聞きまくってくるのだ。この世界と元の世界を一緒にする訳にはいかないので答えられないのだが、


「レオ!エミリア!ツバサさんに失礼です!すみませんツバサさん」

「いいえ、大丈夫ですよ。まあもう『お兄ちゃん』と呼ばれる歳では無いんですがね……」

「すみません、確か26でしたよね?」

「はい、職種上独身ですが同い年の知り合いはもう結婚して早い奴は子供もいますよ」


俺の苦笑いに彼女も微笑む。彼女も26で結婚したのは18の時だと言う。異世界なだけあり昔のように成人が早いようだ。


「とはいえ昨日今日で凄い懐かれたな……」

「昨日は助けていただきありがとうございました」

「気にしないで下さい。何度も言いますが当たり前の事をしただけです」


そんなにかしこまらなくてもいいのだが獣人の人達、特に銀狼族の人達はかなり義理堅いらしく恩が返したいと積極的に隊員にも関わってくれており、まだ信頼されていない他の獣人達との橋渡し役をしてくれたりとかなり好意的な態度をとってくれている。


『こちら先頭車、隊長送れ』

「なんだ?」

『間も無くギルムが目視できる距離に入ります』

「了解、一応対地警戒を厳としておけ」

『ラジャ』


警戒するよう指示を出し通信を切ると今度は子供達に質問攻めにされる。


「ねえお兄ちゃん、誰と話してたの?」

「もしかして精霊さんとか?」

「いや、精霊とかじゃなくて仲間の比企谷なんだが……」

「ヒキガヤって誰?」

「精霊さんの名前?」

「そうじゃなくて人の比企谷なんだが……」


2人の目は好奇心にキラキラと輝いているので無下には断れないし相手は子供なので強くは言えない。

ただでさえ慣れない馬の制御に忙しいんだがな……。

俺の心の呟きは誰にも届くことなく、相変わらず馬車の御者台は賑やかに騒ぎながら目的地、辺境都市『ギルム』へと進むのだった。



◆◇◆◇◆◇◆



森の中にある人影、7つの影の内1つがその身から魔力を放出した。


「こちら第四偵察隊、目標は最終地点を通過、間もなく『ギルム』へと到達する。本隊どうぞ」

『了解、第四偵察隊帰投せよ』

「退却する」


影達のリーダーらしき男が退却を指示し、彼らは森の奥へと消えていった。



◆◇◆◇◆◇◆



『た、隊長〜、なんかやばそうな雰囲気っすよ?なんか殺気立ってるっつうか……、諦めた方が良くないっすか?』

「確かに……な。全城門が閉鎖されて壁上に多数の兵、対地対空弩弓バリスタがフルスタンバイって完全に戦闘準備万端って感じだな」

「「お兄ちゃん……」」

「まあ、なんとかなるさ。任せて」


さて、安心させる為にそうは言ったものの。どうするかねえ……。

このまま突っ込んでいけば確実に敵と誤認され矢か槍の雨が降り注ぐこと間違いなしである。


『熱した油とか嫌っすよ?』

「それ以前に最悪だろ?全身火傷した上で生き残りたくはないな」


つまり今手詰まりなのだ。どうすれば敵と誤認されないのか、それが思いつかない限り迂闊には近付けない。仲間と保護対象民を危険に晒す訳にはいかないのだ。


「うむぅ……」

「ツバサさん」

「アシュリード君か、どうしました?」


車両から降りてきたアシュリードは大空の乗る御者台の側に来る。


「良ければ僕達がどうにかしましょうか?」

「?、できるのですか?」


俺の問いに彼は頷く。


「いきなり僕達マグナの学生を攻撃してくることは無いと思いますし、話は聞いてくれるとは思うので」

「しかし危険です。やはり保証がありません」

「大丈夫ですよ、軍にはマグナ最高学年生が戦場付近に実戦投入されていると通知されていますので制服を見ただけで分かると思います」

「しかし……なあ」

「心配して頂き嬉しいですが、少しぐらい僕達に役立てて下さい。本来僕達だけで彼らを救出、ここまで護衛しなければならなかったのをツバサさん達、自衛隊の方々にしてもらったんですからこれぐらいは僕達がさせて頂きます」

