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オーバードリーム  作者: 左ノ右
第一章 
12/14

1-11 ブライトメア


 ――命辛々に転移をし、夢の世界へとやってきたブライトメア。


 その全身からは黒い煙が立ち上り、全身の殆どが使いものにならないレベルにまで傷ついていたが、まだかろうじて意識はあるようで、心底悔しそうに声を漏らす。


「ハァッ……ハァ……クソッ――おのれ篠森夢依。まさか既に『オーバードリーム』をあれほどまでに扱えるとはな……だが、まだ私は生きている……この夢の世界で傷を癒した後に、必ずお前の力を手に入れ――」


 そこまで言いさした所で、ブライトメアはあることに気付く。


「――っ!? なんだここは? 私が転移したのはこんな場所ではないはず――」


 そのブライトメアの疑問は、すぐ近くから聞こえてきた声によって解消される。


「――ようやく気付いたのですか。いくら知的を気取っていても所詮はその程度なのか……それとも、傷が深すぎて気付くのが遅れたのか……果たしてどちらなんでしょうねぇ?」


 その声は少年のようで――しかし、そんな年の少年では絶対に出せないような皮肉たっぷりの言い回しであった。


 そこには――夢の図書館の主であるアルヴァスが泰然と立っていた。


「お前は…『ドリームライブラリ』の主か……ということはここは……」


「ええ、ご察しの通り、夢の図書館です。ワケあって僕はここから出られないので、アナタの転移先を無理矢理変更して直接ここに来てもらいました――ああ、もう一度転移しようとしても無駄ですよ? もうここに入った時点で貴方はここから出られませんから――」


 そう釘を刺されたブライトメアは、試しに転移を試みてみたが、アルヴァスの言うとおり、転移能力がまったく使えなくなっており、苛立つように舌打ちをしてから、悔しそうにアルヴァスに聞く。


「……貴様、私が夢の世界に転移することが判っていたというのか?」


「そりゃあ、アナタが劣勢になれば逃げ込むところはココしかないですからね。なにせ……アナタの本質は、この夢の世界なのですから――」


 飄々と言った言葉に対して、ブライトメアは露骨に反応を返す。


「本質……だと?」


 それは、相手の言っていることが理解出来ないという風な反応だった。


 アルヴァスは、そんなブライトメアに対し、軽く見下すような声で答える。


「ええ、『ブライトメア』などと名前を変えて貴方自身は変わったつもりなのかもしれませんが、結局アナタは他人の夢にすがって生きるしかない『夢魔』であることには変わりませんからね」


「――ッ! なんだとッ……どういうことだ!」


 夢魔という言葉に拒否反応を示すように、ブライトメアは激昂した。


「やれやれ、どうやらアナタは自分が何者であるかを忘れてしまったようですね。分からないのなら教えてあげましょう。アナタの本当の名は『ナイトメア』――。人の悪夢を吸い出し、その恐怖を喰らうあさましい『夢魔』です」


 丁寧な言葉であるにも関わらず、アルヴァスのその声はまるで道端の虫にでも話しかけるような様子だった。


 それは、篠森夢依に対して吐く暴言よりも一層冷たく、一切の情が入っていないという風であった。


 ブライトメアはそんなアルヴァスに対し、どこか得体の知れない不気味さを感じ、ほんのわずかな恐怖心を覚えながらも、その恐怖を打ち消すように叫ぶ。


「なッ――そんな馬鹿なことがあるかっ! そのような妄言を私が信じるとでも?」


「信じる信じないは関係がありません。そもそも、アナタ自身が自由に夢の世界に入れるという時点で、アナタは自分が夢魔であることの証明をしているも同然なのです。それでもまだ疑うというのなら、アナタの十年以上前の記憶を辿ってみてはいかがですか?」


