弐話
おねがいします。
次は、神託。やっと、俺らはSP持ちになれるのだ。
「久遠、お前は何のSPがいい?」
「やはり、呪文能力だなぁ。・・・その為の呪文も考えているんだぞ。特別に、聞かせてやろう。
審判が下されるとき・賢者は我の前から退くであろう・愚者は我の行く手阻むであろう・さればその時・我は愚者を滅ぼす者となる・古より信仰され・古より不在なる・神と呼ばれし存在に我は昇華する・
虚無の意識は虞を産み・深淵は怪物を膿む・心に根付きし悪意は・やがて原始の妖と化す・この一言で永遠に沈黙せよ、愚者・「告白」
・・・・・・・・・あのね、思うんだよ、俺。アニメとかで、呪文を登場人物が謂っていると、妙に格好良く見えるけど、あれってただ、登場人物が格好いいだけだからな・・・高二の男子がそんなこと謂っても、まったく格好良くねぇぞ。
神託についた。完璧な更地に、完璧な半球が置かれてある。その半球こそ、神託である。半径が確か、1111㎝・・・11.11㍍だったから、体積は・・・123・4321平方㍍か。(立方㍍です。)
そして俺らは、その中にはいる。
中は、干渉能力により空間が拡張されていて、もの凄く広い。冗談抜きで、東京ドームくらい。・・・その中央に、こんどは半径二㍍くらいの、これまた完璧な半球があった。その中で、SPとLDを授かるのだ。一分程度まつと、One遺産・・・じゃなくて、おねいさんが出てきた。なんだよ、One遺産って。・・・まあ、美人のおねいさんは、一つの遺産並みに貴重だけど。それはともかく、おねいさんが出てきて、こういった。
「では、これから二年十組のSP及びLD測定を始めます。」
*
同日1時間前 始龍堂FS室
「おい、ずいぶんと遅せぇじゃねぇか。」「は?たかが一分だぞ?」「えぇーーーーー。空空ちゃんを連れてこなかったのぉお。」「お前、四十のくせにロリコンでレズか。」「見た目は18くらいだと自負しているのだけどねぇ・・・」「あれ、じゃぁ炎々は?」「SHSグループ撲滅しにいってる。」「え?じゃあ、空空ちゃんを何で連れてこなかったの?」「お前を怖がってあいつ、付いてくるのを嫌がってたんだ。
お陰で俺が一人でこんな糞会議に出席することになった。」
クソッといい、瓶だけで一般人の生涯収入を軽く越すような酒を、黒い髪の男はラッパ飲みする。
「ああ、ボクのヴインテージウィスキー・・・・・・・・・」 そういい、その横に座る、秋葉原にいそうなパツキンの男が悲鳴を上げた。
「は?馬鹿げたこと言うなよ、金。これのどこが、ヴインテージウィスキーなんだよ。」
そういい、それを金と呼ばれた男性に投げつける黒。投げられる途中で、それが赤く発光したかと思うと、次の瞬間にはボドルが、一本300円もしなさそうな安物のワインに早変わりした。
「しょうがないじゃないですか。最近仕事がないせいで、まったく稼げないんですよ。・・・まぁ、いくら情報偽造をつかっても、ワインとヴインテージウィスキーをごまかす事はできませんか・・・。」
「え?!あれってワインだったの!私、ずっとヴインテージウィスキーだと思ってたのに・・・。」
「・・・俺にはわかっていたけど。」
「嘘つけ。」
・・・ここ、始龍堂は、超VIP達が邂逅する場所。その中でも、最高のFinal Stageともなれば、アメリカ大統領ですらうかうかと入ることのできぬ場所である。その中にいる、ということだけで一見馬鹿げた言動をしているこれらは、よほどの力を持った実力者だと分かる。
そう。こいつら・・・赤色の髪をしている、赤。黒色の髪をした、黒。白色の髪をした、白。青色の髪をした、青。金色の髪をした、金。人はかれらを・・・・・・災厄のWグループ、災害色とよんだ。
円卓に、五人がついた。そして、定例会議が始まる。
「で、オイ。アレはどうなった?」
「えー、無族系であるサクラが三億、同じくカラスが一億、同じくハトが二億。顧客である33など延べ100人以上が神族系が欲しいという要望が寄せられており、これだけのニーズがある神族系であれば競売で軽く550億を超えると思います。」
と、金が言うと、今まで黙ってきた青が口を出した。
「ウチでも一回神族を扱ったことがあっただろう。その時は、幾らで流せたんだ?」
「0です。」
「なぜ?」
「いや、初期段階では強奪費用が200億弱、予想取引価格が600億で、臨時メンバー500人以上を雇い神族系を獲るはずだったのですが、どこかの超変態腐女子がねぇえ。」