「……」


自分と同じ顔をしている癖に俺より意思が強いらしい、絶対に折れはしないだろう。まったく嫌になる、彼の様に自分を信じて突き進める奴は特にだ。

やっぱり……な……。

見た目はまったく同じでも中身は別物……いや、『変わらない』もしくは『だった』のだろう。古い写真や鏡を見せられている気分だ。


「……いいでしょう。ただし、俺も付いて行きます」

「……それこそ危険です。下手すれば捕まって拷問とかもあり得ますよ?」

「君達がいれば大丈夫でしょう。それに神木がいればなんとかなりますんで」

『そういう問題じゃ無いだろ。あと俺に責任押し付けんな』

「げ、神木聞いてたのか?」

『聞いてるわ馬鹿。スイッチ入ってんだからみんな聞こえてる、全部筒抜けだ』

「まじっすか……」


そう言えばスイッチ入れっぱなしにしてたなと後悔しながら俺は頬をかく。


「と、とりあえず武装解除して行けばなんとかなるんじゃない?」

『……微妙だな、相手にそこに気付く余裕があれば良いんだが』

「まあ、僕達が先に歩けばなんとかなるんでは?」

「う〜ん、まあ思いとどまるかな?どう思う?」

『及第点ってとこだろう、問題はどこまで武装解除していくだが』

「てっぱち以外全部は?」

『却下だ。ロクヨンと防弾チョッキ、銃剣だけだ、通信機と拳銃だけは持って行け。いざとなった時に必要になる』

「……できればそんな時が来なければ良いんだけどねえ」


小銃に安全装置を掛け防弾チョッキを脱ぐ、銃剣もベルトから外しまとめてレオとエミリアの母親に預けた。


「よし、準備はできた。行こうか?」

「はい、みんな行くよ」

「「「「了解」」」」


シアやレオン達も車両から降りアシュリードについて歩き始める。


「「お兄ちゃん……」」


相変わらずレオとエミリアは不安そうな顔で俺に声を掛ける。


「大丈夫さ、任せて」


俺は微笑みながら言う。これが彼らを安心させる為の嘘となるかはたまた事実となるか、それはまだ分からない。それでも俺はアシュリード達の後を追う様に前へと踏み出した。



◆◇◆◇◆◇◆



ギルム、それは辺境とも呼ばれるシリウス伯爵領唯一の都市であり『辺境都市』の名で通る人口数千を有する北部最大の都市でもある。この人口が数千と表される理由は時により集まっているギルド所属の冒険者の量が増えたり減ったりするからであり、それでも今は平時の2倍の人員がこの都市には詰めていた。そして私もまた臨時でここにやって来た人員の1人でもある。


「ふう……」

「どうなさいましたアリサ様?」

「大丈夫よ、少し考え事をしていただけ。紅茶のお代わりを頂けるかしら?」

「かしこまりました」


メイド長である彼女は音も無くまだ暖かい紅茶をカップに注ぎすぐに側に控えた。実を言うと私は紅茶より東方にある母方の祖国のお茶、『マッチャ』が好きでたまに送ってもらうのだが大半が茶葉の保存が十分で無く紅茶にはなってしまい泣く泣く紅茶で飲んでいる。ちなみにこの紅茶も『マッチャ』であったはずの物だ。

ああ……マッチャが飲みたい……。

その時部屋の扉がノックされ1人の男が現れた。


「『団長』、伝令です」

「構わない、読み上げろ」

「しかし……」


男は少し口を噤みメイド長をちらりと見る。

ふむ、彼女に聞かれてまずい報告か?


「メイド長」

「失礼いたしました」


一言で察した彼女は部屋から出る。人払いを済ませてから私は再び男に読み上げる様に指示した。


「敵軍先遣隊約三千は正午までに到達する予定です。あと……」

「あとなんだ?」

「はっ、南門にて所属不明の馬車の列を確認。あと数分で壁上弩弓バリスタ有効射程範囲に入ります」


男の報告に私は思案を巡らせる。現段階で敵と決め付けるわけにはいかない、敵ならこんな分かりやすい接近はしないからだ。


「とりあえず私も行きます。南門は誰が指揮を?」

「ツルッペルン女伯爵です。手勢七百程で警護しています」

「伝令を、私が行くまで攻撃禁止。専守防衛に徹しやられた場合のみ反撃を許可します」

「御意、すぐにでも」


男が部屋を出てすぐ私はメイド長を呼ぶ。やる事は着替えだ、まさかドレスで戦場に行くわけにはいかない。


「お呼びですか?」

「鎧を、南門まで出ます」

「かしこまりました」


扉が閉まりすぐに幾人かの雑役女中メイド・オールワークス達が磨き上げられた白い鎧を持って来る。それを私はメイド長の手を借りて着付けていった、最近胸が苦しくなってきたので調整に出すべきかもしれない。