 その言葉はひどく投げやりで、まるで聞きわけの無い子供に嫌々ながら教えているといった風であり、その相手を見下した態度にブライトメアは苛立ちながらも、


「十年以上前だと? 今度は曖昧な記憶から揺さぶろうという腹づもりか? いいだろう、辿ってやる。それで貴様の思い通りになどならないということを証明してくれる!」


 自信満々にそう言い放った。それは相手の言葉に惑わされぬように振舞っているのだが、どこか虚勢を張っているようにも感じられる態度であった。


「ええ、なんでもいいですよ。たとえばどんな事件があったとか、どんな食事をしたとか、もし記憶が一片でも存在するのなら、僕はアナタが夢魔だということを撤回しましょう」


「フン……そのような条件でいいとは随分と安い嘘をつくものだ。そうだな、十年前とは確かIMEがこの世界に存在する前の世界のことだな、その時に起こったことといえば――いえば……」


 余裕ぶっていた表情は、そこで急に険しいものへと変わり、


「………」


 しまいには無言になり、必死に記憶を検索するように頭を抱え始める。


「――どうしたのですか? ――まさか『思い出せない』なんていうことはありませんよね? あれだけ自信満々だったのですから、一つくらいはあるでしょう?」


 皮肉たっぷりな口調でどこか楽しそうに言うアルヴァス。その態度は、まるで最初から思い出せないことが分かっていたといった感じである。


「……馬鹿なっ!? 何故だ、何故私には十年以上前の記憶が『存在しない』……?」


 困惑するブライトメアに、アルヴァスは心底冷たい声で教える。


「――それは、アナタという存在が人間の世界に生まれ落ちたのが丁度その時期だからですよ。十年前までアナタは、学習能力が欠如したレベルの低い夢魔でした。ですが十年前、篠森夢依の『オーバードリーム』が覚醒した時、アナタは一つの能力を持ってこの世界に生まれた。彼女の力は本当に恐ろしいものですね。肉体の無いものにさえ力を与え、『生命』さえも生み出すのですから……」


「そんな馬鹿な――確かに私は篠森夢依からこの力を授かった。しかし、私という存在はその前から確かに存在していた筈だ!」


「やれやれ……そんなことも忘れてしまったんですか……では、僕が思い出させてあげますよ――アナタがこの世界に生まれ落ちるその瞬間を――」


 アルヴァスは、そう言って片手をブライトメアに向かってかざした。


 すると――ブライトメアの記憶の中に、まるで映像のような鮮明なビジョンが流れ込んで来る。




 それは、闇の中から始まった――暗い昏い闇の中、一つのおぼろげな光がその空間を漂っていた。


(あれは――『私』……なのか……?)


 ブライトメアは、どうしてなのかは分からないが、その薄く今にも消えそうな光が『自分』なのだと認識していた。それは、彼が無意識化に記憶していた自我の残滓――例えその命が生まれる前だったとしても、自分を『自分』だと認識する自意識は彼の中に存在していたのである。


 もちろんブライトメア自身は、その光のことを自分だとは思っていなかった。この映像はアルヴァスが自分に見せている幻であり、あんな薄い光が自分な筈がないと確信していた。


 しかし、彼の本能はそれを否定していた。あの光こそが『自分』であり、懐かしい我が身だと訴え続けていた。


(違う――違うッ! あんなものは私などでは――)


 相反する自意識と戦いつつ、映像は次の段階へと進んでゆく。


 おぼろげな光は闇の中を漂い続け、やがて――、もう一つの光に出会った。


 その光は、今にも消えそうな自分とは違い、闇すらも打ち消す輝かしい光を放っていた。


 おぼろげな光は、その眩しい光に引き寄せられるように近づいてゆき――、二つの光は一つの大きな光へと変化した。


(ま……まさかこれは……) 


 ブライトメアは動揺していた。何故ならば、彼はその光景を以前に見ていたからである。


 そして――大きな光はだんだんと人の形を成してゆき、あっという間に一人の男へと変化した。


 その男は、長い銀髪をした、歳の頃は二十台半ばほどの長身の男だった。


(そんな……嘘だ……そんなことがあるはずが……)


