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アルヌスの旭日旗  作者: 神倉 棐
第1章 自衛隊彼の地にて戦えり【ギルム編】
17/27

雪ノ下の手記

長らくお待たせいたしました。では投下します、大変長いのでご注意下さい。


さて、では私が見た大空君の行動やあった事ををここに書き残しておこうと思う。後で報告書に書く時に役に立つだろうし、

あと内容についてだが始まりが1日目からで最後は6日目までだ。ほとんど戦後処理についてで書く必要も面白くないので幾つか抜粋するがそれでも長くはなりそうだ。


彼のやった事で特筆すべきと言えるのは以下3つだろう。簡単に言えば『死体処理』と『瓦礫撤去』、あと『辺境伯との交渉』についてである。



◆◇◆◇◆◇◆



……1日目


「ふあぁぁ……、眠い」

「大空君寝てないですもんね」

「まあね、仮眠で3時間寝ただけとはいえ朝から動きっぱなしだからねぇ……。徹夜した人もいるからまだマシなんだろうけど……」


大空はそこまで言うと再び大きな欠伸をする。


「ふあぁぁ……、やっぱり眠い」

「あはは……、だよね」


雪ノ下は苦笑いを零す。彼女は出撃前にアカギでしっかり睡眠はとってあった為そんなに眠くはなかったが仮眠だけの大空は普通に眠いのだった。


「おーい、大空」

「ん、神木。護衛は?」

「やっとるわ、でどうしてここに?」

「補給隊の人との話し合い」

「なるほど、って雪ノ下じゃないか」


神木は彼女を見て少し驚く。まあそうだろう、実際会うのは久しぶりだしあまり親交があった訳ではないからだ。


「懐かしいな、久しぶり雪ノ下」

「ええ、お久しぶり神木君」


2人は握手する。と背後に2人の女性がいるのが目に映った。


「ツバサ中尉、ここでおられたのですね。あら?こちらの方は?」

「こちらは雪ノ下楓三等空尉、分かりやすく言えば三尉です。で彼女は第1近衛騎士団団長のアリサさんです」


大空が雪ノ下を紹介しその後彼女に雪ノ下を紹介する。


「初めまして、私は第1近衛騎士団で団長を務めさせて頂いておりますアリサと申します」

「こちらこそ初めまして、日本航空自衛隊千歳基地所属の雪ノ下楓三等空尉です。カエデとお呼びください」

「分かりましたカエデ少尉」


2人は手を合わせ握手をする。


「ところでどうしてアリサさんはここに?」

「今後についての話し合いと軍議の為です、おそらくもうここへの再侵攻は無いでしょうがしない訳にはいかないので」

「なるほど」


アリサの言葉に大空は頷く。再侵攻の可能性も捨て切れない上城門も大破している、今まで通りとはいかないだろう。また次のが来るなら確実に自衛隊に頼り切る事にもなるからだ。