最後にマントと騎士剣、ティアラを着ければ準備完了。スカートタイプはあまり好きではないのだが機動力の観点からは悪くはないので未だ保留中である。


「よし、馬は?」

「正面に待機させております」

「ご苦労」


早足で屋敷の正面玄関に向かい馬にまたがってそのまま南門まで走らせる。館から南門までは少し距離があるのでしばらくしてから着いた。


「第1近衛騎士団団長殿!こちらです」

「ええ、馬を頼みます」

「承ります、ツルッペルン女伯爵は城壁上におられます」

「ありがとう」


言われた通り城壁に登るとすぐ前に白い軍服に身を包んだ彼女はいた。


「あら、アリサ様」

「ツルッペルン女伯爵、状況はどの様に?」


私の問い掛けに彼女は私に劣らぬ妖艶な胸を揺らしながら振り向き手にしていた望遠鏡を差し出した。


「ここからおよそ200程離れた街道の位置に緑色の変わった箱馬車の列が見えるでしょう?」

「ええ、確かに変わっていますね。馬やハーネスが無いところを見るとスタイリシュアの蒸気機関搭載車か、アルタクルスの魔道馬車のどちらかかと思うけど……、2台のアレは弩弓かしら?みたいなのが搭載されてるみたいだけど」

「そうね、うち1台は普通の箱馬車で見た事の無い鎧を着た男が御者台に座って馬を操っていたわ」


私は話題に上がった馬車に望遠鏡を向ける、確かに見た事の無い緑の鎧を着た男が誰かと話している、顔までは分からないがあの制服は軍学校であるマグナアカデミーの物だ。


「マグナ学園生と話している様ですね」

「アリサ様、それだけでは無いですよ。横を見て下さい」

「⁉︎あれは銀狼族の子供‼︎ううん、他にもいるみたいね」

「あれだけ銀狼族の子供が懐くなんて珍しいを通り越して奇跡ですよ?」


子供が男にしがみついていても男は怒らないし母親である女性は2人の会話に偶に混じっている。家族愛が強い銀狼族は警戒心が強いと有名だ、そんな彼らがあれ程までも親しくしているという事はかなり信頼されているという事である。


「なんかもう……判断に悩みますね……」

「それを言ってはお終いよ?そもそもアリサ様の要望通り手は出さなかったんだから」

「……」


私は彼女の言葉に黙り込む。一般なら不敬罪で処刑とかだが長い付き合いなのでスルーする。その時背後から白髪の青年が姿を現した。


「アリサ様!どうなさいましたか?」

「シリウス辺境伯?本陣の方はどうなさったのですか?」

「第2近衛騎士団団長エレン殿に任せました」

「うわあ……、彼も大変ね」


シリウス辺境伯の言葉にツルッペルン女伯爵は他人事の様に言うが全くその通りであり私も思った事だった。と言うより領主であり総大将であるシリウス辺境伯が増援の第2近衛騎士団団長に本陣が任せるなどある意味おかしいのだが、


「で、どうなさったので?」

「いえ、正体不明の馬車隊を見つけたので」

「ほう?どれ見せて頂けますか?」


望遠鏡を彼に手渡し場所を譲る。


「あれはマグナの生徒と銀狼族の者の様ですね。この大陸では珍しい種族、あらかた奴隷商に攫われたのを彼らに救われたのでしょう」

「……やっぱり国境に関所を置くべきですね。現実的では無いですが」

「確かに、しかし今のままでは無理でしょう」


実はギルムは辺境領と呼ばれる程国境に近く無い。ギルムと国境の間にはほぼ約1領分の緩衝地帯がある、これは国が建国された約200年前には無かったものだが今から約70年前の戦争はアルタクルスとスタイリシュア両国国境線上だけで無くノアニール・マグナ北部国境内でも戦端が開かれたのだ。その際ノアニールは辺境領兵のみで応戦することになり両軍を追い返したが辺境伯達はほぼ全てが討死、領兵の大半が戦死する等の大打撃を受け国境線からの緩衝地帯線を下げなければならなくなった。よって辺境は一領分手前に変更されそれに伴って関所も国境から手前まで後退、巨大な緩衝地帯が完成するに至った。

