絶体絶命を打ち砕け
ぶつり、と短剣が皮を突き破り肉の中へと沈んでいく感触に希美は思わず身震いする。
ドラゴンはすぐにその痛みに気付き動きを止めて、足裏に突き刺さった短剣を見た。余裕が見てとれるその動作に希美は考えが甘かったかと不安になる。
ドラゴンの自重もあってその分厚い皮膚を貫いた短剣。一笑に付して引き抜こうとした瞬間、短剣はどくりと脈打ち刀身から柄まで全てがどす黒く変色し黒い靄のようなものを溢れさせた。
ねっとりと湿ったような気配を漂わせる靄の中で、どす黒くなった短剣は独りでに突き刺さったドラゴンの前足に底無し沼に沈んでいくかのようにするすると沈んでいく。唖然としてその自身の前足に起きている光景を見つめていたドラゴンが突然低く呻き苦しみ始めた。
前足を振り回し短剣を抜こうともがくも、短剣はそれを意に介さずするする沈み、そして柄までもが沈み込んだ。完全に前足に埋まった短剣は一拍の間の後、どくりと脈打つと同時に先程よりも更に黒い靄を勢いよく噴き出し、ドラゴンの身体を這うようにして全身へ広がっていく。
ドラゴンは苦悶の声を上げて前足を地面についた。全身を包む黒い靄がドラゴンを押し潰さんばかりに収縮してぎりりと締め上げ、一際大きな悲鳴にも似た咆哮を轟かせる。
いくつかの呪術を付与してあるとは聞いていたが人間の何倍もある巨大なドラゴンでさえここまで苦しめるものだとは思っておらず、こんなにも危険なものをクレナハーツに使えとホロが言った事に今更だが恐怖を感じながらドラゴンを呆然と見ていた希美は、その咆哮ではっと我に返る。
今しかないと走り出し、ドラゴンの足元近くに落ちていたクレナハーツが愛用している剣を取る。意外と重いその剣を怪我をしてしまわないよう注意しながら両腕で抱き締めた。
達成感に満ちる心をどうにか制して、次はクレナハーツの元まで戻らなければと走り出す。
突然の出来事に驚き今まで静観するしか出来ずにいたクレナハーツはようやく希美が自分の剣を取り戻してきたのだと気付き彼女の元へ駆け寄る。苦しみながらも怒りに染まった妖しげに光る六つの瞳がまだ危機は去っていない事を物語っていた。
「ノゾミ!!」
急げという意味を込めて名前を呼び、後少しというところで。
「このっ……小娘がああああああああっ!!」
ドラゴンの三つの口がそう叫び、希美とクレナハーツの間に炎の壁が噴き出した。轟々と高く燃え盛る分厚い炎。何者をも通す事を許さない威圧的な赤が蠢き、離れていても汗が流れる熱気に希美は思わず後ずさる。別の道を行こうと辺りを見回したが、炎の壁はあちらこちらで噴き出し完全に退路を断たれてしまった。
ずしん、と地面が揺れる。
恐る恐る振り返ると、ぜえぜえと息を上げながら怒りに満ちた六つの目で睨みつけるドラゴン。その身体は未だ黒い靄に締め上げられていたが命を奪うまでには至っていないらしい。
――あと少しなのに……っ! どうしよう……!
