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俺たちの冒険はこれからだ!(五三周目)  作者: 厨二×武力=はた迷惑
第一章
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第二話:「この程度ですか?」

「だ、大丈夫ですか!?」


 受付の女性が駆け寄ってくる。

 その更に向こうでは、にやにやと卑らしい笑みを浮かべている男。


「ハッ、一撃かよ。冒険者になりたいなら、もうちょっと身体を鍛えてくるんだな」

「おいおい、全力でやっといて何言ってんだよ。ご丁寧に肉体強化(ブースト)までかけて、再起不能になったらどうすんだよ」

「その程度なら、最初から冒険者になる資格は無かったって事だよ」


 そう言って男達は、再びどっと笑う。


「あ、あなた達! ギルド内での無為な暴力行為は禁止のはずですよ」

「おいおい姉ちゃん、そりゃ言いがかりってモンだぜ? これは教育だよ、教育。授業料として拳一発、特大サービスだ」

「あなた達……!」


 ギリッ、という、歯の軋む音が微かに聞こえたが、それは笑い声にかき消され、男達に届く事は無かった。

 彼女は怒りを抑えながら、僕の方へ向き直る。


「あ、あの、お怪我はありませんか?」

「無え訳無えだろ、そんな貧弱が」


 そう言うと、自分達の元いたテーブルへ戻っていく。


「いえ、大丈夫ですよ」


 このまま勝った気にさせておくのも癪なので、僕はそう返事をしてやる。

 ピタリ、と男の足が止まるが、僕はそれを気にせず、


「それよりすいません、ギルドの備品壊しちゃって。今はお金は無いんですけど、今度必ずお支払いしますから」

「え、えぇ……」


 呆気にとられた表情の彼女と、一様に驚いた表情をしている冒険者の男達。

 僕は立ち上がると、服に着いた埃を払い、


「それで、あなたの全力はこの程度ですか? いつの間にか失礼なことを言ってしまっていたようなので、お詫びに一発殴らせてあげようと思ったのですが———」


 男の方を向いて言う。


「この程度とは少し期待外れでしたが、これで貸し借りは無しですね?」

「……な、何だよ、お前……!」


 彼は、驚愕と恐怖が入り混じったような表情を浮かべる。

 いや、彼だけではなく、この場にいる人間の殆どが、同じような表情を浮かべているだろう。

 何せ僕は———、


「何で……、無傷なんだよ!?」


 そう、無傷。

 彼に殴られた傷跡など、何一つ残っては無く、あるのはただ、今までと変わらぬ整った顔立ちだけだ。


「何でと言われましても……、勇者だから?」

「疑問形で返してんじゃねえよ……。今質問してんのはこっちだ!」


 そう叫ぶと、彼は周りの男達に向かって、


「おい、このガキを囲め!」


 と、命令する。

 そして、自らも壁に立てかけてあった武器———巨大な斧を手にする。


「逃げ場は無えぞ、ガキィ……!」

「逃げる気はありませんよ」


 静かにそう返す。

 それにしても……、腐ってもさすがは冒険者というべきか。得体の知れない敵を見ても、戦意を失う事無く向かってくる。


「……まぁそれは、無謀とも言えるんですけどね」

「あぁ、何か言ったか?」

「いえ、何でも。それより、僕は先程、一発と言いました。つまり、ここから先は、正式な戦闘という事でよろしいんですね?」

「んな訳ねえだろ。これから始まるのは……、———一方的な嬲り殺しだ!!」


 言葉と共に、頭上に掲げられた斧が振り下ろされる。

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