「神木」

「なんだ?」

「今余裕ある?」

「無い事は無いが……どうした?」

「軍議には俺の代わりに出てくれ。一旦俺は部下の方を見回ってくる」

「……仕方ないな、分かった。今部隊は南と東に半々ずつだ、先に南から行く事をオススメする」


神木は1度ため息を吐いてから情報を大空に伝える。


「悪いな、礼は言うよ。サンキュー」

「へいへい、行ってこい」

「という事で失礼させて頂きますアリサさん」

「分かりました、部下に対する見回りや配慮は大切ですからね。問題はありません」

「ありがとうございます。行きましょうか雪ノ下さん」

「ええ、監視任務をしっかり果たさせてもらいます」


大空は敬礼すると歩き出し、私も遅れないよう早足で歩く。こうして私達は館をあとにした。



◆◇◆◇◆◇◆



南門、

まず大空が向かったのは神木に勧められた通り部隊の半分がいる南門だった。


「とっつぁん、状況は?」

「隊長、南門での味方の負傷者は計57人、内重傷者は9人で他は軽傷です。なお我々自衛隊には軽傷者が3名、いずれも加熱した銃身に触れた際の火傷と軽傷です」

「敵は?」

「え〜、現在集計中ですがおよそ死者1623名、重傷者563名、軽傷者が397名です。あと捕虜が23名で……全員10代前後です」

「……そうか」

「捕虜によりますと南門を襲撃した人数は約3,000、つまり3分の2が死亡したという事になります」

「壊滅……だな、残りは?」

「逃亡しました。おそらく撤退したのかと」


とっつぁんと呼ばれた男性の報告に大空は目を閉じる。


「遺体はどうすると?」

「近くの丘の1箇所に集め纏めて焼いてから埋めるとの事です。今燃えない金属などの防具や武具を回収している最中です」

「分かった……、他は?」

「壁外で遺体の処理を行っています、無理な者は捕虜の手当てを」


彼はレンガの積み上げられた城壁を見る。いや、おそらく彼が見たのは壁では無く向こう側にいる隊員達だろう。


「『無理するな』とだけ言っといてくれ。東門も見てくる」

「くくくっ」

「どうしたとっつぁん?」


突然笑い出した彼に大空は疑問符を頭上にあげる。


「隊長に『無理するな』と言われても説得力がありませんよ」

「……一言多いよ」

「事実ですから」

「ぐう」


見事に論破され大空は頭を抱える、雪ノ下はそんな彼を見て「変わらないな」と感想を抱く。


「と、ともかく言っといてくれ。頼みましたからねとっつぁん」

「了解です。女性の方も我々の隊長をよろしくお願いします」

「は、はい!全身全霊をかけてさせて頂きます‼︎」


何故か結婚する嫁が夫の親に挨拶したみたいになったがどうしてだろう?しかも結婚なんて……。

私の顔が赤くなりボフッと爆発しそうなる。大空は見ていなかったが向かい合っていた『とっつぁん』と呼ばれていた男性には見られて目を丸くされていた。恥ずかしい……。

そんな私に大空は気付くことなく「行こうか」と振り返る、この時ばかりは彼の鈍さに私は感謝する事になった。



◆◇◆◇◆◇◆



東門

続いてやって来たのは残り半分の部隊がいる東門だった。こちらは城壁が突破されているので随分内側にも所々血の跡が残っている。


「あ、ツバサさん」

「アシュリード君じゃないか、今何を?」

「今は人手が足りていないとの事で瓦礫の撤去作業のお手伝いをしています。……遺体の処理はさせられないとのことなんで」

「だろうね、俺も学生の君達にはできればさせたくないさ。血の匂いはまだしも死の匂いは絶対にね」

「死の匂い?」

「死の匂いは人の死が、血の匂いが凝縮した匂いだからね。まだ学生の君達には染み着かせたくはないよ」


大空の言葉にアシュリードと呼ばれた彼にそっくりな少年は「そうですか……」と答える。


「あ、そんな事より紹介するよ。こちらが空自パイロットの雪ノ下楓三尉、でこっちの俺にそっくりな子はアシュリード、マグナの学生さんだよ」

「初めまして、雪ノ下楓と申します」

「こちらこそカエデさん、僕はアシュリードと申します。ツバサ殿とはそっくりですが生き別れの兄弟とかではないので気にしないで下さい」

「分かったわ、確かにそっくり瓜二つね……」

「「みんなに言われます(よ)」」


大空とアシュリードのセリフが被る。少し可笑しくて思わず笑ってしまった、一方笑われた2人の顔は苦笑いである。


「ふふふ。ごめんなさい、可笑しくて」

「……別にいいですよ」

「ああ、俺もだ」