もう少しでクレナハーツへ剣を渡す事が出来たのに、後悔ばかりが頭の中を巡った。いっそ投げて渡してみようかと考えたが、剣は重くこの分厚い炎の壁を十分に通り抜けれるほど投げれそうもない。それにこの熱気、下手をすれば剣さえ溶かされてしまうのではないだろうか。
「一度ならず二度までもコケにしてくれおって……」
ドラゴンの六つの目が再び妖しい光を放つと周囲に散乱していた大きな瓦礫の一つが浮かび上がる。パラパラと破片を零しながら希美の頭上へと移動させた。
どうしよう、という気持ちだけが先走り、焦るばかりで打開策が思い浮かばない。やはり自分では力不足だったのだ。ホロから貰い受けていた複数の呪術を込めた短剣を使えばドラゴンの動きを封じるぐらいなら出来るかもしれないと思い立ち、自身の力量を過信した。震える腕で剣をぎゅっと抱き締める。
「無惨に死ぬがいい」
にたりと三つの口が笑い、瓦礫を振り下ろした。
『万物に宿る精霊よ! 我らを守る盾となれ!』
七色に透き通った半球状の壁が突如出現し瓦礫から希美を守る。驚く彼女の前に立ちはだかっていたのは、この炎の壁に囲まれた空間にどこからともなく現れた長く柔らかな白い毛並みをした一匹の猫。
「カカさん!」
「畜生風情が我が魔力に精霊術で対抗しようなどお笑い種だな! まとめて潰れてしまうがいい!」
七色に透き通る壁に阻まれてもなお勢いの消えない瓦礫。六つの目の妖しげな光が一層強くなったと同時に瓦礫に掛けられた魔力が増大し、更に重く強く壁に圧し掛かる。
カカはそれに負けじと歯を食いしばる。爪を立てて地面に踏ん張るが、あまりに強大なドラゴンの魔力にじりじりと押されていく。
『ノゾミ……ッ、はやく、逃げて……っ!』
「で、でも……」
ピシリ、と七色に透き通る壁に亀裂が走る。
炎の壁に囲まれたこの場所からどこへ、どうやって逃げろというのか。なによりカカを置いて逃げる事など出来ない。何か出来る事はないか、この現状を打開出来る手段はないか必死に考える。
そうこうしている間にも七色に透き通る壁の亀裂は増え続け、パキリと欠け落ちた破片が七色それぞれの粒子となって床に落ちる前に霧散した。
『――ッ、ノゾミッ!! 逃げて!!』
これ以上はもう持たないと悟ったカカは未だに逃げようとしない希美に叫ぶ。
「……ごめんなさい、カカさん!」
ようやく意を決した希美は動く。
片手でカカの首根っこを掴み瓦礫の被害に巻き込まれない場所まで放り投げる。予想だにしなかった出来事にカカは目を見開き、次第に遠ざかる希美を見た。
自分を助ける為に飛び込んできてくれたというのにそれを無碍にしてしまった事に申し訳ない思いが込み上げる。それでも、カカを犠牲にしてまで生き延びる事など出来ない。
何をしても駄目な鈍臭い自分の傍でいつも助けてくれた、ロウロの森へ行った時もワールドエンドへ行った時も当然のように付いて来てくれた、かけがえのない存在を自分だって守りたい。
みしり、と七色に透き通る壁がパラパラと粒子を零しながら瓦礫の重さに耐え切れずに軋む。
迷っている暇はもう無い。希美は剣の柄をぎゅっと握り締める。今の自分に出来る事は唯一つ、届かないとか溶かさるかもしれないとかそんなネガティブな事ばかりを考えて手遅れになってしまう前に、最後の最後まで足掻く事だ。
「クレナさんっ!!」
炎の壁で隔たれた向こうに居る彼の名を呼び、振り回すようにして彼の剣を投げた。
届いてと、溶けるなと、願いを込めて。
「第一、第二部隊、水の章、天の節、慈愛の項! 第三、第四部隊、光の章、付与の節、破邪の項! 降り注ぎて魔を祓え、エクソシズム・レイン!!」
聞き覚えのある声といつか聞いた事のある特徴的な詠唱が響いた。
