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アルヌスの旭日旗  作者: 神倉 棐
第1章 自衛隊彼の地にて戦えり【ギルム編】
18/27

旭基地帰投

いつの間にか総評価200……、感謝の極みです。では投下します。


ギルムへとやって来たのは陸自輸送機であるCH-47JAチヌーク1機と護衛のAH-64Dアパッチ・ロングボウ2機だった。てっきり海自いずも護衛艦に配備されているMCH-101、呼称しらせかと思っていたが違ったらしい。


「……あれ?あのチヌーク陸自の迷彩じゃね?」


海自にはチヌークが配備されていない筈だし更に迷彩が陸自のものである事に俺は首を傾げる。アパッチの方は間違いなく海自の迷彩なのだがこれはどこかおかしい。

そんな事を考えている内にチヌークは着陸し後部開閉扉を開ける。中から10人程の陸自の隊員が降りてきた。


「出迎え感謝します。交渉役兼第七小隊指揮官代理として来ました、日向ひなた はじめ特務一陸尉、二等陸尉です」

「任務ご苦労様です。第七小隊隊長、大空 翼二等陸尉です、こちらこそよろしく」


2人は固く握手を交わす。


「自分達以外に陸上自衛隊の人間がいるとは思ってもみませんでした」

「でしょうね……、こちらは急遽第13護衛艦群に同伴する事になり予定になかったものですから」

「それで陸自のCH-47JAチヌークが?」

「ええ、他に10式戦車3両、90式戦車2両の戦車隊付きですよ」


日向特務一尉の答えに大空はずっこけそうになる。まさか戦車まで異世界に転移しているとは露ほども考えていなかったのだ。


「……中東エリア行きの為の保険か……、にしては過剰では無いか?」

「……近年中東は物騒ですからね、極秘でも送って安全は確保しておきたかったのでしょう。証拠に……」


日向は自分の連れてきた隊員達を見る、一様には言え無いが全員若い。


「……戦死する可能性を考えて独り身ばかりの特別編成の混成部隊です。自分は26ですが戦車隊の隊員以外は下手したらかなり歳下ですよ」

「それは下手したら10式戦車が捨て石じゃないか……いや、最近正式採用が決まりつつある20式戦車が有るか……」

「はい、戦車が時代遅れになりつつあった近年にまだなりきっていない中東エリアに投入して元は取っておきたいと言ったところでしょう。それ以前にとんでもない所に投入されたみたいですが」

「言えてるよ、銃すらないのに戦車とか……。完全なチートだよ……、問題は弾薬だが」

「それです、一応補給艦には多めに積載されていますが大規模戦が3度あればすぐ尽きます」


いくらチート気味な武器を保有していても弾薬たまが無ければ意味がない。更に人の命を軽く扱い過ぎではないか、ほとんどが防大卒の幹部か高校出の若い隊員ばかりであり経験があまり積んだ事のない実質新兵ばかりである。