雪ノ下の笑いが収まった後、大空はアシュリードに対し口を開く。


「ところで宮部を知らないか?報告を聞きに来たんだが……」

「大空隊長、ここにいましたか」

「宮部、丁度良い時に来たな」


本当に丁度良いタイミングで宮部が現れる。そう言われた宮部の方は複雑な顔をしていた。


「まあ、2人は話しておいてくれて良いよ。血生臭い話しになるから」

「分かりました」

「分かったわ」

「ありがとう、宮部、こっちへ」

「了解、では……」


大空と宮部は雪ノ下達から少し離れる。時偶聞こえてくる単語からすると内容はこうだ。


敵戦死者

1279名

敵負傷者

935名

捕虜

127名


味方死者・負傷者

806名

一般市民負傷者

9名


敵方の損害は南門に劣らず壊滅的と言っていいだろう、だがその分こちら側の犠牲も多かった。建物も大量に損失し(空自のミサイル攻撃含む)騎士や兵士が多く亡くなってしまったのだ、今できるのは彼らに冥福を祈る事ぐらいだろう。そこに話が終わったのか大空が戻ってくる。


「おまたせ、報告は聞いたし今更会議に戻るのも変だから俺は瓦礫の撤去を手伝っていきます。雪ノ下さんはどうしますか?」


大空は手袋(グローブ)をはめ直しながら言う。もちろん私はこう答えた。


「あまり役立たないかもしれませんが手伝います。監視のついで、ですが」


大空と雪ノ下、アシュリードの3人はその後は黙々と作業を始める。結局終わったのは日暮れ頃でかなり良い汗を搔いたのでその日の夜はいとも簡単に夢の中に落ちたのだった。



◆◇◆◇◆◇◆



2日目

私と大空は今シリウス辺境伯の執務室の前にいる。昨日は忙しいだろう思いと来れなかった為まだマシになっているであろう今日に回したのだ。


コンコン


「失礼します。シリウス辺境伯、少しよろしいですか?」

「ツバサ殿ですか?どうぞ」

「では失礼します」


高価そうな重そうな扉を開き中に入る。執務室の中心には執務机が置かれておりその上には沢山の書類が積み上げられている。が、肝心のシリウス辺境伯がいない、返事はあったのでいるとは思うのだが……。


「ふう……、失礼しました。書類が多いもので」


まさかとは思ったがそのまさかでまるで物語かの様にシリウス辺境伯は書類に埋もれていたらしい。さすが異世界……と言うべきか?


「改めて我等が『英雄』殿、何かご用ですかな?」

「……やめてください、『英雄』なんて柄じゃないですよ」

「そうですかな?冒険者の間では『真紅』と、捕虜の間では『鮮血』、兵士の間では『英雄』と噂されていますがそれでも違うと?」

「マジか……」

「ええ、マジです」


異世界に来て僅か2週間で3つも異名を得る事になった大空に雪ノ下は同情する。


「あと、お連れの女性は領民の間では『黒髪の銀天女』と噂どころか崇拝されているそうですよ」


シリウス辺境伯の発言で同情どころではなくなってしまった。まさか雪ノ下まで異名が付くとは思ってもいなかったのだ。しかも崇拝されてるとか……、


大空と雪ノ下が恥ずかしさに悶えるのが収まるまでしばらくお待ち下さい。


「こほん、所で何か用があったのでは?」

「ええ、仮設駐屯基地を正規駐屯基地にしたいのと7日後のヘリの離着陸の為の許可を頂きに来ました」

「いいですよ、どちらも許可します」

「……いいんですか?即決しても?」

「構いませんよ、ギルムを救ってくれた恩人達に拒否することはできませんから。それに断っても利点は有りませんしね」


シリウス辺境伯は机の引き出しから1枚の紙切れを取出しサインする、それを大空に差し出した。


「?、これは?」

「今城壁内使っていない館の使用権の譲渡書です。少し中心街からは離れていますが手入れはされています、ご自由に使ってください」

「ありがとうございます」

「ヘリ…という物が離着陸できるかはわかりませんが庭は広かった筈です、そのあたりはお任せします」

「分かりました、最悪城壁外に着陸しますのでそれは構いませんか?」

「もちろんです。できれば私もそのヘリというのがどういったものか見てみたいですね」

「到着時にはお知らせします」

「それはうれしいですね。よろしくお願いします」

「では失礼します」


交渉というか談笑に近い会話が終わり大空と雪ノ下は執務室を後にする。その後自衛隊の隊員総出で引っ越し作業が行われるのだが色々あって書きたいのだかそれも書くと長くなるので割愛させてもらう。