瞬間、室内にも関わらず柔らかな雨が突如として降り注ぎ、炎の壁を集中的に狙うその雨はあれほど燃え盛っていた炎の勢いをみるみる殺いでいく。
そして雨によって勢いを失いつつある炎の切れ間から飛んで来る剣に気付いたクレナハーツは、僅かに残っていた魔力を足に込めて炎の壁を飛び越え剣を取る。そのままの勢いで今にも希美を押し潰そうとしている瓦礫まで一気に間合いを詰め、剣になけなしの魔力を込め全身全霊の力で瓦礫を真っ二つに叩き斬った。
縦に割かれた瓦礫は希美を避けるようにして轟音を響かせながらも力無く地面に倒れ伏した。
クレナハーツは肩で息をし、肩越しに希美の無事を確認してほっと胸を撫で下ろす。
「小賢しいわあっ!!」
ドラゴンの六つの目に宿る妖しい光がより一層強まり周囲にある瓦礫のほとんどがそれに引きつけられようとしているかのようにカタカタと震え出しいくつかが浮かび始める。
「小賢しいのはお前だっつーの!!」
その時、突如横から飛び出した人影が手に携えた身の丈程の大きな盾を振りかぶりドラゴンの三つある頭の内の一つを渾身の力で殴った。
ドラゴンは怯み、目に宿る妖しい光が途切れ浮かんでいた瓦礫はずしんと音を立ててその場に落ちる。
「わりぃ、遅くなっちまった。ちょっと、あいつら呼びに行っててさ」
「デュラン、さん……?」
ドラゴンを殴った盾を地面に立てて置き希美達の方を振り返り、すまなさそうにそう言った活発そうなオレンジの髪をした青年、デュラン。ここに来るハズがないと思っていた人物の登場に希美は驚き、不思議なものでも見るかのようにデュランをまじまじと見てしまう。
ガチャガチャと金属同士の擦れ合う音が混じった足音に謁見の間の入り口の方を振り返ると、鎧を着込んだ集団がホロ達の前まで走り出て、デュランが持っているものと同じ盾を構えて壁となるように展開していく。鎧の集団が身に着けている緋色のマントが彼らがカルディア国騎士団である事を示していた。
「弓兵隊、第一陣! 放てっ!!」
デュランが声高々に号令をかけると、盾兵の陰に隠れるようにして潜んでいた弓兵が矢を構えて一斉にドラゴンへと放つ。
けれど普通の矢ではこのドラゴンの漆黒の鱗を貫く事は出来ないのではないだろうか。ドラゴンもそう考えたのか雨粒の合間を縫って降り注ごうとしている矢を睨みつけ、再びその目が妖しい光を放ち始める。一直線に進む矢に赤い煙のようなものが纏わりつき、矢は速度を落とし始める。
「第五部隊、光の章、付与の節、退魔の項並びに速度の項!! 其に闇夜を打ち払う力を、エンチャント・ライト!!」
すかさず紡がれた詠唱に呼応するかのように矢が目映い光を放ち纏わりついていた赤い煙を打ち消し、矢の纏う光だけしか目視出来ない程の速さでドラゴンへと襲いかかった。鱗を砕き、突き刺さる光の矢。苦悶の声を上げ、襲いくる光の矢を振り落とそうと腕を振り回すが、未だ黒い靄に戒められたままの身体は上手く動かせないようだ。
「誰がこの雨を降らせているのか忘れたのかしら? 残念な鳥頭をお持ちの珍しいドラゴンだこと」
カツン、と大きな水晶が目を惹く杖を鳴らしてずらりと並んだ盾の合間から現れた女性。淡い桃色の髪をツインテールにしてメイド服に身を包んだアーニャだ。いつもと違うのは手に携えた彼女の身の丈よりも大きな杖、そして彼女が身に纏っている赤い複雑に組み合わされた幾何学模様が施された黒い外套。
希美の記憶に間違いがなければ、その黒い外套は魔道兵団を示すものであるハズ。何故そんなものをメイドのアーニャが身に着けているのか全く分からない。
よく見ると騎士団の緋色のマントの端々から黒い外套が垣間見えた。雨を降らせている魔法も矢に光を纏わせた魔法もその黒い外套の集団、魔道兵団によるものだったようだ。