「……最近、自衛隊も世知辛くなってきたな……」

「……元からですよ」


若い2人の指揮官は揃って大きなため息は吐く。仕事も任務もしがらみも山積みでまさに過労死してしまいそうだ。


「……そうだ、大空二尉。旭基地帰還に使うヘリはコイツですが燃料補給等に半時間程かかります。それまでに顔合わせ程度は向こうの方々とさせていただいて構いませんか?」

「良いですよ。行きましょう」


日向のお願いに大空は快く答える。大空は彼を連れてヘリ達に驚いている異世界の交渉相手、シリウス辺境伯以下4人の元に連れて行く。


「みなさん、少し良いですか?」

「すごい……これが『鉄の飛竜』……想像以上だ……」

「……私達の空軍より精強とおっしゃられた意味が分かりますね……。しかも沢山人が降りてきましたよ……」

「さすが……殿下の引きずり込んだ『化け物』ね……、想像を超えてくるわ……」

「これが我々の戦略に使えれば……やれる‼︎あの要塞もあの堅城もいとも簡単に陥せるぞ‼︎」

「……あの聞いてます?」

「「「「はっ⁉︎」」」」


色々と思考に浸っていたであろう4人が大空の言葉に現実にいきなり引き戻される。


「大丈夫ですかみなさん?」

「問題ありません、大丈夫です。……ちょっと取り乱しましたが」


ちょっとなのか?あれ……。


見事大空と日向の心の声がシンクロする。


「ともかく、ご紹介します。我々自衛隊交渉役の日向特務一尉、創特務大尉とお呼びください」

「大空二尉にご紹介預かりました、日向創特務一尉です。今回ノアニール・マグナと交渉が可能であることに感謝します」

「こちらこそ感謝します。私はこの辺境領で伯爵を務めさせていただいております、クロノ・ヴァン・シリウス辺境伯です。どうぞお見知りおきを」

「ええ、願わくばそれがいつまでも続けば良いのですがね」

「無論、そうさせて頂きます」


2人はガッシリと手を合わせ握手する。……なんか日向性格変わってない?こんなグイグイ行く奴だったのか?

が、何故か気が合ったらしい。2人共握手した後にこやかに話を始めていた。いやマジで、相手の腹を探るとかのじゃなくて完全に同士認定したかの様に仲が良くなっている。


「なんじゃこりゃ……」


とにかく付いて行けない大空は若干引き気味でそう呟く、もう帰って良いですか?

帰るって言ってなんだが結局旭基地に帰投する事になるんだし日本もないので帰る場所すらないのだが一旦放置だ。


ツンツン


「ん?アリサさん、どうしました?」


隣に来たアリサさんが大空の肘あたりを突く。


「少しお話が」

「なんでしょう?」


彼女は若干背伸びをしつつ大空の耳に口元を寄せる。


「ごにょごにょ」

「…………それは、駄目でしょう。同盟未締結の人間をヘリに乗せるのは」

「どうしても駄目ですか?」

「使者ならともかく近衛騎士団の団長となると……駄目でしょう。軍人ですから」


アリサが大空の耳に囁いたのは自分だけでもチヌークに乗せて欲しいとのことだった。が言った通り同盟すら結んでいない国の軍人を技術の塊であるヘリにやすやすとは乗せられない、それ以前に乗せるとしてもここの領主であるシリウス伯で近衛騎士団の団長を乗せるのは少々おかしいくないだろうか?薄々感じていたがアリサさんは好奇心旺盛と言うか、欲に忠実と言うかとにかく夢中になると周りが見えなくなるらしい。団長とはいえ騎士が伯爵貴族を差し置いてそんな事して大丈夫なのだろうか?まあ彼女がシリウス伯に負けない位高位の貴族出なら問題無いかもしれないが、


「残念です……、乗ってみたかったなぁ……」

「う……」


しょんぼり落ち込む彼女を見てなんとも居た堪れない気分になるが我慢だ、ここで折れたら絶対にこれから面倒な事になる。


「…………」


チラッ、チラッ、チラッ


「…………」


チラッ、チラッ、チラッ


「……そんなに物欲しげにちらちら見られても駄目なものは駄目ですし無理なものは無理ですよ」


ズーン


折れなかった事は折れなかった、だが何故だろう?正しい事をしたはずなのに何か大切なモノを失ってしまった様なこの感覚は……?