そして今、その緩衝地帯は平時は密航者達の密航ルートに、戦時はアルタクルスとスタイリシュア両軍の激突、ノアニール侵攻の際の迎撃領域になっている。


「くっ、私達の国の土地なのに……」


私は自国の領土の現状に歯噛みする。あれから70年は過ぎたが未だこの地を奪還、再統治するだけの戦力も時間の余裕も無いのだ。


「アリサ様!正体不明の馬車隊から7名の接近を確認!」

「なんですって?内約は?」

「マグナ学園生が6、緑服の男が1、男は非武装と考えられます」


私は隣にいたシリウス辺境伯から望遠鏡をひったくり先を向ける。少々無礼だが許して貰おう。

先頭を歩く人間の顔に目を凝らす。


「あれは……、あの馬鹿‼︎なんであんな所にいるのよ‼︎」


が、集団の中に見知った顔を見つけつい罵ってしまう。とりあえず攻撃しないように指示を出さねばならない。


「シリウス辺境伯、ツルッペルン女伯爵、攻撃しない様に指示を。あと通用口を開けて迎え入れて下さい」

「「御意、すぐにでも」」


2人は敬礼し壁上下にいる兵士に指示を飛ばす。流石はツルッペルン領兵、滞り無く指示を実行に移し構えられていた弓や弩弓の構えを解き閂が外された。


「シリウス辺境伯、彼らを出迎えましょう。ツルッペルン女伯爵、ここを頼みます」

「分かりました」

「賜ります」


城壁を降り広場を開ける。とりあえずマグナの生徒達といるので即戦闘と言う訳では無いだろうがあの緑服の男が敵である可能性も捨て切れない為兵は配置して置くが、

さて、何も起きないと良いんだけど……。

私はなんとなく感じ始めた不安に頭を悩ませるのだった。



◆◇◆◇◆◇◆



変わってこちらは大空達だが城門まで約50を切った時点で壁上の弩弓や構えられていた弓が下げられたのを見て7人は少し安堵の息を吐いた。最悪、大空だけでも狙い撃ちされる可能性もあったのだ。


「まあ、現段階で攻撃するメリットはあまり無いからな」

「でもしないとは限りませんからね。例えしてきたとしても全力で迎撃しますが」

「まあ、お手柔らかにね」


どうやら同じ顔なのにアシュリードの方が笑みに凄みがある様だ。これが戦乱に生きる者の姿なのかもしれない……俺より若いのに。

とはいえ彼らは精鋭であることに変わりはなく、(聞く所によるとアシュリードとレオンなら飛んでくる弩ぐらいは真っ二つに両断できる実力者らしい)下手したら小銃武装の自衛官より強いんじゃないだろうか?


「さて、着きましたよ」


先頭を進んでいたアシュリードの言葉に俺の思考は現実に戻される。目の前には高い城壁と城門が立ち、門の横の通用口は勝手に開かれた。


「お出迎えみたいですね、歓迎されているかは分からないですけど」

「最低、俺達(自衛隊)は無理でもあの子達、銀狼族の彼らだけでも受け入れてくれれば良いんだけどね」


俺のぼやきにこちらを見ていたアシュリードやレオン達が少し表情が曇る。彼らの事、そしてこれからの事の不安と緊張を胸に俺は門を越えた。



◆◇◆◇◆◇◆



さて、本日2回目だがなんでこうなった?

目の前には数十本の槍の壁、周りは俺に向けられる槍に対する臨戦態勢のアシュリード達が剣を抜いている。


ああ‼︎‼︎もう‼︎なんで話し合いが始まる前にこんな事になるんだよ⁉︎


事の始まりは俺が城門を潜り第1近衛騎士団団長と顔を合わせた時まで遡る。



◆◇◆◇◆◇◆



「で、誰と話をするんだ?」

「さあ?普通なら警備を任されてる部隊の隊長かな?あの家紋からするとツルッペルン女伯爵みたいだけど」

「ツルッペルン女伯爵?」

「そう、辺境伯の1人でここから西にある領の次期当主だよ。家督は継いでるけどね」


どうやらこの世界では男尊女卑寄りの考え方はまだ小さいらしい、というより現実リアルで女性が兵士を率いて戦場を駆け回るなんて想像できないんだが。

作られた障害物バリケードと柵の潜り広場に出る。それなりに広く地面は石畳、どうやら公共の福祉はしっかりされているようだ。

であれが交渉相手って訳か……。

広場の真ん中に立つ2人組の男女に俺は目を向ける。1人は白い鎧を纏った白銀髪の美女?いや美少女か?瞳は黒でロシア寄り顔立ちだがよく見ればの何故か日本人を感じさせる気もしないでもない。もう1人は白い軍服を着た長身の男だ、イケメンという訳でもないが優男という雰囲気を持っている。そして彼もまた白髪で目だけは歳にふさわしくない光をたたえている。この国はなんか髪が白い人が多い……気がする、いや周りの兵士は基本金髪か茶髪なのでそうではないのかも知れない。


「!」


不意に彼女と目が合った。彼女は目を見開くと不意に腰の剣を引き抜き構える。その目にあるのは完全な警戒心だ。


「あ、貴方は何者です‼︎化け物ですか⁉︎それとも東方で言う『物の怪』と言う奴ですか⁉︎」


彼女が剣を引き抜いたのを見て周りにいた兵士達も手にしていた槍を構え構える。正直条件反射みたいなものだろうがそこに油断も隙も無い、よく訓練された兵士なようだ。


「とりあえず手を上げろ‼︎抵抗するなよ‼︎」

「マグナの生徒は武器を置いてこっちに来い!こちら側で保護する」

「おい、あの怪しい男を取り押さえろ」


兵士も警戒心と迷い、あとちょっと不気味な物を見る様な視線で口々に言うが内容が内容だった為黙って聞いていたアシュリード達は遂に、


「「「「「ふざけんな‼︎」」」」」」


兵士達の言葉にキレた。見事に完全にキレた。6人全員が抜刀、俺を守るように布陣し兵士顔負けの剣気を発する。


……こうして時は冒頭に戻る、未だかつて感じたことの無い位強い緊張感の中俺は立っている。槍に囲まれるのも初体験だがここまでまるで『怪物』を見る様な怯えと恐怖の不気味な視線もまた初体験だ。