誰も来てくれないと思っていた。けれど来てくれたのだ、騎士団も魔道兵団も。その事実に嬉しさと安堵が希美の胸に一気に込み上げる。
「ふざけんな……」
ずっと沈黙を貫いていたクレナハーツがそう言った。
「今さら何しに来やがった! 邪魔なんだよ!!」
「オイ、勇者お前なあ!! ノゾミが必死にオレらを呼んできたってのにその言い方……っ!!」
謁見の間に響き渡った怒気を孕んだクレナハーツの言い草に腹が立ったデュランは彼の胸倉を掴んで詰め寄る。途端に一触即発の雰囲気となった二人に何と声を掛けて止めさせればいいのかと希美はおろおろした。
やはり今日の自分はどうかしていた。碌な知識も持たない自分がする事など迷惑以外の何ものでもなかったのだ。クレナハーツの言い放った「邪魔」という言葉で、目が覚めたような感覚と共に一気に後悔が押し寄せる。
「……?」
一方デュランは、この恩知らずを怒鳴ろうと息巻いて詰め寄ったが、相手の肩が小刻みに震えている事に気付き怪訝な表情で閉口した。
「魔王を倒しにも行けねぇ弱虫が集まったって邪魔なだけだろ!! 無駄死にが増えるだけだ!! 助けろなんて頼んでもねぇのに迷惑なんだよ!! 勝手な事してんじゃねぇ!!」
そうクレナハーツハ喚き散らすも相変わらず肩は震えていて、その声も少し震えているようだ。
「勇者……?」
「……なのに……なのになんで、嬉しいとか思ってんだよ……また、誰か死ぬかもしれねぇのに……っ」
消え入りそうな声で言ったクレナハーツの顔は今にも泣き出しそうなものだった。
「――ったく……そんくらい素直に喜べっつーの。ってか勝手に殺すんじゃねぇよ! オレの騎士団なめんな! 頼まれたって死んでやらねぇし!」
デュランはそう吐き捨てて胸倉を掴んでいた手を乱暴に離す。
「あ、ああああの、く、クレナさん、その、ご、ごめんなさい、えと、勝手な事、を、してしまって……あ、あの、本当に、すみません……」
こっちはこっちで後悔と反省に苛まれて今にも泣き出しそうな顔をした希美。もう王様のフリをしていたドラゴンに食ってかかった勢いは萎み、ただ自分の勝手な行動でクレナハーツに迷惑を掛けてしまったという過ちだけが頭の中でぐるぐる巡る。
そんな状態だった為、クレナハーツの邪魔発言以降の言動はほとんど耳に入っていない。
謝りながら落ち込む希美を見て逆に冷静さを取り戻し始めたクレナハーツは短くため息をつくと、項垂れる希美の頭にぽんと手を置き彼女の髪を掻き混ぜた。
「別に、本気で邪魔とか思ってねぇから……助かったし……その、なんだ……」
珍しく歯切れの悪い言葉に希美はきょとんとして彼を見つめて次の言葉を待つ。その不思議そうなものでも見るような彼女の視線に気付いたのか、クレナハーツは少しムッとして言いかけた言葉を飲み込み誤魔化す事にした。
「とにかく、ノゾミはもう下がってろ。後は俺の――」
言いかけて、首を振る。
「――俺達の仕事だ」
突き刺さる光の矢と戒める黒い靄に苦しげな声を上げながらも怒りと憎悪に満ちた六つの目を向けるドラゴンを真っ直ぐに見つめてクレナハーツは言った。ぼそりとデュランが「不器用め」と呟く。
「それじゃあハーくんの剣、ボクに貸ーして☆」
「……いきなり出てくんな、ビックリしただろ」
何の前触れも気配もなく視界の端から突如登場したスティにいつもの事なのかうんざりしたような表情をするクレナハーツ。希美は神出鬼没なスティに悲鳴を上げる暇もない程驚いて思い切り肩を跳ねらせていた。
クレナハーツは文句を言いながらスティに言われた通り、ようやく手元に戻ってきた自身の剣を渡し、ついでに借りたままだったスティのサーベルも渡した。