◆◇◆◇◆◇◆



3日目

その日の朝は早かった。元から朝は早いのもあり6:00には目を覚ましていたがここに1つ問題が起きた。着替えが無かったのである。


「ど、どうしよう……」


昨夜メイドが服を洗ってくれるというので作業着と夏服の制服を渡したのだがそれがまだ帰って来ていなかったのだ。しかも昨夜は暑かったので今着ているのは下着のみ、これでは布団からすら出ることができない。


「あう……」


コンコン


「雪ノ下さん、起きてますか?」

「ちょっ、ちょっと待って」


とりあえず掛け布団を引き寄せ体を隠す、私は扉に隠れるように隙間を少し開け扉を開いた。


「あ、雪ノ下さん。おはようございます」

「お、おはよう」

「丁度良かった。はいコレ」


大空は扉の隙間から1つの籠を私に渡す。


「何ですかこれは?」

「服が完全に乾かなかったお詫びに新しい着替えを用意したそうだよ、ついでに何着か用意したからもらって欲しいとの事だよ」


籠を受け取り中を覗く、中には白いワンピースやブラウス、青いスカートが入っていた。どれも今の彼女にはありがたい物である。


「ありがとう、すぐに着替えるよ」

「分かった。着替え終わったら食堂に来てくれ、今日の打ち合わせがしたい」

「了解、それと……」

「それと?」

「ワンピースとスカート、どっちが良い?」


私の問いに大空は少し固まる、少しして彼は答えた。


「……スカートの方で」

「分かった。後でね」

「ああ」


私は扉を閉める。少し心踊らせながら私はブラウスに袖を通しスカートを履いて身だしなみを整えると早足で食堂へと向かうのだった。



…………

「……むう、やっぱり進展なしか」


あのまま雪ノ下が部屋に引き入れるか大空が勝手に入れば良かった(良くない)のだが、普通に大空はノックし雪ノ下が出てくるまでおとなしく待っていたので何も起こらなかった事に彼女は少々残念がる。大空がヘタレでなければ、雪ノ下が大胆であれば進展があったかもしれないが逆にあれば既にこんな事にはなっていない。


「あの……良いんですかフユ様?」

「良いのよイリスちゃん、わざと乾かないようにしてくれてありがとね」

「はあ……」


そう、日立はわざわざメイドであるイリスを抱き込んでまで今回の事態イベントを仕組んだ訳だがそれも失敗してしまったのである。


「さあどうしたものか……」

「はあ……良いのかな……これ」

「さあどうでしょうね?」

「ん?1人分声が『多い』?」

「ええ、だって私もいますから」

「……まさか」


2人はギリギリと音が鳴りそうな感じで恐る恐る後ろを振り返る。そこには額に青筋を立てながら微笑んだメイド長、シルビアがいた。もちろん、目は笑っていない。


「フユ様にイリス、一体何をやっているのですか?」

「「あ、あはははは………」」


あまりの迫力に2人の笑いも引きつっている。


「イリス、後で私の部屋に来なさい。フユ様、少々『お手伝い』をお願い頂けますか?できますよね?」


シルビアは極寒の笑みを浮かべながら2人に近づく。


「返事は?」

「「イエス、マム‼︎」」

「よろしい、再教育のしがいかありそうです」

「い、イヤァァァー……」

「タスケテー」


その日何故かメイド服を着た冬由と際どいメイド服を着たイリスが泣きながら仕事をしている姿が見られたが、その訳は当人達以外にはさっぱりわからなかった。



◆◇◆◇◆◇◆



4日目。

遂に東門から南東に約200程離れた小高い丘にこの地で起きた戦闘の死者達が安らかに眠る為の墓地である慰霊地が完成された。埋める為掘り返され土の露出した大地には沢山の花と一振りの剣が突き刺さっている。花は自衛隊の隊員達や街の人間、かつての同僚だった兵士や冒険者達が、この一振りの剣は大空の要求によりここに刺された。