「ああ、アレか。「どこかの誰か」が作戦終了後に寄り道をし、まんまとトラップにひっかかって、「どこかの誰か」が可愛いという理由で抱きしめていた神族系もトラップにひっかかり、聖痕が解けて、その神族系の能力である「声」が屋敷中に響きわたり、借り物の500人の内四百九十人が死傷した挙げ句屋敷の警備を勤めていた「コア」が攻め込んできて、それを防ぐのに超貴重な100億以上する黒のお守りだった「トリノ聖骸布 超偽造製 10分の1」を使ってしまい、その隠蔽工作をするため俺が世界各国を飛び回り、何度も頭を下げて、しかもそれだけの犠牲を払ったけど、曰くつきの神族系は欲しくないとかいう理由でその神族系は売れず、結局4000億近く負債がたまった、あの事件か。」
「いやぁ、あれは酷かったですねぇ。「どこかの誰か」さんのせいで。」
「ああ、「どこかの誰か」さんのせいでな。」
「ねぇ、そんなに私を虐めて楽しいの?」
赤が、顔を引きつらせて言う。
「まあ、それはおいておいて、神族系獲得はかなり難しいですよ。99.9%以上が別チームに持ってかれてますもん。」
「強奪という手もあるっちゃああるが、赤がいる限り厳しいとみて間違いないな。」
「ええ。赤さんがいる限りね。」
「そうだな。」
「そうですね。」
赤は机に突っ伏した。
「まあ、それはどうでもいいとして、神族系獲得の方法だが、俺は、素人・・・今年の高2を狙おうと思っている。」
「なるほど。奇しくも今日は高2のSP及びLD測定の日だからな。」
「・・・まぁ、神族系が出る確率は0.001もないと思うけどね。・・・わかった。じゃあ、探索及び捕獲は私に任せてよ。」
「は?お前なんかに誰が任せるんだ、阿呆。」
「ウ・・・・・。いや、私の部下に任せるよ。大丈夫。」
「はぁぁぁぁ。馬鹿が。仕方ねぇ、百校だけ、お前の管轄にしてやる、ただし、灘泉高校、国土館、防衛蔵S以外だがなぁ?」
灘泉高校、国土館、防衛蔵Sは、日本でトップ3の高校である。いつも未知能力者を輩出することから、能力者生産工場とも言われている。
「・・・。はぁぃ。」
「赤さんが変に口をつっこまねば失敗はしないでしょうね。・・・まぁ、出る確率は0に等しいケド。」
「オーケー。では、これにて会議は終了する。今日は、赤が支払っておいてくれ。」
「いや、今日は俺が支払っといてやろう。」
「なんだ、今日は随分気前がいいじゃねぇか、白。」
そうして、赤、黒、金、青は三々五々に散っていった。
白は、領収書(そこには、天文学的な金額が記されていたがここでは割愛する)を渡した係員に何事か囁いた。するとその係員はうなずき、係の者に柩を運ばせてきた。
白は係員達を下がらせ、柩を開けた。その蓋にはロゼッタ・ストーンがうめこまれており、あちらこちらに難解な方程式や、複雑怪奇極まりない魔法陣が書かれている。中には、一人の衰弱しきった老人が、眠っていた。その上には、黒の持っている「超偽造製 トリノ聖骸布」ではなく、本物のトリノ聖骸布がかけられていた。これを裏ルートから買おうとすると、日本とアメリカの国家予算を遙かにしのぐ金額になるに違いない。いや、盗むにしても、大英博物館直属の部隊、世界最強と謳われし「UNKNOWN」の猛攻撃をくぐり抜けて、どうやれば盗むことができるのかーーー。
白は、その老人に静かに頭を垂れ、足早に始龍堂を去った。
*
「三十八番、山中 綺羅綺羅さーん」「三十九番、豪炎時 実篤さーん」
少しハスキーなボイスが飛ぶ。異端の連中は、「あの姉ちゃん、タイプだぜ。」とか馬鹿丸だしな事を言っているが、そんなことすら気にならないくらい俺は緊張していた。(俺は四十三番)あまりに緊張していたので、エ・・・ゲフンゲフン。「健全な男子が読むごく健全な写真いり小説」を回し読みしていても、内容が頭に入らないくらい緊張していた。いつもなら、水を吸い込むスポンジのごとくその知識を吸収しているのに・・・!!
ちなみに、今発覚している珍しいSPといえば、華が覚醒能力、田中 一と双璧をなす、第八十六代異端審議会十二支柱総司令官総司令部総務室室長、机代 新君が変化能力である。(これって、アノヒトに化けたら体の部分も再現できるのかなぁ、と悩んでいた。誰だよ、アノヒトって。)・・・まぁ、そんなことはどうでもよくて。大事なのは、俺だ。
「四十番、神置 悠真さーん。」
とうとう、俺の番が来た。
*
中にはいると、少し目眩がした。高一の時の先生の話しによると、どうも内部と外部の次元が少しずれているらしい。そして、もう一回ドアを開けた。するとそこには、ナイスバディな、オレンジ色の髪をした二十代前半のおねいさんがいた。・・・うん、机代がいってたアノヒトって、間違いなくこの人だ。
「では、椅子にお座り下さい。」
ネームプレートによると、橘 夕見さんが俺に声をかけた。
「では、これからSP及びLD測定を始めます。楽成高校二年生、十組四十番、神置 悠真さんで間違いはありませんか?」
「はい。」
机の端に座る俺と橘さん。机の上には、筆記用具と羊皮紙、謎の液体が入ったビーカーがあった。
「では、これから始めます。頭をこちらへと寄せて下さい。」
エッ、まさか膝枕させてくれんじゃないのかな!