スティはサーベルを腰に提げた鞘に収め、クレナハーツの剣を虚空に差し出すように両手で丁寧に持つ。
「光の精霊よ、我が剣に魔を断つ御加護を与えたまえ」
普段とは比べ物にならない程に落ち着いた厳かな声で唱えると剣はみるみる白い光に包まれていき、光が弾けるようにして霧散した後には淡い七色の光を刀身に纏わせた剣が姿を現した。
魔法や精霊術の知識に乏しい希美にもその剣が放つ清浄さや神聖さを肌で感じる。
「ホロホロが言ってたよ。あの短剣に使ってた呪術が効いてるなら、魔法とか精霊術への抵抗がガタガタのグダグダのグッズグズになってるハズだって。精霊術を付与したこの剣ならドラゴンを一刀両断しちゃうのも夢じゃないよ!」
そう言ってクレナハーツへ剣を差し出す。
「……本当は、ボクがけじめをつけるべきなんだって分かってる。でも、いくら弱ってても、ボクにドラゴンと真正面からぶつかり合える力はない。でも……」
いつになく真剣な表情と低めのトーンで話すスティの言葉を遮るようにクレナハーツは剣を引っ手繰った。
「そういう話はコイツを片付けてからにしろ。それまでは、いつもへらへら笑ってやがる能天気な"盗賊のスティ"でいればいいだろ」
「……えへへ、そーだね。でもハーくん! ボクは盗賊のスティじゃないよ! ボクはそう、天下無敵な美少女盗賊☆スティちゃんでーす!」
「……分かったから、さっさとノゾミ連れて下がれ」
すぐに普段通りのハイテンションに戻ったスティにクレナハーツは少し面倒草そうな表情を浮かべ、動物を相手にでもしているかのようにしっしっと手で追い払う動作をする。動物扱いされた事に不満を覚えたのか頬を膨らませて唸り、しばらくしてからぱっといつもの笑顔に戻った。
「よーし、ノッちゃん、カカっぺ、撤退だーっ☆」
「ふぇ!?」
スティは希美の腕を掴み一目散に騎士団員らが作る盾の壁まで走り出す。希美の腕を掴む手とは反対の手はいつの間にかカカを抱えていた。火傷や外傷などは見当たらず、希美は密かに胸を撫で下ろした。
『ノゾミのバカッ! バカバカバカバカバカバカバカーッ!!』
希美の姿を捉えたカカがスティの腕からするりと抜け出して希美の肩に飛び乗ると、満月のように真ん丸とした瞳に涙を浮かべて叫んだ。前足で肩をべしべしと叩かれる。爪は立てられていないのでそこまで痛くはないのだが、城中を走り回った満身創痍の身体には充分過ぎるほど響く。緊急事態だったとはいえ放り投げるという暴挙に出てしまった事を怒っているのだと希美は思い、カカの猛攻に怯みながら謝る。
「ご、ごご、ごめんなさい、その、な、投げたり、してしまって……わぶっ」
『投げた事を怒ってるんじゃないもん! ノゾミのバカッ!』
次は尻尾で顔を叩かれた。またもやバカと言われて希美は落ち込む。
『……なんで、逃げなかったの? 間に合わなかったら、死んでたんだよ……?』
今にも泣きそうな言葉に希美はようやくカカが怒っている理由に気付いた。
「あ、あの、えと、本当に、ごめんなさい。で、でも、その、私、カカ、さんに、死んでほしく、なかった、から……ええっと……」
上手く言葉が紡げずもどかしい。カカは肩の上で暴れるのを止めて、希美の頬に頭を擦り寄せる。
『……ごめんなさい』
蚊の鳴くような小さな声で呟かれた謝罪の真意を希美が知る事はまだない。
希美は首を傾げながらもクレナハーツ達の方を振り向く。
「あ、あの、あのっ、えっと、が、頑張って下さいっ!!」
あまりにも語彙が乏し過ぎないかと自分が落ち込みそうな激励の言葉を言う。デュランは「任せとけ!」とにかっと笑って言い、クレナハーツは背を向けたまま片手を挙げて応えた。