『シリウス辺境伯、お願いがあります』

『何でしょうかツバサ殿?』

『今回の戦闘で亡くなった方々の墓地に慰霊の物を置かしてくれませんか?』

『慰霊の物ですか?』

『はい、別に慰霊碑を作れと言う訳では無いですが何か代わりの物を置いておきたいのです。彼等には安らかに眠って欲しいので』

『…………分かりました。では剣などどうでしょう?彼等がこの地で戦った証に丁度良いと思いますが?』

『良いと思います。正しかった間違っているではなく、国の為に戦って死んだ彼等はまさしく英雄です。そんな彼等にはぴったりだと思います』

『そうですね、では手配しておきます』

『ありがとうございますシリウス辺境伯』

『気にしないでください、お互い様です』


そういった一連の流れがありここにこの一振りがある。また刃にはこう彫り込まれていた。


『この剣を両国の英雄達に捧げる。安らかな眠りを願う』


と、



◆◇◆◇◆◇◆



6日目、追加人員派遣日当日。

午前10時23分頃、大空は『慰霊の剣の丘』にいた。ギルム攻防戦で死亡した両軍総員5276名が眠る丘には1本の剣が刺され沢山の花が添えられている。


「…………」


大空は何も言わない、私は彼の後ろに立ちその背中を眺めていた。

風が供えられた花と2人の髪と服を揺らす。この広大な慰霊の墓地が完成してから3日、大空は1日と欠かさずここに訪れていた。


「……大空君」


私の声は風に消え彼には届かない、がそれで良いと私は思う。この中にいるのは直接的、間接的に彼が殺した者が大半らしい、銃を撃ち、銃剣で斬り裂き、炎で焼き殺した。ここに埋まる大半の人間は大空自身が殺したか彼の作戦により死んだ者だ。

私も彼も剣に祈りを捧げる。死んだ者に敵も味方も無く、人の生きた証もその足跡も等しく重く大切だ。生き残った者として自分達は死んだ者に敬意を、意思を継がねばならない。


「……守るために、生きるために戦った誇り高き英霊達よ。貴方達の冥福と安寧、安らかな眠りを祈ります」


大空の呟き、決して大きくはないはずなのにそれは綺麗に彼女の耳に入ってきた。


バババババ…………


『……大空隊長、ヘリ到着まで残り5分です。着陸予定地にお越し下さい』

「了解した。今から向かう」


彼方から随分と久しぶりに聞くヘリのプロペラが空気を叩く音がする。異世界ここに来ておよそ2週間ぶりに聞いた自分達の世界で聞きなれたその音色に彼は少し遠い目をする。が、それは一瞬だった。本当に普通なら見逃してしまうぐらいの一瞬、それを私は偶然見ていた。


「行きましょうか、雪ノ下さん」

「はい、……喜んで」


歩き出した大空の背中を追いながら私は思う。彼は変わらない、私が彼を好きになった頃から少しも。だがその背中はあの時より大きく見え、瞳の奥の闇と光はより拮抗している。そんな彼を見て私は嬉しくもあり悲しくもあった。


……翼君、泣いたって良いんだよ?


悲しそうなのに、泣きそうなのに彼は涙を流さない。まるで自分が泣く事を『許されていない』とでもいうかの様に……。なら私が『許してあげたかった』、だが同時に『怖かった』のだ。『要らないと』、『放っておいてくれ』と拒絶されるのが。

彼女は胸の内の想いに辛くなる。それでも、彼女はそれを顔には出さずに彼に付いて行く。彼女のこの想いが解消されるのは……まだ先のことだった。

しばらく立て込んでいるのでこれからも投下が遅れる可能性があります。誠に勝手ながらご容赦下さい。

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