「だがら!君達は武器を下ろしてそいつを引き渡しなさい‼︎」

「ふざけんな‼︎何もしてない人間相手に槍を向けといて信用できるか!」

「ツバサさんは『化け物』では無いわ。交渉しに来ただけよ」

「それ以前になんでツバサが『化け物』なのよ!」


アシュリードとシア、ミオ3人の声に兵士達は押され気味である。確かに2人の顔がそっくりなのは驚くだろうが過剰反応過ぎないか?


「そこの坊主とその男の子の顔が全く同じだからだよ‼︎」

「アホか‼︎顔が似てるだけなら双子だっておるわ‼︎」


おお、関西弁。異世界に来てなお聞くとは思わなかったな。

というより異世界で日本語が通じる時点で変なのだがもう慣れた。とにかくアシュリードの怒声に一部の兵士達は槍を構えるのに迷いを感じている様だ、おそらく双子を見たこと聞いたことのある人達だろう。まあ基本双子が生まれる確率はかなり低いのだ、知らない人がいてもおかしくはない。


「てっ、ちょっと待て!なんでいきなり一触即発状態なんだ⁉︎アシュリード落ち着け!」

「がるるるっ!」


お前は犬か!とりあえず威嚇するアシュリード達を冷静にさせる必要がある。それにたっぷり5分以上は使った。

え?なに?その間周りはどうだったかって?もちろんお約束通りじっと待っててくれました。うん、涙出そう。いろんな意味で、


「……ふう、すみませんツバサ殿。取り乱しました」

「構わないけど次からは気をつけてくれ、感情と一方的な思考を優先させ現実を見て擦り合わす事ができなければ話し合いすら出来ないからな」

「耳に痛い言葉です」


アシュリード達は武器を収め頭を垂れる。まだ歳若いので素直に話を聞いてくれたので良かったと言えた。


「さて、コッチは武器を収めたんだ。ソチラもそれなりの対応はしてくれるよな?」


俺は横目で白い鎧の彼女を見る、正直少しイラっときたので敬語は使わない。おそらくかなり身分が高い人間だろうが彼女はその『重さ』を理解していない。

高いが故に上に立つ者は誰よりも冷静かつ感情を切り離し状況に対応しなければならない。例え相手が自分達の常識外であろうが取り乱してはならない、現実を直視し受け入れ、部下達を律さならなければならない。それが出来ないならば戦場や外交において部下達を危険に晒す事になる。それだけは必ず避けねばらならない。


「うっ……」


彼女は一瞬目をそらすと意を決した様に見返し剣を収めた。


「……失礼…致しました。槍を収めて下さい」


彼女の声に兵士達はゆっくりと槍を引く。俺達の前に彼女は歩いて来ると頭を下げた。


「交渉に来た貴方に対し暴言を吐く失礼、更に危害を加えようとしてしまった事を謝罪させて下さい。……本当にすみませんでした」


彼女が頭を下げた事に兵士達はどよめく、もしかしたらすごい人に謝罪させてしまったのかもしれない。


「……頭を上げて下さい。気にしていない、と言えば嘘になりますが過ぎた事です。本題に移りましょう」

「ありがとう、ございます」


正直、女性に頭を下げさせ続けるという趣味はないし謝罪して欲しかった訳でもないので早く頭を上げるように言う。彼女はゆっくりと頭を上げた。


「あの、どの様な交渉に?」

「それはですね……」


彼女と青年にアシュリード達と会ってから推定アルタクリス正規軍の偽装部隊に襲撃されていた馬車を救出、銀狼族達などの獣人種と人種の解放しここまで護送してきた事を説明し彼等の受け入れと自分達自衛隊の『保護』について話した。


「『ジエイタイ』の保護ですか……」

「最悪領内の通過を認めて頂ければ十分なので彼等を受け入れて頂ければ大丈夫です」

「彼等の受け入れは問題ありません。しかし今は戦時中です、『保護』と言っても……」


彼女は顎に手を当て少し考える。うん、可愛いと思うよ。冗談抜きで、


「『保護』の内容ですが、要求するのは次の3つです。

1つ、自衛隊の駐屯を認める。(陸、海、空含む)

