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アルヌスの旭日旗  作者: 神倉 棐
第2章 首都へ
24/27

間者?患者?

哀れな間者に、黙祷。

大空が帰還するとギルムでは彼の居ぬ間に事態は急動していた。中でも彼を驚かせたのは女中メイドとして働いていたはずのサラが何故か何処のかは分からないものの間者スパイを捕獲したという事である。


「……マジで?」

「うん、マジ」

「マジです、大空中尉じゃなくて特務大尉」

「……スゲーですねサラさん」

「っ‼︎そ、それ程でもないですよ」

「……無自覚たらしめ」


僅かだかほんのり赤くなったサラの頰を見て神木はボソリと呟く。言葉の通り細かい所によく気付けるはずの大空は何故かそれに気付かない、なんなんだよこの恋愛限定鈍感補正は……?

防大時代からずっと思っている事に神木はため息を吐きたくなる。……まあもうじきマジでしようかなぁ……?流石にそしたらこの鈍感バカも気付くだろうし……、

相変わらず大空の所為でモヤモヤしてしまう腐れ縁の神木であった。


「んで、捕まえた間者はどうしたんだよ?殺しちゃった(笑)じゃ済まんからな?」

「殺してはないよ……殺しては、ね……」


神木が何処か遠い所を見つめながら答える。なんとなくだがそれで大空は察した。


「……取り敢えず会ってみるか」

「……うん、それが一番良いんじゃないかな……1回見てみれば」


神木の口から「アハハハハハ……」と言う悲しい笑い声が聞こえた気がした。

……うん、幻聴だ幻聴。最近大変だからな……。


「んでどこに居るんだ?領主の館の方か?」

「いや、この駐屯基地に居るよ。地下室を改装して監禁室風にしてみた。……まあ脱走なんて出来ないだろうけど」

「手が早いな……って脱走出来ないって?」

「……見りゃ分かるさ……ああ」

「……分かった」


神木が再びまた遠い所を眺める。何があった何が、


「ではツバサ大尉、ご案内します」

「え、あ、はい。お願いしますサラさん」

「こちらです」


サラに連れられ大空は調理場にある食料備蓄庫である地下室に下りる。一応見張りに栗原が立っていた。


「あ、隊長お久しぶりです」

「お、おう、なんかいつもと違うな……」

「一応5日ぶりですから、たいちょー」

「お、いつも通りになった。取り敢えず開けてくれ、中の『間者』に会いに来た」

「ああ、……あの『患者』さんにですね。今開けます」


栗原が神木と同じく何処か遠い所を眺める。その間にも手は動き扉にされた鍵は外されていたが、


ん?『患者』?『間者』じゃなくて?


何か引っかかるが深く考える前に扉が開く。中には……、


「ち、ちわっす。今朝っすか?イテテテ……」

「わお……」


包帯ぐるぐる巻きの男が簡易ベッドに寝かされていた。一通り上から下まで見てみるが一応骨は折れてないらしい。


「……サラさん?やり過ぎではないでしょうか?」

「逃げようとされたのでコテンパンに力量差を身体に叩き込んで差し上げました。……まあやり過ぎた感は否めませんが」

「やり過ぎです」

「はい……」


サラはシュンとなり頭を垂れる、なんか可哀想に見えてきた。間者の方もだがサラの事も、


……まあ俺逹の為にやってくれたんだしなぁ、礼はしないとね。


「でも俺逹の為に働いてくれたのは感謝します。ありがとうございますサラさん」

「はいっ」


褒めたらなんか嬉しそうな雰囲気オーラ全開で微笑んでくれた。なんか可愛い。


「あ〜、あのいいっすか?邪魔しますが」

「あ、ああ、構わないよ。元々君に事情聴取に来たんだし」

「あん……ひいっ⁉︎あ、貴方がツバサ中尉と言う方ですか?」


いきなりびくっとすると言い換えて彼は話してきた。どうした君?


