メカハチ公物語~ロボットとオットット外伝~
静まるメガ・Tokyoドーム
誰もが今、ジャッジから叫ばれる勝者の名前を待っている
総合格闘技ヘビー級タイトルマッチ
チャンピオン・アボガード山下(Kouchi)(72歳)
VS
挑戦者・ミバエワ・ハードワックス(USA)(24歳)
山下の人生で判定などなかった
チャンピオンになったのは16歳の時
そして92戦92KO無敗
この93戦目にして初めての判定だった
すぅ~!っと息を吸い込む審判
そして.....
「勝者!!ミバエワ・ハードワックス!!!」
爆発音かと思うほど観客が叫ぶ
この瞬間アボガード・山下の快進撃がストップした
ミバエワはすぐさまスタッフと喜びを分かち合う
山下は左手を右胸に起き、目を瞑りながら上を見上げる
右胸には「納豆ご飯」と彫られている
インタビューラーがリング上で新チャンピオンのミバエワに勝利者インタビューをする
観客の声援は止まない
勝利者インタビューが終わると、敗者インタビューがリング上でも行われた
観客は泣きながら山下コールをする
「お疲れ様でした!アボガード・山下選手!」
「ファンの皆様すみませんでした!そして、新・チャンピオンにおめでとうと言いたい!」
っと言って新・チャンピオンに握手をしに行く山下
観客の声援がさらにでかくなる
山下はニコリと笑って
「ヘイッ!ニューチャンプ!」
「ニホンゴ、チョット、ワカリマス、ナゼナラ、アナタノコト、アコガレテマシタ!ダカラ、ベンキョウ、シマシタ!」
「そうか!そうか!なら納豆ご飯Loveかい?」
「No!!アレハクソ!!」
その瞬間山下は新・チャンピオンにチョップをした
そして、新・チャンピオンは気絶し、泡を吹いた
前代未聞の試合後KOとなった
会場にいるすべてが静まり返る
山下はリング中央に戻り、インタビューラーのマイクを奪い取る
「みなさま重大なお知らせがあります!」
皆、黙って山下を見る
「私はベルトを返上します!!」
全員開いた口が塞がらなかった
---記者会見室---
無数のカメラのフラッシュがアボガード・山下に浴びせられる
「山下選手!今日の敗因をお願いします!」
「そうですね、敗因はよくわかりません!私は全力で試合をしたので!それで負けた!イコールそれは、チャンピオンが強かった!ただそれだけです!」
「しかし、試合後にチョップでKOなされてますよね?」
「あれは試合ではなく殺すつもりでやりました!ヌハハハハハッ!!!」
一瞬沈黙する記者達
一人笑うアボガード・山下
「では、あのチョップを試合でださなかったのはなぜですか?」
「そんなの簡単です!試合中チャンピオンは納豆ご飯をバカにしなかった!ただそれだけですよ!」
また沈黙する記者達
「リベンジは考えてますか?」
「考えてません!今日を持って引退とさせて頂きます!」
ザワザワし始める記者達
「そうですか!今後の活動などお聞かせください!」
「そうですね.....外国を旅したい!」
「例えば?どこへ行きたいですか?」
「もちろん!Osaka!くぅ~!!納豆ご飯が食べたいです!なんせ私は梅おにぎりが大好きですからね!!」
また沈黙する記者達
「そ、そうですか!今日はお疲れ様でした!最後に一言お願いします!」
「早くKouchiに行きたい!」
ニコリと笑うアボガード・山下以外は全て意味不明の状況になっていた
( ;∀;)゜(゜´Д`゜)゜
総合格闘技界の歴史に残る一戦が終わってから数年の月日が流れたある日
Kouchiの闘犬場で一匹の横綱が試合中大きな怪我を負った
横綱の名はハチ
ハチは怪我を負いながらもその試合には勝った
しかし、現役続行は難しいとされたのだ
そして怪我した左前足は切断を余儀なくされ、負傷した右目も手術しなければ失明の危機
だが、ハチのオーナーは手術を拒否
用はハチの事を金の道具としか見ていなかった最低人間だったのだ
しかもそのオーナーはあろう事かハチを安楽死させよとした
だが、ここで和服に身を包んだある一人のお爺さんが言った
「ワシがハチを引き取ろう」
そのお爺さんはハチが試合で負傷して切断を余儀なくされた足には機械の足を取り付け、負傷している箇所全ての治療を行うと言ったのだ
もちろんお爺さんがすべてお金を出すとも言った
しかし、周りの人達は止める
なにせTOSA犬だ
闘犬の為に生まれた犬
危険極まりない
だが、お爺さんは引き取るの一点張り
お爺さんの気合いに周りのみんなも折れ、お爺さんはハチを引き取ることになった
そして、引渡し当日
係員に連れられ外のに出るハチ
手術を早急に行わなかった為、目も機械化された
左前足の機械の足、右目も機械の目になってしまったハチ
すると、一台のタクシーが係員とハチの前に停車する
和服のお爺さんが杖を付きながら降りてきた
ハチはお爺さんを見ると闘争心剥き出しになった
そのハチの様子を見たお爺さんがハチを連れてきた係員に......