 狼狽するブライトメアをよそに、男はその眼を開いた。


 そして、その青い瞳がブライトメアを捉えたと思ったその瞬間――映像は唐突に終わり、ブライトメアの意識は『ドリームライブラリ』へと帰って行った。




「………」


 ブライトメアは、自分の見た映像が信じられないという風に目を見開き、じっと自分の手を見つめていた。


「さて、これで思い出しましたか? アナタが『夢魔』だということを……」


「嘘だ……あんなのは幻だ……」


 あくまでそう否定するブライトメアに嫌気が差したのか、アルヴァスは一度嘆息するとブライトメアをさらに追い詰める一言を呟く。


「では、アナタは自分で自分自身を否定するのですか? しかしそれはおかしいですねぇ? 自分が自分を否定するのならば、誰がアナタを『アナタ』だと言ってくれるんでしょうか?」


 それを聞いたブライトメアは、その困惑を一層深め、茫然自失といった様子で、急に元気を無くし、まるで迷子になった子羊のように落ち着かない態度で、


「そんな……では私は……私という存在は……?」


 そんな風にブツブツとなにかを呟き始める。


 アルヴァスの教えた『真実』は、ブライトメアにとって自分自身の存在意義を否定されたに等しかった。自分は選ばれた力の持ち主だと思っていたのに、実際は只の偶然によって生まれただけ。その事実は、自信満々であったブライトメアの自我を壊すには十分すぎるものだった。


「――思ってみれば、アナタの計画に穴があったのは当然のことなのかもしれませんね。アナタは自分自身の自我を維持する為に、IEMを救うという『生きる目的』を『設定』したに過ぎない。だからこそ、アナタのしたことは行き当たりばったりで、ちぐはぐに見えたのでしょう。アナタは『夢魔』だったからこそ人間のように『夢』を求めたつもりだったのでしょうけどね」


 自分を見失ったブライトメアに対し、アルヴァスは淡々と、冷静に、残酷な分析結果を告げる。


「私は……ああ、璃々、私は一体どうすれば……」


 ブライトメアは、アルヴァスの分析を否定することもせず、ただただ嘆くことしか出来なかった。


 そして、アルヴァスはそんなブライトメアに対し、さらなる残酷な宣告をする。


「残念ですが、アナタに残された道は一つしかありません。夢魔は夢魔らしく、夢の世界に帰ることしか出来ないのです。当然、アナタがした行いの償いとして、アナタの大事なもの――つまりは記憶と意識と能力をこの図書館に納めて頂く必要がありますがね……」


 その言葉に対し、流石にブライトメアは取り乱し、


「ふ、ふざけるなっ! 私は戻らないぞ、あのような生きているのか死んでいるのか、自分自身の意識すら夢現のようなあの場所に――」


 完全なる否定の意志をアルヴァスに訴える。だが、その反応はアルヴァスの想定内の反応だったらしく、アルヴァスはさらりと言葉を返す。


「どうやら、夢魔であった時のことを徐々に思い出してきたようですね。その自覚があるのならば、もう遅いです。もう既に、アナタは夢魔に戻りつつある――あとは、仕上げをするだけですね」


 その――まるで芝居の台詞のように、予定調和な口調のアルヴァスの言葉を聞いて、ブライトメアは一つの真実に気付く。


「――っ……お前は、もしやこの為だけに……私の描く『物語』をこの図書館に納める為だけに、璃々が図書館から魔獣を盗み出すのをあえて見逃し、そして私をこの場所に誘き寄せたというのか?」