「そうだよ、別に畏る必要もないからな」

「そ、そうですか……、ではコホン。オレはジャック、そこのお……、いえ優秀なメイドさんに捕まった間者っす」

「捕まったって言うかボコられたって感じだね……。取り敢えず質問するから答えてくれ、一応黙秘権は認めるよ」

「黙秘権?」

「そ、言いたくなかったら黙っている権利。OK?」

「は、はあ、分かったっすけど……いいんすか?何にも喋りませんよそれじゃ?」

「いいんだよ、別に拷問とかする気ないしメインは君と他愛のない話する気だったからね~」


大空は頬を掻きながら笑う、その時何か思いついたらしくポンと手を叩いた。


「あ、そ~だ。ねえねえお願いがあるんだけど、いいかな?」



◆◇◆◇◆◇◆



「良かったのですか?」

「ん?何が?」

「あの間者を碌に尋問もせずに解放した事です」

「ああ、その事ね」


側に控え秘書の様な事をしてくれているサラが大空に聞く。大空はノアニール首都行きの準備の為に幾つかの書類を処理し他にも彼が不在だった間の報告書を読んでいた。大空は奔らせていたボールペンを机の上に置き顔をサラの方に向ける。


「良いのさ、『御使い』も頼んだしね」

「あの2通の『手紙』の事ですか?」

「そうだよ。内容は代筆して貰ったから知ってるよね?」

「ええ、知っていますがアレは……」

「駄目だと思う?」

「……正直に言えば」


大空の問いにサラは気不味そうに頷く。だが大空はそれを見て微笑んだ。


「確かにアレは半分博打だからね。でも効果はあるし失敗してもある程度は予想通りになると思うよ」

「予想ですか?」

「うん、取り敢えず『所属』と『構成』、『行動の制限』ができるね」

「それはどう言う……?」


『隊長、目標が動きました』

「お、案外早いね。泳がせといて、目的が達成できたら帰還してくれて良いから」

『了解です』


サラとの会話の途中に入った通信に大空はそう指示を出す。よく理解できていないようで首を傾げているサラに大空は説明する事にした。


「んじゃ、正解を教えるね。つまり……」



◆◇◆◇◆◇◆



ギルム某所、とある建物のとある一室にて、


「只今戻ったっす」

「ジャック⁉︎生きてたの⁉︎」

「酷いっすね⁉︎ピンピンしてるっすよ⁉︎」

「にしては包帯だらけだな……」


大空達に囚われていた間者のジャックが仲間達といる隠れアジトに戻っていた。そしてやたらと賑やかになってしまったその状態に彼女は頭を抱える。


「……はぁ、ここ一応私達間者の隠れアジトなんだけど……」

「副たいちょー、只今戻ったっす」

「……お帰り……と言うべきかしら?ともかく何があったか説明しなさい」

「了解っす」


ジャックは潜入してメイド(サラ)にボコられて捕まって監禁された後最重要人物とあって世間話をしたら釈放された事を真面目な話3、余計な事7の割合でペラペラと彼女に話す。話し終えると彼女の口角は若干引き攣っていた。


「……つまり捕まって任務に失敗した挙句最重要人物と何の意味も無い話だけして帰って来たですって⁉︎しかも私達より良いもの食べてるじゃない‼︎」

「確かにあの戦闘糧食レーションって奴は今まで食った料理の中で1番美味かったっすよ」

「なんで捕まえた間者にそんな良いもの食べさせてるのよ……しかも拷問とかしてないみたいだし」

「してないっすね」


ジャックの報告に散々振り回された後彼女は疲れたらしく椅子に崩れ落ちる。


「あ」


そこにジャックは突然何か思い出したかの様に手を叩いた。


「忘れてたっすがツバサさんから手紙預かってるっす」

「忘れてるんじゃないわよ‼︎1番重要じゃない‼︎」

「そうなんすか?」

「そうよっ‼︎とにかく出しなさい。早く、ヘリアップ‼︎」

「わ、分かったすよ……。えっと、こっちがたいちょー用でこっちが領主様用っす」

「貸しなさい‼︎」


ジャックから2通の手紙を引ったくり片方の手紙の封を開ける。中には驚くほど白い紙が入っていた。


『拝啓、1日が年の中で最も長い今日この頃。

初めまして諜報機関の隊長さん、私は大空翼特務大尉。この地域風にすれば翼・大空です。どうぞお見知りおきを、

さて早速本題に入らせて頂きますが貴方方の知りたい事は何となく分かります。私達が何者か、あの兵器は、目的はと様々有るでしょう。こちらも手札をあまり晒す訳にはいきませんのである程度情報を貴方方のみに開示させて頂きます。特別ですよ?

