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アルヌスの旭日旗  作者: 神倉 棐
序章
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異世界との『邂逅』

遅れました、すみません。


「「えっと……、俺(僕)?」」


そこにいた9人(車内にいた柊、比企谷含む)が目を丸くする。そこには全く同じ、鏡に映したかのように瓜二つにそっくりなの顔があった。


「「……」」


あまりの驚きに当の本人の他の7人すら声が出せずにいた。そして真っ先にその静寂を破ったのは大空だった。


「……そっくり……だな」


小さな小さな呟き、だが静かなその場ではやけに大きく聞こえた。


「……貴方は……何者だ?何故僕と同じ顔をしている……?」


もう1人のそっくりさんが言う。多分俺より年下だろう、理由?もちろん勘だ。


「……まあ、俺は大空翼。陸上自衛隊二等陸尉なんだが……、簡単に言えば『異世界人』って奴かな?」

「リクジョウジエイタイニトウリクイ?しかも『異世界人』だって?」


彼はいかぶしげな顔で俺を見る。まあここまでは予想通り、まず初見で信じられるとは思っていない。問題はここからだ。


「その通りだ。見た感じでもなんとなく分かるだろうけど」

「むう……」


恐らく自動車もこんな形の天幕テントも見た事がないはずだ。更に極め付けは戦闘服、兜の様なヘルメット(てっぱち)は被っているが何の装飾も無く簡素、防弾チョッキは特にだろう。

一言で言えば『怪しい』に尽きる。


「とりあえず……『異世界人』という事は理解した。だが何で僕と貴方の顔がそっくりなんだろう?」

「それは俺に聞かれても分からない。ただことわざで『世の中には同じ顔の人間は3人はいる』って言うからじゃないか?……それ以前にここは異世界なんだが」

「なるほど……、世の中には3人は同じ顔の人間はいるのか……。ならまあいいか」

「「良いのかよ⁉︎」」


当の本人である俺達は納得できた訳だが周りはそうでなかったらしい。鋭いツッコミが飛んできた。


「おい大空……、軽過ぎないか?」

「良いんじゃない?別に気にするべき事でもないし」

「はあ……、お前らしいよ」


「リーダー、そんなあっさりで良いの?そっくりさんだよ?双子でもこんなそっくさんはいないよ?」

「良いでしょ、世界は広いんだから何だってありでしょ?」

「……平常運転ですねぇ〜、リーダーらしいですけど」


とまあ冷静なんだか馬鹿なんだか分からない同じ様なやりとりがどちらでも行われ結局また向かい合ったのはそれから数分程経った後だった。


「まあ、とりあえずだ。名前を名乗ってなかったよね?遅れたけど僕の名はアシュリード、軍学校のマグナアカデミーの最上級生でこの班のリーダーをやってる。よろしく」

「軍学校?」

「そう、マグナアカデミーは国営の軍学校で入学するだけで箔がついたり、軍で出世しやすくなる。簡単に言えば士官学校みたいなものかな?」

「……防大より将来安泰じゃないか?」

「確かに……な」

「ボウダイ?」


軍学校についての説明の途中にぽろっと呟いた言葉に神木が同意する。アシュリードは『防大』という言葉に反応した様だった。


「『防大』は防衛大学を略した名称で簡単に言えば自衛隊に入隊する為の士官学校とほぼ同じ様な機関だ。卒業後はまあ最低でも曹長からでよければ三尉から入隊する事になるかな?」

「なるほど……」

「ではお2人は三尉で入隊なされたので?」


そこに黒髪の女性、確かシアと言ったはずの彼女が口を挟んだ。それに俺は迷わず答える。


「いや……俺達は曹長からなんだ」

「?何故?そこまで無能には見えない」

「いや、曹長だから無能って訳じゃないんだけど……、まあ上の事情って奴だよ」


大空と神木は微笑む、いやどちらかといえば苦笑いだが……。


「とにかく、階級の話は置いといて。悪いけど『地図』持ってない?」

「『地図』?一応あるけど……、辺境のだからあまり正確じゃないよ?」

「構わないよ。正確な地図なんか敵地に面する辺境で作られてるなんて期待はしてないから」


大空の言葉にアシュリードやレオン達は目を見合わせる。本来、地図は自国内で使うだけならかなり便利だ。だがその便利さは戦争になると逆に侵攻する敵に対して有利な情報を与えることになる。よって辺境周辺の地図はわざと正確に作られない、……まあそれ以前に正確な測量が行われ作成されたものかすら怪しいのだが、


「……貴方は本当に曹長上がりなんですか?」

「もちろん、ワケありだけどね」


アシュリードは自分と同じ顔を持つ俺の顔を見つめる。どうやら少し怪しまれたらしい、が別に真実を言ったまでだ。気にはしない。


「……分かりました。貸しましょう、ミオ地図を」

「うい〜、はい」


緑髮の背の低い少女っぽい彼女はどこからともなく丸めた地図を引っ張りだす。

ねえ君、今本当にどこから出したの?