 そのブライトメアの言葉に対して、アルヴァスは口をポカンと開けて、初めて彼を驚いたような顔で見た。


 そして、口の端だけを釣り上げて、底意地の悪そうな表情を浮かべながらアルヴァスは言う。


「……無能な道化かと思っていましたが、どうやら僕の見込み違いだったようですね。――正解です。よくその結論に辿り着きましたね。何か景品でも差し上げましょうか?」


 その皮肉っぽいアルヴァスの言葉を無視するように、ブライトメアは、


「そうか……私は貴様の掌の上で踊るピエロだったということか――なんということだ……」


 自らの失態を恥じるようにそう言った。


「よく考えれば分かることですよ。あまりにも手薄な図書館の警備、そしてこの事件に対する人員の少なさとアナタにとって都合の良すぎる展開、そのどれもが不自然で、作為的であったと言えます。アナタが計画を焦らず、じっくりと考えて行動すれば、もしかしたら計画を実行する前にそのことに気付けたかもしれないというのに――。本当に馬鹿なことをしたものですね」


「私のこの力は、所詮篠森夢依に与えられた能力にすぎん。いつ消えるかも知れぬ力を失うことを恐れて計画を早めていたことが、この失敗に繋がったというわけか……」


 そう言ってブライトメアは、自嘲的に笑った。


「残念ながら、その通りです。――さて、最後になりますが、何か言い残すことはありますか?」


「貴様に何か言い残した所で、なんの救いがあるというのか……」


 だらりと頭を垂れ下げながら、全てを諦めたような声でブライトメアは言う。


 もう彼には、抵抗する力も、気力も、理由も無くなっていた。


 自分の存在を否定され、目的を否定され、自分がやってきたことが全て無駄な努力だったのだと思い知らされる。それは、彼が全てを諦めるには十分すぎるほどのことであった。


「そうかもしれませんが、気は楽になるんじゃないですか? 救いの無い死刑囚も、最後に神に祈ることがあるのですから――もっとも、僕は神などではありませんがね?」


 投げやりな口調でそう言いながら、アルヴァスはブライトメアの前に立つ。もちろん彼から記憶と意識とその能力を奪う為に――。


 その死の宣告に等しい動作を見て、もう全てがどうでもよくなっていたブライトメアは、


「……それも、そうかもしれんな……」


 同意するようにそう言うと、もう殆ど力が入らなくなった身体に力を込め、天を仰ぐように上を向いて、


「――すまない璃々……どうやら私は……とんでもなく愚かだったようだ……」


 自らに付き従い、そして自らが殺してしまった少女に対し、心からの懺悔の言葉を呟いた。


 そして――、それが彼の最後の言葉となった。


 アルヴァスがブライトメアの体に触れると、彼の体は光となって一瞬にして消失する。そして、その光が収まった後――アルヴァスの手に一冊の本が納まっていた。


 それは、ブライトメアの人生を凝縮した本だった。彼の記憶や彼が引き起こした事件、そして彼が歩み戦ってきたその人生の歴史を記した本――それこそがアルヴァスが望み、収集している『物語』の正体だった。


「――さて、これでこの騒動も決着がつきましたね。彼をここに引きずり出すのに時間が掛かりましたが、まぁ盗まれた魔獣も回収出来ましたし、新たな『物語』をこの図書館に納めることが出来たので、良しとしましょう」


 本を上にポンポンと投げて遊びながら、アルヴァスは独り言のように続ける。


「問題は、この件で浮彫りになった図書館の警備状況のことですかね。今回はあからさまだったので予知が出来ましたが、これからはもっと巧妙な手口で盗まれる可能性もあります。とはいえ、これだけの貯蔵量となると、流石に僕一人では限界が――ん?」