私達は地球と言う星、異世界から来た異世界人の軍隊です。そして軍隊の名を『日本国自衛隊』と言います、簡単に言えば国防軍ですね。そしてこの世界に転移してきたのは陸、海、空軍の一部です。それだけでも計算上一国ならば落とせるだけの戦力があると自負しております。嘘だと思うのが正しいでしょう、ですがギルムでの戦闘を知る方であればそれが真実であるとお分かり頂ける筈です。ですが私達はそんな事を望んではいません、なので手を出されない事を注告させて頂きます。

最後に、あまりジャックを虐めないで頂けますか?話し相手には最高の相手です。もう1通の手紙は貴方方のボス、バルツァー辺境伯にお届け下さい。


追記、2日以内に私はノアニール首都に行きますので直接話をしに来て頂けるなら首都か後日にお願いします。


大空翼特務大尉より』


彼女は手紙を読み切ると額に手を当てる。やられた、これではこちらは取れる行動が狭められてしまう。ただ手札を明かしたのでは無い、ほんの少しとはいえ正しく詳細な情報えさが与えれたのだそれに私達は食いついてしまった。最後まで手紙を読んでしまった時点で私と言う魚は釣り上げられたも同然である。彼の狙い通り人員を割いてまでボスであるバルツァー辺境伯に報告に行かねばらならない。


「やられちゃった……」


彼女は手に持つ手紙をもう1度読み直す。今度はため息が出た。


しかも最後はちゃっかり挑戦状叩きつけてるじゃない……。間者に会いに来いって普通言うの?狙われてる対象が?いやいやいや、無い無い。普通そんな事する筈が無い。大丈夫なのこの人?


何故か心配になった彼女はそんな事を考える。とはいえ指示は出す。


「ルッツ、貴方はこの手紙を伯爵に。ユイ、貴女は私と一緒に今すぐノアニールの首都に向かいます」

「副たいちょー、オレは?」

「貴方は罰で居残りです」

「え〜」

「……チッ」

「い、イエス、マイロード」

「なら良いです。では」


日頃しない小さな舌打ちでジャックを黙らせると彼女は行動に移す。だがそれを遥か遠くの『城壁』から見られるていた事には流石に彼女も気付かなかった。



◆◇◆◇◆◇◆



「こちら空木、目標二手に別れて動き出しました。片方がおそらく男で1、もう片方が女で2です」

『こちら神木、こっちでも確認した。女(暫定)の方は頼む』

「了解」


彼の獲物であるSVD-J、ドラグノフ狙撃銃ライフルのスコープを覗きつつ空木は通信を行う。彼がいるのは目標から580メートル離れた南門城壁上、確実に向こうにはバレない位置である。


「ふぅん、中々の速さだけどやっぱ狙撃とかに対応出来るような動きじゃないな。……当たり前だけど」


空木はそう考えるが一応これは間違いである。実際は弓とかによる狙撃はある為それに対する手段は彼女達には無意識にできるレベルである、があくまで相手が弓なのであって狙撃銃ではない為彼にとっては無いに等しいが。

その間に彼女達は城門の衛兵詰め所に辿り着く、2人バラバラ、1人ずつ抜けるらしい。一応隊長のお願いでバレない程度に抜けやすい様にしてもらっていた為に2人はあっさりと抜けられた。


「こちら空木、目標2名が城門を抜けた。どうやら商人の馬車に相乗りさせて貰うらしい、衛兵に確認したところその馬車は首都行きらしい」

『こちら大空、ご苦労様。任務を終了してくれて構わないよ、後ミーシャさんが探してたぞ」

「マジっすか?了解、帰還します」

『こちら神木、ユミィさんの協力のお陰で最後まで見届けられた。お前の読み通りだな』

『さあ、分からないよ。ともかく神木もご苦労様、手伝ってくれたユミィさんにも宜しく』

『了解』

『んじゃ解散、ご苦労様でした』

「お疲れ様でした」


通信が切れる。空木はドラグノフを背中に背負うと城壁から立ち上がった。


「うし、んじゃミーシャさんに会いに行くか。待ってろよ猫耳よ‼︎」


空木は走る、なお出会い頭に猫族のミーシャさんの猫耳に空木が飛び付いて制裁を受ける事となったのだが、それは別の話。



プチ人物紹介

・ミーシャさん

獣人であり猫族の女性、大空達に救出されてからは彼らに積極的に関わる様になり今はギルム駐屯基地でサラ揮下のメイド部隊の一員となっている。お歳は23歳、歳が近くやたらと関わってくる空木に興味を寄せている。性格は好奇心が強くツンデレ、耳を触られるのは空木ならちょっと嬉しい、でも過剰反応してしまう、だからツンデレ。

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