第5話 ありがとうイケメン、でも惚れないで!?
昼休み。
俺は校庭の隅で、息を潜めていた。
やばい……今日は特に気配が強い……。
木陰から女子たちの視線が突き刺さる。
「真田くん、今日も素敵……。」
「近づきたい……でも近づいたら倒れそう……!」
「距離だけで尊死って新しいわね……。」
なにこの宗教会合みたいな空気!!
そこへ追い打ちが来た。
「ユウくーん!一緒に走ろー!!」
三条アカリが全力疾走で向かってくる。
こ、こいつは接触率高いタイプ!!
一番危険だ!!
「あっ、あのっ……その……!」
文系の百瀬ユキまで、詩集を抱えて突進してくる。
「真田くんに捧げるための呼吸風景短歌ができたの……聞いて……!」
こっちも危険だ!!
そんな2人につられて、他の女子たちもざわざわ動き始めた。
「行く? 行っちゃう?」
「今日こそアタックする?」
「押すな! 列が乱れる!」
え、列!?
いつ並んだの!?
完全にパニックだ。
「ちょ、ちょっと皆さん落ち着いて!!」
俺は後ずさり……後ろは池。
やばい、逃げ道ない!!
じりじり迫ってくる女子の群れ。
彼女らの目はキラキラしているが、もはや理性が危険水域。
チート強すぎだろこれ……!
ひよりーーー!!
助けてーーー!!
そのとき。
「危ないよ、真田くん。」
すっと俺の前に影が差した。
振り向くと――学園のイケメン王子、七城レンだった。
モデルみたいな笑顔で女子たちに手を広げる。
「みんな、ちょっと距離をあけてあげて。真田くんは追い詰められると緊張するタイプなんだ。」
「れ、レン様……!」
「かっこよすぎる……!」
「説得力ある……!!」
女子たちが一瞬で静まり返る。
な、なんて影響力だ……!
さすがはイケメン!
レンは俺の肩に手を置き、優しく微笑んだ。
「大丈夫? 真田くん。」
その笑顔は、性別問わず殺傷力高すぎるやつ。
「れ、レン……ありがとう……助かった……!」
「ふふ、困ったときはお互いさまさ。」
なんて良い奴……!
神か!?
いや、イケメンか!
思わず感動して――俺の心がじわっと熱くなった。
……ん?
あ、まずい。
好意を抱いた瞬間にスキル発動の仕様だったような。
レンがきょとんとする。
「ん?なんだろ……急に真田くんのこと……すごく……。」
やばいやばいやばい!!
レンの頬が赤くなる。
「……守ってあげたくなってきた……。」
「発動しちゃったあああああああ!!!?」
「ちょ、ちょっと待ってレン!俺は、その……そういうのじゃなくて!!」
「わかってる。でも……なんか、すごく君が放っておけないんだ。この気持ちは……運命……?」
「だからチートスキルのせいなんだってばぁ!!」
後ろの女子たちもざわざわし始める。
「レン様が真田くんに……?」
「三角関係発生……?いえ、総受け?」
「ジャンルが急に複雑化……!」
レンがなぜか俺の手を握る。
「真田くん……君の瞳……綺麗だ。」
「やめろおおお!! 俺はノンケだ!!いや、レンは悪くないけど! いろいろと違うんだ!!」
そこへ――
「……はいストップ」
背後から冷ややかな声。
振り向くと、ひよりが腕を組んで立っていた。
「……ユウ。あんた、ついに男子にまでモテ始めたの?」
「ち、違うんだひより!! これはチートのせいで!!」
ひよりは頭を押さえながらため息をつく。
「もう……あんた、これからどうするの?変な方に進んでない?」
「ひより……助けてぇ……!」
「しょうがないわね……」
ひよりはレンの手をぺしっと払い、俺を後ろにかばった。
「七城くん。ユウはね、そういう気持ち向けると壊れるタイプなの。元々扱いにくい男なのよ。だから大人しくして。」
「そ、そうなの……?真田くん?」
「やめてその心配の仕方!!なんか、嫌すぎる。というか、俺の扱い酷くね!?」
俺の悲鳴も空しく、俺の扱いはひどいままだ。
しかし、どうにかレンの暴走も止まり、周囲も落ち着いた。
はぁぁ……心臓死ぬかと思った……。
ひよりは俺を睨みつける。
「……ほんっっっとうに厄介ね、あんたのチートスキル。」
「ほんとごめん……。」
「まあ。男子にまでモテるようになったのは……ちょっとだけ笑ったけど。」
「笑ってたの!?」
ひよりは少しだけ口元を緩めた。
「……だから、急いで解除方法探すわよ。このままあんたが誰にでも好かれるの、見てて疲れるから。」
その言葉に、ちょっと胸が暖かくなる。
ひより……やっぱり優しい……。
嫌な気配を感じて振り向くと――レンが遠くからキラキラした目で俺を見つめていた。
気持ち悪くはない……けど……なんか怖い!!
「ユウ。今日からあんた男子にも狙われるのね……。」
「やめて、ひより。それ事実だけど言わないで……!」
こうして俺は――
異性にも同性にも好かれる、両刀モテチートという最悪の状態に突入したのだった。
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