「お主、ハチの首輪を外せ!」
まったく意味がわからない係員
「お主、もう一度言う!ハチの首輪を外せ!」
「し、しかし!危険です!何をされようと言うのですか?」
「今から戦うのじゃ!試合じゃ!どっちが強いか、誰が飼い主なのかはっきりさせないといけない!」
係員が戸惑っていると、お爺さんは和服をスルスルと脱ぎ始めたのだった
フンドシ姿のお爺さん
係員は驚く
そして、係員は気がついた
鍛え上げられた肉体
右胸には刺青で「納豆ご飯」
フンドシ一枚で幾千もの試合に勝利し続けた総合格闘技界のレジェンド、納豆ご飯をこよなく愛する総合格闘技、元・ヘビー級チャンピオン
『アボガード・山下』
そう、あのアボガード・山下が係員の前に立っていた
日本人なら誰もが知っているチャンピオン
数々の伝説を残し、勝ち続けたチャンピオン
初のタイトルマッチ、USAで行われた試合前の会見でただ一言
「納豆ご飯!」
そう言って記者会見を無理やり終わらせ、1ラウンドでKO勝ちした試合後のインタビューで
「キムチLOVE!」
っと言ってのけたあの伝説のチャンピオン
数々の伝説を知っている係員はもう何も言わずにハチの首輪を静かに外した
首輪が外された瞬間、山下に突進するハチ
だが、戦いは一瞬で幕を閉じた
アボガード・山下の圧勝だった
係員はその試合を見て涙した
後に、この戦いは
[アボガード・山下 vs メカハチ公]
[総合格闘技チャンピオン vs 闘犬横綱]
[Legend vs Legend in Beach of Katsura ]
[納豆ご飯 vs ビーフジャーキー]
などなど色々な名前が付けられ、漫画、小説、ドラマ、映画、アニメ、ハリウッド進出など色々な形で世に送り出されたのだった
アボガード・山下との戦いで、ハチは山下を本物の飼い主だと認識した
そして、山下はハチを連れ、自身の自宅があるIkebukuroに連れてきた
山下とハチは幾時もも幾時も仲良く暮らした
近所の人達にも最初は警戒していたハチ
しかし、徐々にそれはなくなり近所の人達とも仲良くなっていった
あの殺気むき出しだった闘犬横綱
KOUCHI RED BULLと恐れられたあの横綱がいつの間にか愛敬があり、人懐っこい近所の人気者になっていった
「ハチちゃん!ハイッ!これ!」
っと言われ
近所のおばさん達からお菓子をもらったり
近所のこども達からも
「メカハチ!可愛い!」
「メカハチ!」
「メカハチふさふさしてて気持ちいい!」
などと言われ
抱きつかれたり、撫でられたり、ベロチュウされたり。愛されまくったのだった
しかしある日、アボガード・山下が急な病で急死してしまった
総合格闘技のレジェンドでも病には勝てなかった
メカハチ公は山下の告別式の夜からずっと遠吠えをし続けた
来る日も来る日も遠吠えし続けたのだった
ご飯は近所のおばさん達から貰い続けた
ご飯を食べたら遠吠え、寝て起きたら遠吠え、ウンコして遠吠えの日が続いた
アボガード・山下は独り身だった
なので、家は取り壊しがすで決定していた
近所の人達もせめてメカハチ公が亡くなるまでは残してほしいと業者に交渉した
しかし、業者は首を縦には振らなかった
近所住民の説得も虚しく取り壊しの日の早朝
近所のおばさんがいつもの様にメカハチ公にご飯をあげに外へ出る
しかし、おばさんは何かがこちらへと近づいて来るのに気がついたのだった
朝日を背に大型のTOSA犬が超ドヤ顔状態で何十匹もこちらへ向かって歩いてくる
そう、彼等は昔、メカハチ公と死闘を繰り広げた闘犬達、戦友達だったのだ
KouchiからIkebukuroまでメカハチ公の為に駆けつけてきてくれたのだ
「あの遠吠えは、俺一人じゃこの家を守れないから一緒に守ってくれ!って友達に叫んでたのかもね」
っと近所住民は後に、TVのインタビューで語っている
そして、TOSA犬達は山下の家の周りにお座りをしたのだった
その日はあまりのTOSA犬への恐怖で取り壊しは断念したのだった
業者は困った
闘犬達が家を囲んでいてなにも出来ない
ぶっちゃけビビっていた
ある日
取り壊し業者社長が現場にやって来た
従業員達に無理やり破壊するように命じた
そして強制破壊の合図を出そうとしたその時
「待てい!!!!!」
と叫ぶ大男達が夕日をバックに立っていた
業者達は唖然とする
何を隠そうアボガード・山下に唯一勝利した男
『ミバエワ・ハードワックス』
が腰に手をやり立っていたのだ
ミバエワの後ろにはさらに数多くの大男達が腕を組んで立っていた
『バニー・タップ』
『海水浴場・直次』
『デイビット・チビッター』
『アップル・サイトウ』
『範馬勇太郎』
『トム・クルーザー』
『レオナルド・ダ・ベンチ』
『ファイティングポーズオンリー・ナオ』
『勇者・デビルズゴット』
『ただいま・おかえり・サラリーマン次郎』
『クリスティアーノ・ドウナルノ』
『ミハエル・シュークリーム』
などなどもの凄い数の元&現役の総合格闘技選手達
彼等はアボガード・山下と死闘を繰り広げた戦友達
闘犬の話を聞いて彼等も山下の家に駆けつけたのだった
そして闘犬と格闘技選手達の気合に負けた業者はメカハチ公が亡くなるまで家を取り壊さない事にした
その後、戦士達と闘犬達は山下の家にメカハチ公が亡くなるまで一緒に暮らした
そして、数年の月日が経ち
メカハチ公は安らかに息を引き取った
メカハチ公が永遠の眠りにつくのを認識した闘犬達はKouchiへと帰って行った
そして、戦士達はメカハチ公の銅像をIkebukuro駅前に立てたのだった
後に戦士達はインタビューでこう答えている
「我々の永遠のチャンピオンのビデオや銅像はどこにでもある!しかし、チャンピオンが愛したペットの銅像はどこにもない!だから作ったのだ!悪いか?納豆ご飯LOVE!!」
これがメカハチ公物語
チャンピオンが愛した犬のお話
---おしまい---