2つ、永久中立都市群は自衛隊を雇用する。

3つ、戦争時、自衛隊を一軍と認め軍事行動を共にする。

です」

「……これは、貴方方の取り分が多過ぎませんか?」

「そうでもないですよ?貴方方が我々の駐屯を認め雇用してくれれば我々は戦力として軍事行動を共にます。そういえばこの国に『まともな』海、空軍は有りましたっけ?」


俺の言葉に彼女は黙り込む。アシュリード経由だがこの国にはまともな海、空軍は無い。海軍の艦艇は主に東方の国からの輸入しており鉄甲艦は現在7隻で木造戦艦が28隻(しかも木造戦艦はかなり老朽化している)のみ、空軍においてはワイバーン隊が2連隊の約6,000騎程度(1個師団分)しかいない。これは明らかに他国軍より圧倒的に少なくしかも練度も低い。唯一まともなのは陸軍だけなのだが陸軍だけで戦争には勝てず陸戦で勝利を収めても海、空軍では負け続きと正直かなり歪な状態である。これはそこを突いたものだ。


「ところで、そこまで言うのですから『ジエイタイ』の陸、海、空軍はどれ程いるのですか?」

「そうですね……、陸上自衛隊いえ陸軍は我々2小隊全20名のみ、海軍は護衛艦4隻、イージス護衛艦6隻、航空母艦型護衛艦1隻、ヘリコプター護衛艦1隻、補給艦3隻の計15隻総員少なくとも2,500名、空軍2航空隊全12名と言った所でしょう」

「……海軍は凄いですね」

「陸、空も負けてませんよ?少なくとも質と強さだけなら貴国全軍にひけはとりません」


これは嘘では無い。あくまで補給と隊員に掛かる負担を考えない、ならばであるが。


「そうですか……、シリウス辺境伯はどう思いますか?」


彼女は隣にいた青年に話しを振る。待て今シリウス辺境伯って言ったよな?そんな感じに普通に話しかけるなんてこの人どんな身分なんだよ。


「……現時点では信用に値しないかと、おそらく嘘は言っていないでしょうがまだ信頼する訳にはいきません。それより先に受け入れの方を先に行うべきかと」

「なるほど……」


彼はこちらに目配せした後彼女にそう進言した。辺境伯とは伊達ではなくかなりのヤリ手な様だ、特に最優先事項をしっかりと抑えている。


「分かりました。一度先に銀狼族の方々を先に受け入れます、それでよろしいですか?」

「構いません。こちらの要求も最低1つ目さえ受け入れてくれれば構いませんから」


銀狼族さえ受け入れれば後は俺達にさようならとか嫌なのでここで軽く釘と言質を取っておく。


「分かりました」


運良く彼女は言質を取らせてくれた。まあ釘が刺さったかは別であるが、


「とにかく伝令を送りましょう。善は急げです」

「あ〜、失礼しますがそれに関しては大丈夫です」

「?、どういう事ですか?」

「こういう事です。『あー、神木?聞こえてる?』」

『ああ、勿論だ。で、いけたか?』

「うん、受け入れは今すぐしてくれるって。第7を先頭に馬車を入れてくれ、あとLAVは後方で警戒、最後に入城な」

『了解、発車する』


わざと無線の線を抜き彼女達にも話しが通じる様に神木に連絡する。始めは「何やってんだコイツ?」みたいな視線で見られていたが途中から驚きの視線に変わった。


「ななな、何ですかそれは⁉︎」


鎧の彼女はいきなりずいっと顔を近づけて来た。しかも目が好奇心に輝いている。


「えっと、あ〜……」


答えに悩んでいると更に彼女は近付いてくる。マシで近い近い‼︎

焦る俺そっちのけで彼女は徐々に俺を追い詰めていく、誰か助けてくれ!


「アリサ様……、はしたないですよ?」


俺が後ざするのを見てシリウス辺境伯はため息混じりに彼女に諫言する。


「はっ‼︎コホン……失礼しました」

「い、いえ、大丈夫です」


彼女は冷静を取り繕うが何気にまだ頬が赤い。恥ずかしいのだろう。


「と、とにかく!城門を急いで開けて下さい‼︎」

「御意」


シリウスは一礼すると側の兵に城門を開けるよう指示を出した。重厚な扉がゆっくりと目の前で開いていく。そして自衛隊の交渉、入城は上手くいったように見えたがそれが間違いだったと俺達が分かるのは案外すぐだったりした。



◆◇◆◇◆◇◆



それは城門が開き自衛隊達が入城し始めた頃、


「おい、城門が開いたぜ」

「お、本当だ」


男達は街道から少し離れた地点いた。彼等は監視する偵察用の騎馬隊であり戦場では勇敢にも敵陣に突撃する騎馬隊でもある部隊であり、隊長を筆頭に余り素行の良くない部隊でもある。