◆◇◆◇◆◇◆



半時間後、


「大空ニ尉、準備が整いました。いつでも離陸可能です」

「分かった。では日向特務一尉、交渉及び第7小隊をよろしくお願いします」

「了解です。第7小隊指揮官代理、務めさせていただくます」


大空と日向は右手を額に当て敬礼する。


「ではシリウス伯、ツルッペルン女伯、アリサ団長、エレン団長、失礼しました」


大空は頭を下げ礼をした。チヌークの機関が始動しプロペラが回転し始め風を生む。


「では、行ってきます」


ヘリに乗り込むと開閉口のハッチが閉まり始める、その時俺は見た。


「総員敬礼」


第7小隊に第1小隊、追加部隊、雪ノ下に日立達が敬礼した瞬間を。


ハッチが完全に閉まり機体が浮き上がる、窓際に座ると俺は彼らに敬礼を返した。


「……いい部下を持ったみたいだな」


大空の小さなそんな呟きはプロペラの空気を叩く音に掻き消され、誰に届く事もなかった。



◆◇◆◇◆◇◆



『間も無く当機は旭基地に到着します。ニ尉は着陸後、後部開閉口より降りてください』

「了解した、引き続き頼む」


チヌークは大空を乗せ西に飛ぶ、太陽が南の空に昇り切った頃彼方に海が見え始める。と同時にそこに浮かぶ幾つもの灰色の護衛艦ふねが目に映り始めた。


『こちらアカギ管制塔、CH-47JAチヌークどうぞ』

「こちらCH-47JAチヌーク、これより基地に帰投する。着陸地点誘導頼む」

『了解、軍用滑走路併設ヘリポートへ。なお現在離着陸機は無い』

「目視した、これより着陸態勢に入る」


アカギ管制官とパイロットのやりとりを聞きながら大空は窓の外を眺める。旭海上自衛隊並びに航空自衛隊基地、約3,000m四方の敷地に軍港、滑走路、集積所、兵舎、本部並びに変電施設等が碁盤状に詰め込まれ周りはフェンスや有刺鉄線、対人赤外線レーザーに塹壕、土塁が作り上げられ堅固な要塞となっている。

その間にも彼を乗せたチヌークは軍用滑走路ヘリポート直上で静止するとゆっくりと降下していった。


「大体……1時間半位か?短い様で長かったな」


地面に車輪タイヤが付く揺れがし後部開閉口が開く。


「到着です。大空二等陸尉、あと管制塔から連絡『本部に来るように』との事です」

「了解、本部だな?」

「はい、ちなみに滑走路ここから中央部大通りに出て突き当たりすぐですので迷わないかと」

「分かった、ありがとう。いいフライトだった」


大空は片手を挙げながらチヌークから降りる。手荷物は無いに等しいので手ぶらだ。まだ慣性で回転しているプロペラの風圧で服と髪がはためく。強い風で目を1度瞑り開くと前には1人の自衛官が立っていた。


「ようこそ旭基地へ、大空二等陸尉」

「久しぶりだな、神ヶ浜。いや神ヶ浜三等海尉」


目の前にいたのは防大時代に同じ教官の元訓練に励んだ同期かつ、神木に負け無いぐらい腐れ縁の強い神ヶ浜かみがはま 伊奈帆いなほだった。


「相変わらず、お前はどこ行ってもやらかしてばっかだな」

「悪うござんした、お前には言われたくないがな。共犯者」

「なにがだ、主犯者」


昔付けあったあだ名コードネームを言い合い2人は笑い合う。


「共犯者なんて懐かしいあだ名だな、あれから何年ぶりだ?」

「大体7年ぶりだな、……あの時は若かった」

「若かったって……まだ26だぞ?」

「されど26だよ、互いに未婚の独身じゃないか。……他の同期は結婚してる奴の方が多いよ」

「ぐうっ……それを言われるとキツイな。まあごもっともだが、お前はできたと思うだよな……雪ノ下と」


神ヶ浜はため息を吐きつつそうぼやく、最後の方は小さかったのも相まってため息で隠れて大空には聞こえなかった。


「んで、まあ……話は変わるが今回の件についてだが」

「……クビじゃ無いよな?」

「んな訳ないだろ。少なくとも免職は無い、ただでさえ人手が足りないんだ。減俸か降格かどっちかと第7小隊隊長の任から外される位だ」

「そう……か」


第7小隊の部下達の顔が頭をよぎる。


「どうした、大空」

「いや、な。部下達がな」

「心配か?気にすんな、多分大丈夫だ」

「?」

「さて、行くぞ。会議まで後10分だ、走るぞ」


何か引っかかる事を言うと神ヶ浜は大空を置いて走り出す。あまりの唐突さに彼は付いて行けなかった。


「ちょっ⁉︎ちょっと待て‼︎待たんかコラ‼︎」


慌てて大空も走り出す。今日も旭基地は平和だった。


また遅れるかもしれません。ご容赦下さい。

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