 アルヴァスは、そこで自分の足に何かが触れたことに気付いた。


 落ちていたそれを拾い上げてみると、それは蒼く輝く綺麗な宝石だった。


「――これは、彼が最後に残した『魂の器』ですか……。なるほど、これが彼なりの罪の意識の表れということですかね……」


 意味深にそう言うと、アルヴァスはその宝石をポケットの中にしまいこみながら、


「ちょうどいい、『コレ』を使わせてもらいましょうか――」


 今日の献立のメニューを決めるような気軽な口調でそう言った。




 悪夢のような前日の夜から明け――。学校が休日であるその日に、夢依は理恵に電話をかけていた。


「――うん、こっちは大丈夫。昨日のダメージはまだ残ってるけど、歩けないほどじゃないし……そっちはどうなの?」


「私の方は、全身が凄い筋肉痛なこと以外はおおむね問題無いわ。おばあちゃんが私の身体を使うといつもこうなるのよね……」


 互いの健康を気遣うように、二人は自分の今の状態を報告していた。


「ホントにごめんね理恵。なんかあたしのゴタゴタに巻き込んじゃって……」


 電話口の向こうの相手に謝るように片手を上げながら、夢依が申し訳なさそうな声でそう言った。


「だから気にしないでって言っているでしょ? 家には友人の家に泊まったことを電話で伝えたけど、なにかの拍子で上手く伝わっていなかった――ということにしてあるし、私自身も全然昨日のことは気にしていないから」


 既に夢依から何度も謝罪されているのか、理恵は少しうんざりしたような、困ったような口調で夢依に言う。


「でも、あたしのせいで理恵は捕まったわけだし……っていうか気絶したあたしを運んでくれたも理恵だよね……ああ、もうなにをどう償っていいのやら分かんなくなってきた……」


 そう混乱した様子で夢依が言うと、理恵は少しイジワルっぽい口調で、


「そう思うのなら、今度甘いものでも奢ってくれればそれでいいわ。ただし、奢ってもらうときは私のお気に入りの所だから、財布の中は多めにしておいてね?」


「うう……それで許してもらえるならありがたいけど、今月キビしくなりそうだな……主にあたしの財布的に考えて………」


「まぁそれくらいは…ね。それより今日――。行くんでしょ? あの図書館に」


 当然それは、バイト先ではなく『ドリームライブラリ』に行くのか、という意味である。


「――うん……結果報告しなきゃいけないし、その上今回は『オーバードリーム』を使っちゃったからね。ああヤダな……ネチネチ嫌味言われるんだろうな……」


「まぁ、それぐらいは覚悟しなくちゃね。自分のしたことの責任を取らなきゃいけないのは、人として当たり前のことだと私は思うわ」


 理恵の注意を聞いて、夢依は昨日のことを思い出したのか、いつになく沈んだ真面目な声で言う。


「うん……分かってる……あたし、今回はとんでもないことをしちゃったからね……」


 電話口から、理恵は夢依が気落ちしているのを感じたのか、夢依を気遣うように慰めの言葉をかける。


「――夢依……璃々ちゃんのことは、あまり気に病まないほうがいいと思うわ。璃々ちゃんがあんなことになったのは、貴女のせいじゃないんだから……」


「……でも、あたしがもっとしっかりしてれば、璃々ちゃんは死なずに済んだんじゃないか――って思うとどうしてもね――……なんで、あんなことになっちゃったんだろうね……」


 その今にも泣き出しそうな夢依の声を聞いて、理恵は一瞬言葉に詰まる。


「………」


 夢依は、その沈黙がまるで自分を責めているように感じていた。もちろんそんなことはないのだが、そう感じてしまうほどに夢依は心が弱ってしまっているのである。


「――あっ! ゴメンね。なーんか湿っぽい話になっちゃった。こんなのあたしらしくないよね。あはは……それじゃ理恵――またね」


 夢依はそう一方的に捲し立てると、電話口で何かを言っている理恵を無視して電話を切った。


 電話が終わり、静かになった自分の部屋の中で、夢依はポツリと呟く。


「図書館……行かなきゃな……」


 その表情はひどく悲しげで、今にもどこかへ消えてしまいそうな、そんな印象を感じる表情だった。




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