霊感商法にご注意を!
小説を書く息抜きに思いついたアイデアを短編にしてます。
よければお読みください♪
「いやー……憑いてますね」
どこにでもある普通の家。その一室で、若い男が唐突に言い放った。
「つ、憑いてるって……どういう意味ですか?」
主婦が不安げに聞き返す。
「だから、憑いてるんですよ奥さん」
主婦は引きつった笑みを浮かべた。
「えっと……水道に何か詰まってるってことですか?」
「いえいえ、水道は綺麗でしたよ。水が出ないのは“憑いてる”せいでして」
「何を言ってるんですか。あなた、水道屋さんですよね?」
どう見てもヘラヘラした若い水道屋だ。
水が詰まったので呼んだのだが、来たのはこの男だった。
「もちろん水道屋ですよ。でもね、昔から“見えちゃう”体質でして」
「変なこと言わないでください!ふざけてるんですか!」
主婦は息を荒くし始める。
「落ち着いてください奥さん! 今ならこのスプレーをかけるだけで追い払えます!」
「いい加減にしてください!警察呼びますよ!早く直してください!」
主婦は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「いや、直すにしても……もうかなりヤバい状況でして」
「ヤバいって何が――」
「ほら。あなたのすぐ後ろに……憑いてますよ」
男が指をさす。
「きゃああ!!」
主婦は悲鳴を上げた。
「で、どうします? スプレー買いますか? 買いませんか? 今ならお安くしときます」
男は不敵に笑った。
――
「ありがとうございましたー! またよろしくお願いしまーす!」
家を出た男は満面の笑みでスキップしながら札束を数える。
「けっけっけ、毎度あり! チョロすぎるっての!」
(あの家に、幽霊なんているわけねぇだろ……)
心の中でほくそ笑む。
つい声が漏れた。
「楽勝すぎるぜ!」
「――ちょっと待ちなさい!!」
どこからか女の声が響いた。
振り向くと、若い女がこちらを指差している。
「あなたね?最近ここら辺で詐欺を働いてる男は!」
「詐欺?何のことですか?」
「惚けても無駄よ!証拠は出揃ってるんだから!」
そういうと、ものすごい数の証拠を出してきた。
女はバッグを開くと、ためらいもなく中身をぶちまけた。
まず、被害者のメモが何十枚も。
「霊がいると言われた」「スプレー買わされた」
全部、同じ手口。
次にレシートの束。
“除霊スプレー 3万8千円”“特濃 5万8千円”
全部、男の名前入り。
続いて、防犯カメラの静止画。
玄関でスプレーを掲げる男、
帰り道で札束を数える男。
日付もバッチリ。
最後にスマホ。
SNSの苦情スクショ、
そして――さっきの男の自白音声が再生される。
『あの家に幽霊なんているわけねぇだろ……楽勝すぎるぜ!』
女は腕を組み、顎を上げた。
「――これでもまだ惚けるつもり?」
男の笑顔が引きつる。
「ど、どうやって…こんなに証拠を!?」
女は一拍置いて、さらりと言った。
「あー、だって私、見えるもの…」
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