「へへへへ、あれなら俺らだけでも攻められるぜ」

「馬で走ればすぐな距離だしな」

「これで上手くいけば恩賞弾んでくれんじゃなねえか?」

「それは良いな」


男達は笑う。多分大空がそれを見たら確実に「胸くそが悪い」と吐き捨てるであろう程欲に塗れた醜悪な笑みであった。


「おっし、野郎共!突撃だ‼︎」

「「「おお‼︎」」」


隊長である男は叫ぶ。これから訪れると信じて止まない自らの成果を夢見て。



◆◇◆◇◆◇◆



その頃、城門が開きまず先に第7小隊の車両が、次に銀狼族達の乗る馬車が、最後に第1小隊と後方警戒を続けていたLAV2車両が門を越えようとしていた。その時、


「南門約300メートル先に騎馬隊発見‼︎約300、軍旗よりあれはアルタクリスの部隊です‼︎」

「なんですって⁉︎」


壁上からの報告に彼女は驚くがすぐに冷静に戻る。今は戦争中、いつアルタクリス軍が現れてもおかしくない。問題は門が開いている事だ。


「急いで城門を閉めて‼︎あ、でも今は車両が!」


まだLAV2両が門をくぐっていないのだ。しかし重い門の開閉はすぐにはできない。つまり『見捨てる』と言う選択肢しかないのだ。


「でもっ⁉︎」

「アリサ様」


俺は彼女の名を呼ぶ。まだ互いに名を明かしてはいないが会話の内に既に把握してある。


「何ですか?」

「我々に交戦許可を、300騎程度なら蹴散らせます」

「⁉︎」

「なのでこちらの隊員の何名かを壁上うえに上がる許可と戦闘の許可を、これで勝てます」


嘘ではない。ただ補給の効かない弾丸たまを無駄に消費することは間違いない。が、ここで彼女達に恩と釘を刺して置くのには丁度良い。


「本当にできるのですか?」

「もちろん、嘘冗談を言っている余裕はありませんから」


彼女は黙り込む、が決断は早かった。


「許可します。そして貴方方自衛隊に救援要請を要請します」

「感謝します。『第七小隊隊員は壁上うえに上がれ、LAVのバックアップだ!LAVはキャリバーで騎馬隊を叩け!第一小隊は避難民を誘導しろ』」

『「了解」』


俺は馬車に預けてあった小銃を手に取る。


「さて、壁上うえに行きましょうか」


そう言って俺は微笑んだ。



◆◇◆◇◆◇◆



一方騎馬隊は距離残り300の時点で門の前に停車する変わった馬車の存在に気付いたようだ。


「なんだあれは?」

「さあ?とりあえず突撃しかねえだろ?」


彼等は口々に言うが次の瞬間からそれは悲鳴へと変わった。


パパパパパッ


「ぎゃあ⁉︎」

「ぐああぁぁ⁉︎」


鳴り響く破裂音が連続して響き、瞬く間に300騎あった部隊が100を超えた時点で過半数以下までに減っている。


「な、なんだこれは⁉︎こんな魔法攻撃なんか聞いたこともないぞ⁉︎」

「ぎゃああぁぁ⁉︎お、俺の肩が⁉︎」


また1騎、また1騎と削られ200進んだ頃には遂には隊長騎を含めた20騎だけとなる。その時、破裂音が止んだ。隊長である男はそれを魔力切れと勘違いした。


「魔力切れだ!撤退するぞ!回れ回っ⁉︎」

「う、うわああぁぁぁ⁉︎」


が、その勘違いに気付く事なく男は頭部だったモノを撒き散らしながら死んだ。



◆◇◆◇◆◇◆



同じ頃、その光景を見て私は震えていた。


「隊長騎と思われる男クリア、総員残りを殲滅せよ」

「了解」


ここから約300メートル先にいた筈の騎馬隊は今や100メートル先で1人残らず死んでいく。


タンッ


また『死の音色』が響く。弓の最大有効射程を遥か越えるその黒い魔杖まじょうによりまた『人』だった筈のモノが生まれた。

たった20人?嘘、私達騎士精鋭20騎でもこんな事などできない。魔法を使う訳でもなく100メートル先いる敵を軽く殲滅する事など‼︎


「騎馬隊殲滅を確認、LAVは城内に帰投せよ」

『LAV、了解』


先程隊長騎と思われる男を攻撃したであろう知り合いの顔と同じ顔をした彼ははそう言って手に持つソレを背負い立ち上がった。


「さて、どうでしたか?」

「っ、……驚くべきものでした」

「そうですか、では我々は下に降ります。アルタクリス軍本隊が到達するまでにこちらも準備しなければなりません」

「準備ですか?」

「はい、最悪現時点で我々は撤退します」

「っ⁉︎何故です⁉︎」


彼の言葉に私は彼の襟を掴み引き寄せた。