「では、髪の毛を一本貰います。」
オイオイ、一本だけだぜ?余分に切って、その髪をオモチカエリすんなよ?
「そして、その髪をこの中にいれます。」
そうすると、オイラとお前の相性が分かるってのかい?
「そうして、このビーカーの中にこの羊皮紙を入れると、SPとLDが測定できます。」
俺の回想なんて露とも知らずに、真面目に事務を執り行う橘さん。
「・・・・・・はい、SPとLDの結果が出たようです。」
そして、俺は橘さんの差し出してくれた羊皮紙を見る。そこには・・・。
神置 悠真 SP 神族系使徒能力
LD 2―非紋の為使用不可能―0
と、書かれてあった。ふーーーーーーん。
「「ってえぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇ!!!!」」
橘さんも、一緒に叫んだ。
「使徒能力?!マジで?!あの、百万分の一の確率の?!しかも、その内の五百分の一の確率の神族系?!なのに何故非紋?!使徒能力なのに?!」
「・・・ッ!!!これは、誉めれば良いのでしょうか、慰めるべきなのでしょうか・・・?!」
よし、いったん落ち着こう俺。いったん落ち着こう俺。いったん落ち着こう俺。いったん落ち着こう俺。いったん落ち着こう俺。いったん落ち着こう俺。いったん落ち着こう俺。いったん落ち着こう俺。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだ、深呼吸しよう。いっせぃのうで、
「すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。すうーはぁ。」
取り乱している女医と、謎の呼吸法を行う少年。人は、これをカオスと呼ぶ。・・・まぁ、謎の呼吸法も以外と効き目はあったようで、大分落ち着いた。
「謎だよ・・・。」
そういい、俺が出ていこうとすると、橘さんがなぜか俺の袖を掴んだ。・・・オイオイ、まさか勢いに乗って告白しちゃうのかぃ、ベイベェ?
「あの・・・すいません、ちょっと、あなたがとてもレアな人材ですから・・・。血液検査、させていただきませんか?」
そういい、手に「金一封」とかかれた封筒を握らしてきた。なぜか、俺は泣きたくなってきた。
ちなみに、血液検査は血を抜かれることと、なんかを体の中に入れるくらいだった。
*
神託ドームをでると、異端審議会の連中が俺を取り囲んだ。
「オイ、ずいぶんと長ぇ時間神託の中にいたよなぁ?」
「まさか、手出してんじゃねぇよなぁ?アノヒトは俺の女だってのによぉ?」
「ヘンな事してたんかおらぁ?」
追っ払うのもめんどくせぇなぁ・・・。
「説明してやるよ。これが、俺の、あの中での、成果だ!」
この手の連中は馬鹿だから、口で説明しても分かるまい。じゃあ、実物を見せたほうが得だ。
「Apostie Descent Of Rokyupits」
すると、いきなり神託ドームが崩れ、月食がおこり、人は空に舞い、鎮魂歌が響きわたった。地は割れ、空は裂け、4次元が絡み合う・・・・・・ことなく、ただ単に俺の手に、やけに重いのが、乗っただけだった。その物体とは、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
裸 の 少 女 だ っ た。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「え・・・?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
一同絶句。そのあと、俺の頭・・・いや、みんなの頭にやばい誤解の方程式が浮かんだ。
「秘密の部屋で二人っきり」+「なにかしらの行動」+「この結果を見てくれ、」=「裸の少女」
「エチョとまテオニいサん、コれセツめイシテよォ」
「殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺。」
「■■■■して、■■を■■してほしかったのか、そうか。なら、言えば良かったのに。何で俺を怒らせるようなことをするのかな?まさか、■■■■に■■■■を■■で■■■が■■■■■■■■■■して、■■■■■■■■■■■■■■■■■■になりたかったのか、そうか。」
「逃げるぞ!!!」
俺は少女を抱きかかえたまま、死ぬ気で走る。しかし、あいつらは歩いて追ってくる。・・・なのに、距離が全く離せない。・・・あいつら、あまりの羨ましさに狂戦士化しやがったな!
(狂戦士化とは、異端審議会メンバーの特殊能力。あまりに羨ましさが溜まると、脳内麻薬が正常時の10000倍以上分泌され、ただでさえオカシイ頭がさらにオカシクなるという奇病。基礎体力値は通常の10倍になる。)
結局、寮の裏路地に逃げ込む事で事なきを得た。
ありがとうございました。