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アルヌスの旭日旗  作者: 神倉 棐
第1章 自衛隊彼の地にて戦えり【ギルム編】
6/27

奴隷の従者

短いです。ちなみにヒロイン1人目の登場です。


私はゆっくりと目を開けた。薄暗いそこは鉄と弱いアンモニア臭が漂い小さい明かり取りの窓からは光が漏れている。ここは奴隷輸送用馬車の中だ。周りの人は主に人種の女性、他は獣人種の男女が半々でみんな首や手に枷が嵌められ鎖で繋がれている。もちろん自分もだが、


「ううぅぅ……」


誰かの呻き声が聞こえるがもはやそれすら慣れたもので泣き声が無いだけまだマシかもしれない。下手すれば奴隷商に憂さ晴らしの為だけに暴力を振るわれかねないからだ。とはいえ実はここにいる奴隷達のほとんどは“仮”奴隷とまだ奴隷ではない者がほとんどだ。私もそうだがこれはつい最近戦争が始まりそれに乗じて人攫いが増えたからであり、実は私は少し違う事情がある。

私はとあるお方に使える侍従隊の副隊長だった。侍従たる者、メイド仕事だけでなく料理に家事、洗濯、家計に外交、用心護衛に暗殺、そして諜報までも完璧に努めねばならないいわば影の立役者。そして私もまた仲間の2人と共にその侍従としてある人物にメイドとして潜入、諜報を行っていたのだ。だが戦争が始まったある日1人が裏切り私達2人を告発、取り押さえられそのまま2人共奴隷商に二束三文で売り捌かれたのだ。ある意味拷問で情報を吐かされたり陵辱されたりされず幸運だったかもしれないが奴隷の先にあるのはほぼ変わらない。裏切った彼女も直ぐ捨てられるだろうしそうでなくともおそらく元同僚達に報復されるだろう。だから私はそれ程彼女の事を恨んではいない、だが私と仲間の彼女がこの先どうなるのかが唯一恐ろしい。私も彼女も容姿は悪くはない、平均よりいいぐらいだ。胸は……小さめかもしれないが平均的、女性としての魅力もあるっちゃある。20歳だがまだ処女なので高く売られるだろう、貴族の玩具にされるか娼館に娼婦として売られるか、どっちにしろ死ぬより辛い日々が待っているのは間違いない。

その時、いきなり馬車のスピードが上がり中にいた私達はバランスを崩す。どうやら盗賊か何かに襲われたらしい、まあまずこんな重い馬車を引いていては逃げられない。更に護衛を雇おうにも奴隷商という職は禁忌されまともな冒険者が受けるわけなく、素行不良やまともではない、しかも練度も士気も低い冒険者崩れぐらいしかおらず例え戦闘を交えても直ぐに壊走することは目に見えている。なら何故雇うのか?一概には言えないが簡単に言うと『見せかけ』である。つまり見た目で強そうな者を揃えて外敵がそれを見た時思い止めさせればいいのだ。が、それは襲い掛かられれば直ぐに瓦解する。おそらく既にこの商隊の護衛は壊走し奴隷商は近衛の護衛を引き連れて商品を置いて逃走した後だろう。結局、私達は奴隷商から見放され今度は盗賊達に捕らえられ自由になれる事はなく、かえって彼らに弄ばれ慰めものにされて最終的には鎖に繋がれたまま殺されるだけであり結果は変わらない。それを分かっているからこそ絶望が車内を染める、だが何かが変だった。止まった馬車に誰も入ってこないのだ。普通奴らなら戦果を確認する為直ぐに馬車を開けて中を確認する筈だ、だがそれがない。更に外に注意を向ければ悲鳴と共に連続した発破音が響き周囲から人の気配が消えていく。


コンコン


しばらくして扉が叩かれた。全員身を硬くし奥へと逃げようとする。私も逃げたかったが鎖の長さもあり扉付近から逃げられなかったが代わりに扉越しに向こう側の声が聞こえた。


『隊長、敵性勢力完全に鎮圧。周囲警戒中です』

『了解、所属は?』

『アシュリード君達が確認してくれていますが少し掛かるかと』

『そうか……、ところでこの南京錠に鍵は見つかったか?』

『残念ですがまだです。いっそ破壊した方がよろしいのでは?』

『そうだな、これならロクヨンでも破壊可能か……、出来そうだな』


扉の向こう側で南京錠がガチャガチャと触られる音がする。その後再び扉がノックされ声が聞こえた。


『扉付近にいる方は奥に退避して下さい‼︎今から錠前を破壊します‼︎』

「!できるだけ離れて‼︎ユミィっ私の後ろに!」

「⁉︎先輩危険です‼︎」

「良いから!」


仲間の彼女を自分の後ろに隠し隅に身を隠す。と同時に何度かの破裂音と金属の砕ける音が響き錠前が地面に落ちる音がした。次に閂が外される音がする。そして重い扉がゆっくりと開き懐かしい太陽の光が差し込む。暗さに慣れた目には眩しい程の優しい光の中で声が響く。


「みなさん、大丈夫ですか?」


それは私に、いや私達に差し伸べられた小さくも優しい救いの手だと、私達は本能的に理解したのだった。

海自と空自の出番が……、海自と空自の異世界転移時の話はもう少し後になります。最後に、次の次ぐらいに空自の出番があるかもです。

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