「現在我々の部隊に数千ものを敵兵を押し返す分の準備も物資もありません。更に貴方方とはまだ交渉も済んでおらず今ここで我々が戦う理由は無いのです」

「では何故先程は騎馬隊に対し戦闘を行ったのです⁉︎」


彼は襟を掴んだ私の手を優しく外し一歩引く。


「あれは俺の『部下と友人』が危険に晒されかけたからです」


私は驚いた。今彼は『部下と友人』と言ったのだ。


「確かに交渉はまだ決していません。しかし『友人』の為ならば話は別です。我々自衛隊と手を結んでくれるであろう『友人』の為ならば」


国としては助けられない、だが代わりに私個人の頼みならば手を差し伸べる。それを交渉材料としては使わないという事だ。


「自衛隊とは例え相手が誰であろうとも、助けを求めるならば『護る』為に戦う軍隊です」


彼は私の目を見つめた。そんな目で見られたら私の答えられる答えなんて1つしかなくなってしまう。だが不思議と気分は悪くない、むしろ良い。だから私はそう答えた、


「ノアニール・マグナの1国民として、貴方方自衛隊にギルム防衛の救援を要請します」


騎士の1人としてで無く、この国に住む『国民ひと』として。



◆◇◆◇◆◇◆



「しっかし、すごい独断専行だな。無断外交、自衛目的外での未承認戦闘、更には勝手に交渉内容決めちまうなんてな。元の世界なら懲戒免職じゃ済まないレベルだぞ。物理的に首が飛ぶんじゃないか?」

「ここは異世界、少しぐらい見逃してくれるさ。……とりあえず減俸程度で許して欲しい」

「……無理だろ?」

「……だよなあ」


俺はかなりデカイため息を吐いた、一か八かだったとはいえここまで決めてしまったのは早計そうけいだったのかもしれない。が、神木は内容については賛同してくれた。


「ま、内容についてはアレで良かったんじゃないの?駐屯に関しても雇用に関しても自衛隊おれたちに対する命令系統に関しても追い追い正式に締結するまでに詰めていけるからな。最低限必要な事は約束させたんだ、誇ってもいいと思うぜ」

「ありがとよ、慰めてくれて」


神木の優しさが目に染みるぜ‼︎


「気にすんな、問題になったらお前に全部押し付けっから」


前言撤回、コイツ悪魔だわ。

言うだけ言って神木は馬車の方に歩いて行った。


「……とりあえず海自とかに治安維持協力要請を出してみよう。とっつぁん手伝って、上手くいけば一発で繋がるだろうから」

「しかし間に合いますかな?」

「なんとかするでしょ?第十三護衛艦群には最近本格的な新型の航空母艦型護衛艦『アカギ』が配備されてたし、千歳配備のF-3とF-22の飛行隊も転移してきてるらしいから緊急発進スクランブルすればなんとかなるよ」


俺の言葉に柳准尉は少し考え込む。


「了解しました。しかし戦闘ヘリ(アパッチ)の方が戦力になるのでは?」

「インパクトは戦闘機の方が上だからね。アフターバーナー点火後都市上空をローパス、あのソニックブームと衝撃波は最高だと思うよ?」

「……」

「武装はバルカン砲と空対空ミサイルだけだけど編隊飛行しながら自分達の上を見たことの無い存在が音速で駆け抜けるパフォーマンスなんて元の世界でも見れないしね」


俺の言葉に柳准尉は言葉を失う。俺はコレでノアニールに釘を刺すつもりなのだ。表向きは敵対勢力の排除の為の援軍、実際はノアニールに対する警告と戦力の売り込み、手を取る損は無い事を示し敵対すれば確実に勝てるという一種の『脅迫』である。

まあ、国益(もう日本ないけど)を第一に考えるなら誰だって思い付く事だ。ちなみに元世で言う砲艦外交という軍事力を背景としたあまり褒められな手法にに近い方法である。

閑話休題それはさておき


「ともかく、俺達はここでアルタクリス軍を迎え撃つ。銀狼族の人達の受け入れと俺達の未来が掛かってるんだ、確実に守り切るぞ!」

「了解!」


柳准尉は意を決したかの様に頷く。彼もまたこの世界で既に人を殺した、後悔はしていない。守るべき物を守る為彼は自衛隊に入った、異世界に来たとてソレは変わらない。ただ……、


「…孫を二度と抱けない点だけが……心残りです…」

「……すまない」


彼の小さな呟きに俺はそう呟く。彼は俺に背を向け歩き出した、俺は呼び止めはしない。……彼の、『漢』の涙を見るのは俺は『1人の人』としてできなかった。


海上自衛隊と航空自衛隊の出番はすぐそこですね。

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