彼女から地図を受け取ったその時、陣から栗原が顔を出した。


「隊長、準備できました。まだですかってた、隊長が2人⁉︎」

「またか……」

「あははは……」


流石に2回目で慣れた俺達は苦笑いで済ます。驚く栗原を放置し俺は彼らをテントに招く。


「さて、準備ができたみたいだし改めて君達を招待させてもらうよ。ようこそ、自衛隊へ」



◆◇◆◇◆◇◆



僕達は僕と同じ顔を持つ男に案内され陣の中にある天幕テントの1つに入る。そこでまず僕達はいきなり驚かされた。


『ようこそ自衛隊へ‼︎』


男女含めて20人程だろうが全員は満面の笑みで自分達を迎えたからである。てっきり中には厳しい顔をした男達がズラリ、とか考えていたのだがよくわからない方向性で予想が外れた。


「ねえねえ君達、お腹減ってない?戦闘糧食レーションだけど食べ物もあるよ?」

「なあなあ‼︎やっぱ魔法とか使えんのか?例えば……ラ◯デインとか⁉︎」

「古っ、ド◯クエネタじゃねえか⁉︎」

「いや、それ以前にマイナーすぎんだろ?それよりケモノ耳の女の子とかいんのか?」

「「「オタク丸出しじゃねーか‼︎」」」


と、よく分からない質問も多々あるがとにかく揉みくちゃにされつつある。そんな中オオゾラは、


「お前ら……、一人一人話せ。お客さん達に迷惑かつ失礼だろ」


完全に呆れ顔かつ諦めた感じの雰囲気を漂わせ彼の部下であろう彼らに言う。が、それでも彼らは止まらない。逆に加熱しつつあるがこちらもミオ以下数名(レオン、スレイン)は既に順応しつつある驚異の事実、ミオは食べ物、レオンは筋肉、スレインは魔法と得意(趣味)についての話で盛り上がっているようだ。一方、シアはというと、


「ねえ、この兜に付けてあるこの黒い筒は何なの?」

「これ?これは暗視装置ね」

「アンシソウチ?」

「そうよ、あー、簡単に言えば暗闇でも視界が確保できできるようになる装置ってやつかな」

「なるほど……、便利な道具ね。欲しいわ」

「うーん、あげられない……かな?」


とこっちは何やら異世界の装備品について質問しているらしい。……少し無茶振りが聞こえた気がしたが気にしない気にしない。

そんな時僕の目はふと天幕テントの端にある沢山の黒い杖が並べられた剣架らしき物に止まった。綺麗に整列され黒光りするソレに僕は手を伸ばし……、


「はい、ストップ。危ないから小銃を触るのは駄目」

「ショウジュウ?」


その手は自分と瓜二つなオオゾラによって掴まれた。


「どうしてそのショウジュウとやらを触るのは駄目なんですか?」

「操作方法を知らない君が触ったら暴発する可能性も誤射する危険性もある。それにそれは剣や弓より遥かに遠くから簡単に命を簡単に奪えるほどのものなんだよ」

「剣や弓より遥かに遠くから簡単に命を奪える?」

「そうだ。遠距離から一方的に相手を狙い撃ちできる」

「そんな魔法は聞いた事もない……」

「当たり前だ。魔法なんかじゃない、科学、つまり火薬による物だからさ」

「科学、カヤク……」


僕は人知れず身を震わせる。恐怖によってではない、確かに戦場では脅威となるだろう。だがこれは革命だ。魔法がなくとも戦える、いや下手すれば魔法より遥かに強い力を持つようになる。この世界では機械文明はようやく進み始めたが科学文明は未だ進んでいない。理由は簡単だ、科学が発展せずとも魔法があれば困らなかったからだ。だがこれによりそれは飛躍的に発展する、軍事だけでなく経済バランスさえも崩しかねない危険性と将来性を彼らは持っている。だからこそ彼は思う、


彼らとは打算や利害関係だけで繋がりたくない。彼らとは歴史を創り見守る本当の『友』となりたいと、


「オオゾラさん」

「?なんだアシュリード君」


僕と彼の目線が交わる。


「僕達と仲間になってくれませんか?」


こうして世界の時計の歯車が回り出す。未だ動かぬその針が刺すのは新たな未来か、はたまた世界の終わりか、それはまだ誰にもわからなかった。

分かりにくい回でしたがご容赦下さい。次回短めです。

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